「Time is money!」とは何か
「Time is money!」
ラムが安室に送信したメールに綴られた一文です。(95巻)
今回はここから脇田=ラム説を否定する私の立場からこのアナグラムについて検証してみたいと思います。
Time is money!とは何か
黒ずくめの組織のNo.2のラム候補は黒田兵衛、若狭留美、脇田兼則の3人。
その中で多くの読者がラム候補最有力と考えているのが毛利探偵事務所の隣、「米花いろは寿司」に勤務する板前の脇田兼則です。
根拠として挙げられるのが組織の気配を感じ取ることができる灰原が黒田、若狭の2人をラムと考えていないことが大きいと思います。青山先生はラムは黒田、若狭、脇田の3人の中にいる事を明言している。そうなると消去法でラムは脇田となります。
そして組織は毛利小五郎の存在を疑っていると考えられますがその毛利に接近しているのが脇田。
他にも読者が彼を疑わしいと考えている点は多々ありますがそのうちのひとつが95巻で明らかになったラムが安室に送ったメールに綴られた一文「Time is money!」ではないでしょうか。
これを日本語に訳すと時は金なり➡TOKIWA KANENARI。
入れ替えるとWAKITA KANENORI脇田兼則になります。
これらを踏まえるとラム=脇田兼則となるのも頷けます。
ですが私は脇田がラムという考えは過去にも記している通り現時点では否定派です。
「長野廃教会殺人事件」の安室の言葉の意味とは
コミックス化されていない「長野廃教会殺人事件」ではコナンからRUMについて尋ねられた安室がこんな言葉を返しています。
「会った事があると答えれば君は僕がかかわっている人達に探りを入れ始めるだろうし…会ったことがないといえば僕や君に近づく人達を必要以上に警戒するだろ?」
「どの道、僕にメリットはないけど…ヒントとして君に言えるとしたら…その人物はとてもせっかち…――って事ぐらいかな?」
「せっかち」という表現は「時は金なり」のことわざを連想させる台詞です。
このこともラム=脇田という推理に繋がります。
この回は工藤家のお茶会を終えた後のエピソードです。
お茶会の内容は詳細が明らかにされていません。
ですがこの台詞はお茶会を終えてもコナンと安室が完全な協力関係とはならなかったことを示しています。
2人の間に協力関係があればRUMに関する情報も共有するはずです。
そして安室の「メリット」という言葉のチョイス。
協力関係や信頼関係が成り立っている場合、「メリット」「デメリット」で相手との関係性を考えたりしないはず。
さらに最後の「せっかち…――って事ぐらいかな?」も個人的に大きな意味があると思います。
「――」も「ぐらいかな?」も両方とも安室は「せっかち」以外に何かを掴んでいる表現と考えて良さそう。
そしてその情報を手にしていながらコナンにそれを教える気はない。
つまり安室はコナンの事を情報を共有すべきでない人物ではないと判断していることになります。
そんな相手に対しRUMという大物に関する情報を簡単に渡さないと考えた方が妥当。
一方で「せっかち」はラムにたどり着くヒントであることは事実だと思います。
安室が意味のないヒントを出す必要はありません。
何よりも作品の性質上「コナンへのヒント=読者へのヒント」ということを忘れてはいけません。
「せっかち」は重要な情報ではないが読者やコナンが推理する上でヒントであることに偽りはないということ。
仮にラム=脇田である場合「せっかち」から脇田兼則のアナグラムにたどり着く可能性は非常に大きい。
コナンの並外れた推理力を安室は知っています。
何よりこのエピソードの中で脇田はコナンと安室と旅行をしており、コナンと脇田の距離が近付いている最中です。
そんな状況下であればなおさら安室が「ラムの情報を渡すべき相手ではない」と判断している人物に対し有力な情報を渡すとは考え難い。
せっかちの解釈はいくつも存在する
私は「せっかち」はRUMの性格と同時に彼の座右の銘のようなものと捉えています。
そしてラムを割り出すヒントの役割も果たしている。
そもそも「せっかち」には類語が山ほどあります。
その一例が「あわてんぼう」です。
あわてんぼうと言えばサンタクロース。
過去のクリスマス絡みのエピソードにRUMがこっそりと登場していてコナンと接しているとします。
そのことを知っていた安室が
RUM➡クリスマス➡サンタクロース➡あわてんぼう➡せっかち
ここからコナンに「せっかち」と伝えた可能性などは考えられないでしょうか。
これだと「RUMにたどり着くには難しい情報であると同時にせっかちは事実でありヒント」となる。
95巻で梓が安室にクリスマスの予定を聞いていたことなどから組織はクリスマスに何か行動を起こす可能性があります。
念のため記載しますがRUMとクリスマスに因果関係があると考察しているのではなくせっかちの類語であわてんぼうが浮かんだのでそこから話題をクリスマスに繋げただけです。(もちろんRUMとクリスマスの関連は否定できませんが)
このように「せっかち」の単語が示すのはなにも「時は金なり」のことわざだけではありません。
せっかちの類語は他にどんなものがあるか、外国ではどのように言うか、せわしい人物を示す別のことわざは何かなど調べると面白いと思います。
青山先生はRUMについて候補者3人が原作に登場する以前に既に登場しているともとれるコメントを発信しています。
「せっかち」をヒントにRUM編以前のエピソードを振り返るのもお勧めです。