『警察学校編』第2話

警察学校編第2話の感想と考察を綴ります。

ネタバレを含みますのでご注意ください。


CASE.2「傍若無人

警察官を目指す立場でありながら警察をよく思っていない発言をした松田の事が気になる降谷が真相を探る為資料室に1人PCに向かうところから第2話はスタート。

第1話で「真面目」と称された降谷の性格が表れています。

 

やはり松田が警察をよく思わない理由は冤罪でした。

彼にはプロボクサーであった父親が殺人で誤認逮捕された過去がありました。

松田は警察を憎んでいながらなぜ警察官になろうとするのか。

松田の傍若無人っぷりを前面に押し出しながら彼の心の中に降谷が踏み込もうとする話です。


大ニュースを知らない降谷と景

 

降谷の閲覧しているPCに表示されている記事を見る限り松田の父親は名の知れたボクサーだったようです。

その人物の逮捕ともなれば世間の大きな注目を集めたはず。

ここで気になるのが景(ヒロ)と降谷の台詞です。

景「その事件…当時は大騒ぎだったらしいよ…」 降谷「誤認逮捕?」

松田の父親の逮捕は大きな話題となっていたにも関わらず2人はこのことを全く知らなかったことがこの台詞から分かります。

 

時系列は不明ですが彼の父親が誤認逮捕されたのは景が家族を失った後かもしれません。

景は第1話で明らかとなった事件のトラウマで心を閉ざし、学校で話題になっているニュースを知ることができなかった可能性があります。

また降谷も容姿のせいで周囲との衝突が絶えない幼少期を送っています。

世間で話題となってニュースを知らずに過ごしていたことも容易に想像できます。

 

松田の父親の誤認逮捕当時、この2人は孤独な環境下にあったのかもしれません。

 

特に気になるのがこの件を降谷が知らなかったことです。

 

彼の特技はボクシング。

真面目な性格ならボクシング界のスターについて徹底的に調べ上げ、そこから学習しようとするのではないでしょうか。

過去であっても有名ボクサーの大ニュースを知らなかったということは彼のボクシングは独学で身に付けたものではないと思います。

 

何より彼は右利きですがボクシングの攻撃は左で行います。

独学であれば攻撃も利き手になるはず。

 

降谷にはボクシングを教えた人物がいるということを示唆しているのだと思います。

左手での攻撃は彼にボクシングを叩き込んだ人物に関する伏線の可能性がある。

 

私の考察上、その人物は脇田です。


長野一家死傷事件の謎

第1話で景は事件により両親を失っていることが明らかになりました。

この事件は「長野一家死傷事件」として保管されているようです。

 

この事件の資料を閲覧している景の表情からやはりこの時点では未解決の可能性が高いですね。

 

そしてこの事件は「殺人事件」でなく「死傷事件」であることが新たに判明しました。

つまり犯人によって殺害された人物もいれば傷を負いながらも生き長らえた人物がいたということ。

 

ストレートに考えれば負傷しながらも生き残ったのは景か兄の高明、あるいは両方です。

景は犯人の顔も殺害現場もしっかりと目撃しています。

そしてその犯人とバッチリ目を合わせている上、犯人は景に対し不敵な笑みを浮かべています。

この人物は景も殺害しようとしていた可能性が高い。

 

ですが景が襲撃されたのなら第1話の悪夢の中で景に包丁を振りかざす犯人が出てきた方が自然だと思います。

犯人の不敵な笑みで夢が終わっていることを踏まえると傷を負ったのは景ではなく、兄の高明かもしれません。

ですがこの事件を考察する上で私は第1話を振り返る必要があるのではないかと考えています。

 

第1話の不可解なコマ

 

第1話で景が夢の中で悲惨な光景をクローゼットから目撃するシーンがあります。

 

犯人が男性の背中に包丁を突き立てるコマ。私はこのコマが第1話からとても気になっています。

 

まず座り込んでいる女性。

 

一見するとこの女性が景の母親でまずこの女性が先、その後父親が殺害されたように見えます。

 

ですがよく見るとこの座り込んでいる女性、まだ息があるのではないでしょうか。

 

というのもこの女性が自分の左手で右の首筋(右肩?)を抑えているように見えるからです。

断言できないのですが私にはそのように見えます。

 

もし本当にこの女性が左手で首筋を抑えている場合、彼女が絶命している可能性はほぼ無いと言っていいでしょう。

そのような不自然なポーズの死者を描くはずがありません。

また、この様なポーズを取っていれば犯人もこの女性が息絶えていないことに気付いたはずです。

それを承知の上で犯人はこの女性を生かした可能性があります。

 

この事件で負傷しながらも生存した人物とは彼女の可能性があります。

ではこの女性は一体何者なのか、なぜ殺されずにすんだのかという新たな疑問が生じます。

またこのコマにはもうひとつ不可解な点があります。

座り込んでいる女性のスカートですがこれは別の人物の服に見えるというものです。

 

