12年越しの伏線~脇田を昏睡状態に追いやった意外な女性とは~

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RUM候補の中で唯一過去に関する描写が一切なく謎に包まれた脇田兼則ですが最近掲載された「屋根裏密室事件」で彼の過去に迫る伏線が確認できました。

しかもそれは青山先生が実に12年前から仕掛けている巧妙な伏線だったんです。

 

◆脇田はやはり昏睡状態だった可能性が高い

ミステリー好きという設定でありながら工藤新一を知らない。

また眼帯をしているのは左目ですが実は右目の視力が低下していると考えられる描写がある。

この2点から彼が事件や事故により最近まで昏睡状態にあったのではないかと推測して以前記事にしました。

それを裏付けるように「屋根裏密室事件」で脇田はスーパーアイドル沖野ヨーコを目の前にしても全く驚いた様子を見せていませんでした。あの江戸っ子口調でヨーコの容姿や人気ぶりを讃えるのが本来の脇田らしさというものではないでしょうか。

有名人を前に脇田が見せた冷静さは彼は沖野ヨーコを知らない、やはり最近まで昏睡状態にあったという考察を補強する事ができます。

では脇田が昏睡状態に陥った原因は一体何なのか。

それを紐解くカギが脇田の登場前に描かれたある事件にあります。

脇田はある事件の被害者だった可能性が極めて高いと言えるんです。

 

◆脇田の過去に迫る3つの扉絵

脇田の過去を考察する上で外せないのが3つの扉絵です。

1つ目は脇田の初登場となる92巻「江戸っ子探偵!?」

2つ目は87巻「BLOG」、そして3つ目が63巻「回る凶器」です。

注目ポイントはこの3つの扉絵が非常に似通っている事。

どれも食べ物を口に運ぼうとするコナンが描かれています。

コナンの表情、構図も3つともあまりに似すぎている。

特に「江戸っ子探偵!?」と「回る凶器」はイラストを使いまわしたのかと思うほど酷似しています。

確実に意図的であり伏線です。

そう断言できる理由として「回る凶器」は回転寿司屋で発生した事件にも関わらず扉絵は寿司が寿司ゲタにのせられています。本来は回転寿司屋を意識した描写になるべきです。

またこの事件の中で「江戸っ子なら寿司はいい店で」といろは寿司を思わせる台詞や眼帯をした脇田を連想させる腕を痛めた職人も登場しています。

RUM編はこの頃にはすでに構想があったとされています。

青山先生は63巻の「回る凶器」の時点で回らない寿司屋に勤務する江戸っ子口調の人物、脇田兼則というキャラクターを作り上げていた事が窺えます。

つまりあまりに似通った「江戸っ子探偵!?」「BLOG」「回る凶器」の3つの扉絵は脇田兼則という人物を考察するための伏線の役割を担っているわけです。

 

