裏切りのステージで描写された火災の伏線とは
RUM編と火災には深い関係があると推理しています。
今回は作中の複数の伏線からRUM編と火災の関係について考察します。
◆「裏切りのステージ」のある伏線
「裏切りのステージ 90巻」はRUM編において必ず協力関係となるコナン、安室、赤井の3人が初めて連携し事件を解決した貴重なエピソード。
また組織が浅香を探る為に動き出した事、安室と赤井に決定的な亀裂を生んだスコッチの死の真相が明かされた事、RUMを彷彿させる片方だけなくなったサークルレンズなどRUM編を語る上で欠かせない要素がいくつも散りばめられている点も注目しています。
何より容疑者3人の外見がRUM候補の黒田、若狭、脇田をイメージしているのは明らかです。
布施という顎髭を蓄えた大柄な男性は黒田、円城という眼鏡にウェーブのかかった髪の女性は若狭、梶谷というチョビ髭でけんかっ早い男性が脇田ですね。
この時点で登場しているのは黒田のみなのでこの3人の外見に注目している読者は少ないかもしれないので読み返すと面白いと思います。
コナン(でかっ!!)
布施を見た時のコナンのリアクションが表情も共に非常にオーバー。
事件のトリックは当初怪力な人物でないと成し遂げられないという見方があったとはいえそれを理由に大柄な布施を疑う様子は全くなかった事からもこのコナンのリアクションはこの時に起きた事件でなくこの人物が隻眼の大男、黒田に該当する人物として描かれているという示唆だと思います。
様々な切り口から見ても「裏切りのステージ」はRUM編を考察する上で欠かせない事件だと考えています。
今回注目したいのは突如として登場する消防官の存在です。
このエピソードには事件に全く関係のない消防官の話が2週に渡って出てきます。
実は消防官は「裏切りのステージ」のFILEナンバーと深い関わりがあるのです。
「緊急事態252 72巻」では少年探偵団が東京消防局の通話コードを駆使しながら事件を解決しています。
そして「裏切りのステージ」で消防官が登場したのがFILE954と955ですが東京消防局の通話コードの954が「火災等による死者」で955が「火災等による傷者」。
どちらも火災を表しています。
これだけだとまだ偶然と考える事ができるかもしれません。
ですが事件の3人の容疑者の名前に注目してみましょう。
被害者はミュージシャンの波土禄道、ハードロックが名前の由来です。
容疑者の3人もそれぞれ音楽のジャンルから。
コナンの作中におけるお馴染の名前の付け方です。
布施憶康=フォーク
円城佳苗=演歌
梶谷宏和=ジャズ
ですがこの3人の名前を視点を変えて見てみましょう。
布施=FUSE(ヒューズ)=導火線
円城=炎上
梶谷=火事
全員火災にまつわる名前です。
事件FILEナンバーと合わせるとさすがに偶然とは考えられません。
ちなみに「緊急事態252」の解決編はFILE755。消防署員を表す通話コードです。
この時点で後に消防官を登場させるつもりでいたのならぞっとする伏線ですね。
これらの事を踏まえるとRUM編に火災が絡んでいる可能性はかなり高いのではないでしょうか。
またこの「裏切りのステージ」には唐突に麻薬取締官の存在が語られるシーンがあります。
消防官がRUM編と火災を繋ぐ伏線だとすると麻薬取締官も何か意味がありそうですね。
推理作品であるコナンの世界で消防官がRUM編に関わってくる可能性は低そうですが麻薬取締官なら薬物を追う過程で組織にたどり着くという流れは容易に想像できます。
今後麻薬取締官が登場する展開があるのではないかと推測しています。
◆黒田と若狭は火災に関わった?