◆「ブログ女優の密室事件」の伏線

では扉絵で表されている脇田の過去とは一体何なのか。

まず3つの扉絵の1つ「BLOG」に注目してみましょう。

脇田の初登場は92巻。「BLOG」は87巻に収録されている事件なので脇田が登場するより前のエピソードです。

この事件は「ブログ女優の密室事件」というタイトルでアニメ化されています。

「ブログ女優の密室事件」

北見沙弥、庄野杏奈という2人の女優が登場。

庄野が北見に「あなたの秘密をブログにアップした」と語りそれを受けて北見は庄野を殺害。

被害者の庄野はブログに漫画本が陳列された本棚をアップしていた。

その中に映っていた漫画の1つが「恋のヒット&ラン」。

ヒット&ランは日本では野球用語だが外国での意味はひき逃げ。

北見は2年前酔っぱらった中年の男性をひき逃げしていた。

彼女はひた隠しにしていたひき逃げを暴露された事を殺害の動機に挙げていたが実は庄野が掴んだ北見の秘密とはひき逃げでなく北見が年齢をサバ読んでいた事。

「恋のヒット&ラン」の隣にある漫画で北見が年齢をサバ読んでいるという暗号を作っていたのが真相だった。

この事件はコナンを語る上で欠かせない年齢を偽るという事やRUM候補の1人である黒田と灰原が初対面した事、何よりも犯人の部屋が504号室という点に注目しています。

これは組織のボスである烏丸蓮耶を数字にした1008のちょうど半分。ボスが烏丸であると判明したのも1008話です。

作中で504という数字が強調されている印象を受けるのでこの事件は考察する上で極めて重要なエピソードと考えられます。

私は以前からこの事件の犯人である北見がひき逃げした酔っ払いの中年男性こそ脇田ではないかと考えていました。

なぜなら先述の通りこの事件のシリーズ1話目の「BLOG」の扉絵が脇田初登場回の扉絵と似通っていた事、そして北見のひき逃げに関しての描写が全く無いという不自然な点があったからです。

事件の動機となった過去の出来事がどんなに些細な内容であっても黒い背景と共に描かれるのがこの作品では普通です。それがこの事件では見られませんでした。

この事から北見にひき逃げされてしまった男性は物語の重要な人物の為描くことができなかったのではないかと推測していたんです。

とは言えつい最近までそう断言できる描写はありませんでした。

ですが「屋根裏密室事件」で北見にひき逃げされた人物は脇田で間違いないと考えられる細かなパーツがついに揃ったんです。

 

◆脇田の過去を紐解く「ヒットと野球」

脇田のメイン回は現在までに3回あります。

「となりの江戸前推理ショー 92巻」「長野廃教会事件 97巻」「屋根裏密室事件」です。

この3つには共通するあるワードがあります。それが当たりです。

「となりの江戸前推理ショー」では馬券が当たる、「長野廃教会事件」ではクジが当たる、「屋根裏密室事件」では食あたり。

このように脇田は当たるという言葉とセットで描かれている事が分かります。

そして「長野廃教会事件」と「屋根裏密室事件」では野球が登場しています。

つまり脇田は「当たり」「野球」に何かしら縁がある事になります。

当たりは英語でヒット、そして野球。

まさに「ブログ女優の密室事件」のひき逃げ=ヒット&ランを象徴するワードです。

さらにひき逃げ事件を起こした犯人の北見沙弥の名前も伏線になっています。

北見沙弥(KITAMI SAYA)のMをWにすると次の単語となります。

WAKITA ISYA(脇田 医者)

北見にひき逃げをされた結果脇田が医者を必要とする事態に陥ったと推測できます。

また以前このブログでRUM編を紐解く鍵として東京消防局の通話コードが重要なのではないかと記事にしました。

少年探偵団が通話コードの数字を駆使して事件を解決する「緊急事態252 72巻」は新一が蘭に告白をした次のエピソードという事もあり通話コードの数字は考察する上で大きな意味を持つと考えています。

▼記事はこちら

ここで注目なのが北見がひき逃げしてしまった相手を表すことのできる通話コードが存在するという事です。

北見「2年前に私…車で人を轢いちゃったのよ…酔っぱらったどこかのオジサンを…」

元太「今度は655!」

光彦「泥酔者…ベロベロに酔っぱらった人の事ですけど…」

彼女がひいてしまった相手の男性は酔っ払い、つまり泥酔者で通話コードの数字にすると655となります。

では655と脇田には何の繋がりがあるのか。

実は脇田初登場回の「江戸っ子探偵!?」の扉絵と瓜二つの扉絵である「回る凶器」のFILEナンバーが655なんです。

よって意図的に似せている3つの扉絵の意味するところは以下の通り。

「回る凶器」➡FILE655。通話コードの655は酔っ払い。扉絵、内容共にこの後に登場する脇田の存在を示唆

「BLOG」➡脇田 医者のアナグラムになっている人物が酔っ払い(通話コード655)をひき逃げ 

「江戸っ子探偵!?」➡視力が低下しており何らかの事故に巻き込まれた伏線が張られている脇田が登場

3つの扉絵がついに1つの物語になりました。

「回る凶器」が収録された63巻が発売されたのが2008年。

脇田のひき逃げされた過去は実に12年の歳月が費やされている伏線なんです。

今になって振り返ると脇田初登場回の彼の台詞がちゃんとヒントになっていますね。

客「あら…前の店員さんは?」

脇田「交通事故で大ケガして…入院してるらしいですぜ?」

脇田「ご主人店先で酔っ払いにからまれやして…その時コケて」 

これは脇田の実体験だったわけです。

彼はひき逃げの被害により眼帯のある左目とは逆の右目を負傷したのでしょう。

長きにわたる伏線と言えばベルモットが務武を知っていると明かされたのはつい最近ですがその伏線が確認できるのは13年前に発売された58巻です。

RUM編が壮大なストーリーである事がよく分かります。

▼記事はこちら

◆脇田はRUMではない

脇田が北見のひき逃げの被害者である事は間違いないと思います。

だとすると彼の正体がRUMと考えるのは難しくなります。

なぜなら犯人である北見は警察に事件の真相、つまり自分が2年前に中年の男性をひき逃げしてしまった過去についても洗いざらい白状したはずです。

もちろん事故を起こした場所や正確な日付など持っているひき逃げの情報の全てを。

そして北見は有名人。彼女の話した内容は全てマスコミを通じて世間に知れ渡り、当然脇田の耳にも届きます。

脇田はその情報から自分をひき逃げしたのが北見であると気付ける条件が整っています。

RUMは組織内でも別格の大物。

彼がRUMなら自分をひき逃げした人物には組織の力を使い何らかの制裁を加えるのではないでしょうか。

現時点ではそれが確認できませんからこのブログで提唱している通りやはり彼の正体はRUMではないと考えられます。

 

◆なぜ昏睡状態は2年なのか

「となりの江戸前推理ショー」の馬券、「長野廃教会事件」のクジだけでは「当たり=ヒット」以外に「運」や「当たり外れ」というワードも視野に入れた上で考察しなければなりませんでした。

ですが「屋根裏密室事件」に登場した食あたりに関しては「運」や「外れ」は関係ありません。

この事件で初めて脇田=ヒットという図式が完成したのです。

そして脇田のメイン回に立て続けに登場した野球がやはり決定打でした。

脇田とヒット&ラン=ひき逃げがここにきてようやく繋がりを見せました。

彼が北見のひき逃げにより昏睡状態に陥ったのは間違いないと思います。

昏睡状態といえば思い浮かぶキャラクターは黒田兵衛。

ですが北見のひき逃げは2年前ですから脇田が昏睡状態にあった期間は2年間。

黒田が眠り続けていたのは10年ですから脇田の正体は本物の黒田ではありません。

以前私は脇田は現在の黒田と入れ替わる前の本物の黒田兵衛だったのではないかと記事にしました。

実はその記事を書いている時から北見が2年前に起こしたひき逃げの被害者が脇田である可能性を考察していた事に加え何よりも彼の正体が本物の黒田では今までの自分の考察と合致しなくなるので「脇田の正体が本物の黒田兵衛説」が自分の中で経ち消えて救われました(笑)。

記事の投稿の時点では北見のひき逃げの被害者という確信が得られなかった為脇田は本物の黒田だった説しか書けなかったわけです。

あの記事から3か月も経たずして状況が一変しましたね。

▼記事はこちら

脇田は2年前、北見にひき逃げされ昏睡状態に陥り最近になって目を覚ました。

新一が世間にその存在を知られるようになったのも最近の話ですし沖野ヨーコも2年前であれば今ほどの知名度はなかったと考えることはできます。

だから脇田は工藤新一を知らず沖野ヨーコに関しても情報を持ち合わせていない可能性がある。

脇田の昏睡状態が2年で最近目を覚ましたのなら新一やヨーコを知らなくても全く矛盾はしません。

ではなぜ2年間という数字となったのか。

もちろん特別な意味は全くない可能性も十分考えられます。

ですが2年前と言えば赤井が組織から離脱した時期と一致します。

ここに絡めての設定という可能性も否定はできません。

赤井の父の務武は生死不明の状況ですがもし生存しているのならやはり黒田か脇田のどちらかと言えそうです。

脇田の正体が務武であると考えることのできる要素も実はここにきて増えてきています。

脇田=務武の可能性についても近々記事にまとめます。

 

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