RUM候補のうちの2人、黒田と若狭は「燃えるテントの怪 93巻」で初対面となりました。
この時互いに探りを入れている事やそれ以前の92巻で黒田が若狭の名前に反応した事を考えると実は過去に面識がある可能性はあります。
この事件は被害者がテントの中で焼死するのですがその隣のテントにいた黒田は「寝入っていて気付かなかった」と語っています。
ですが若狭は黒田に対し非常に高圧的な態度でこう問いかけます。
「まさか気になる人物を観察する為に…業火に包まれる隣のテントを野放しにしたなんて事ありませんよね?」
RUM編が火災を深い関わりがある事を前提とすると若狭のこの台詞は過去に黒田か若狭、あるいは両方が火災に関わったという伏線なのだと思います。
上原「黒田捜査一課長…何か大きな事故に遭われたらしくて…」
蘭「じゃああの顔の火傷も…」
上原「多分その事故の影響じゃないかしら…右目は義眼みたいだし…」 86巻
読者視点では黒田の外見は薬品を浴びた影響や生まれつきの痣などいくつでも可能性は考えられるわけですが蘭の発言から火傷の跡だと断言されています。
これもRUM編と火災の関係を考察する上での注目ポイントだと思います。
黒田は10年近く意識不明でありその間に外見が別人のようになった事から変装説などが考えられますが変装するにしてもこの外見を作り上げる必要はないはずです。
黒田「この面構えのせいで目を背けられることはあっても…じっと見つめられる事は滅多にないんでね…」 93巻
この台詞はごもっとも。
わざわざこの外見を作り上げる意図が不明。自分がRUMだと疑わせる為に義眼を装い、ターゲットを誘き出す事が目的だとしても火傷を負った設定を用いる必要はないはず。
もちろん彼がRUMの顔には火傷の跡がある事を知った上で変装しているのなら話は別ですが他のRUM候補を見ても若狭の顔に火傷の跡は全く見られませんし脇田は狭い範囲しか隠せない眼帯を用いている時点で火傷の跡があるとは考えにくい。
若狭も脇田も顔に火傷の跡は無いと考えていいでしょう。
黒田は過去に大火傷を負うような出来事を経験しているのは間違いありません。
◆宮野夫妻の死にRUM候補が関与か
RUM編において火災と言えばやはり灰原の両親、宮野厚司、宮野エレーナ夫妻の死です。
灰原「私は焼け残った資料を搔き集めてその薬を復活させただけだから…」
コナン「焼け残った?」
灰原「父と母の研究所が火事になって薬の資料と一緒に2人とも焼死したのよ…組織の人達からは不運な事故だと聞かされていたけど…」 89巻
灰原の「焼け残った資料」という表現から宮野夫妻は火事により命を落としたという情報は正しいはず。
本当に黒田と若狭が宮野夫妻の焼死に関わっていたとしてもその関わり方については現時点では推測の域を出ません。
若狭は17年前組織の一員だった可能性が高い人物です。
ビスコ同様宮野夫妻と交流があってもおかしくはありませんし彼女は火災の現場に居合わせたのかもしれません。
わざわざ火災の伏線を張っている以上宮野夫妻の死因となった火事は黒田、若狭、脇田の3人のうちの誰かが起こした可能性は高いと思います。
ここで気になるのは若狭が炎を「業火」と表現した事。
業火とは地獄に落ちた罪人を包む炎を指します。
若狭の「業火」が宮野夫妻の火災をなぞったものだとすればやはり思い浮かぶのはヘルエンジェルと呼ばれた宮野エレーナ。
本当に若狭が地獄に落ちた罪人を包む炎という認識を持って宮野夫妻の火災を「業火」と例えたのであれば若狭から見て宮野エレーナは罪人というポジションの可能性も。
若狭は確実に過去に何らかの犯罪を犯している人物。
彼女は羽田浩司の事件現場に居合わせた事は確定ですが実は羽田、アマンダの犯行には一切関わっておらず若狭の犯した罪とは自分と敵対していた宮野夫妻を焼死させたことという見方もできるかもしれません。
「裏切りのステージ」はコナン達が浅香の謎に近づこうとしたエピソードという事を踏まえれば火災に深く関与したのは浅香なのかもしれません。
ただし「業火」は激しい炎という意味でも使用されるものなので深読みの必要はないのかも。
ですが「地獄の炎」と「ヘルエンジェル」は気になるワードなので一応記載しておきます。
また宮野夫妻の焼死と黒田の火傷に因果関係があるのなら当然彼は火災現場にいたはずです。
黒田の火傷の跡は宮野夫妻の救出を試みた際にできたのか、火を放った張本人だからなのか、それとも気になる人物を監視していた最中に火災に巻き込まれたのか…。
若狭の言う「気になる人物の観察」「火に包まれた人間を放置」の言葉の真意が気になるところです。
またとても興味深いのが若狭は黒田を「気になる人物を観察する為に救えるはずの命を救わなかったのではないか」と責めていますが彼女自身、コナンを観察する為に事件の気配を察知しながらそれを放置し人を死なせている事実があります(92巻)。
つまり彼女は自分の行いを棚に上げて黒田を責めているわけです。
この様に若狭は悪の一面を隠しきれていません。最新エピソード「牧場監禁事件」では目的の為に安室を攻撃し気絶させるなど手段を選ばない人間である事が明るみになりました。
それでも鋭い観察眼を持つ灰原からは絶対的な信頼を得るという極めて異色の存在と言えます。
「燃えるテントの怪」で若狭が黒田に向けた言葉は謎に包まれた彼女の本性と言えそうです。
考察通りRUM編と宮野夫妻の死に関りがあるのであれば今後作中で火災を紐解くヒントになるものが出てくるはず。
脇田に関してはこの火災に関与したのか全く情報がありませんからこの辺りも注目していきたいですね。