通常スカートはふんわりと描かれるものですがこの女性のスカートは相当に厚手。

しかも線がしっかり太く描かれています。

これがスカートでかつ奥にいる人物がはいているのなら漫画の手法的にがっしりとした線は避けるはずです。

 

私は背中を刺された男性と座り込んでいる女性の間にもう1人誰か死亡者(負傷者)がいる可能性があると考えています。

 

読み返していただくと分かりやすいでしょうがこの線はスカートにしては不自然です。

 

景の母親が幼くして亡くなっていること、また第1話の「両親の事件のトラウマ」という台詞から景の両親がこの事件に巻き込まれたことは確実なはず。

 

座り込んでいる女性が生存者でこの女性と男性の間に描かれた倒れている人物が景の母親なのかもしれません。

景の両親以外にも犠牲者がいた可能性はこの事件が「長野一家死傷事件」という名前で扱われていることからも推測できます。

 

普通事件に名をつけるならば「長野県〇△市一家死傷事件」辺りが妥当ではないでしょうか。

ですが諸伏家の事件は「長野一家死傷事件」という名で警察内に保管されている。

 

これは長野の事件と言えば諸伏家と言えるほど凄惨な事件であったという事。

殺害されたのが両親2人とするとこの名は腑に落ちません。

 

第1話で描かれた惨殺シーンは事件のほんのワンシーンに過ぎないのかもしれません。

諸伏家は祖父母を含め大人数で生活していたのかもしれない。

裕福な家柄であったなら住み込みの家政婦がいた可能性があります。

 

事件名から彼が生活を共にしていたのは父母兄だけでなかった、またその多くが犠牲となったと考える事が出来ます。

座り込んでいる女性と背中を刺された男性の間に誰かがいても不思議はありません。

・座り込んでいる女性には息があった

・男性と女性の間にもう1人誰かがいる

この推測が正しかった場合、事件はかなり複雑です。

犯人の目的は何だったのか。

何よりも息のある女性にとどめを刺さなかったのは何故なのか。

 

景はクローゼットに隠れていました。

まだ幼い彼にこの判断ができたとは思えません。

父母、あるいは祖父母など誰かが「ここから出ないように」と身を挺して彼を守ったのでしょう。

 

補足するとこの事件は景にとって「両親の事件のトラウマ」として語られているだけでこの事件で両親が殺害されたという明確な描写はないとも言えます。

しかしデータは正確ですから事件に巻き込まれたのは「諸伏一家」ということは間違いありません。

スリードが無ければこの事件で母親も亡くなっていることになります。

ですが本当に例のコマの女性が生き残っていた場合、彼女が諸伏兄弟の母親という可能性もあります。

 

しかしその母親は生き残ったことにより犯人に仕立て上げられた、あるいは家族を失ったショックから自ら命を絶った等も考えられなくはないと思います。

第1話の謎であった「不自然な女性のポーズ」も「女性と男性の間にもう一人誰かいるのではないか」という疑問もこの事件が「長野一家死傷事件」という名で記録されていることで私の中ではやや腑に落ちる形にはなりました。

 

未解決の場合、本編で真相の追及が行われることに期待ですね。


松田と萩原の過去

プロボクサーである父親が誤認逮捕となりまだ幼かった松田は相当なショックを受けたはずです。

酒浸りの父の様子を窺う松田少年の顔には無数の傷跡が見られます。

この頃からボクシングをしていたでしょうからボクシングを続ける自分の姿を見せることで彼は父親に立ち直ってほしかったのではないでしょうか。

この傷跡は「俺はボクシングを続けている。だから父さんも頑張って」という意味が込められているのかもしれません。

作中屈指のイケメンと称される彼ですがボクシングをしている辺り自分の顔にはあまり関心がないのかもしれません。

萩原「陣平ちゃんは分解魔!ガキの頃から何でもかんでも分解しなきゃ気が済まねぇんだよ!」

この台詞は萩原は松田の事を小さな頃から知っていると取れるものです。

その一方警察を恨んでいる松田が警察官になろうとする理由については謎と語っています。

幼馴染であるなら理由は知っているのが普通。

これは降谷と松田の仲を取り持つために敢えて知らない振りをしているとも考えられます。

 

彼はずば抜けた洞察力とコミュニケーション能力がある人物。

松田の過去を知らないと語れば降谷の方から近付いてくれると踏んで嘘をついている可能性が高いのではないでしょうか。

 

本当に萩原が嘘をついている場合、トリプルフェイスを演じる上で必要な上手に嘘をつく能力を降谷は萩原から学んだ可能性も出てきます。

また5人の中で一切暗い過去が見えてこない萩原ですが降谷に嘘をついているという考察が正しければ絶えず笑みを浮かべ自らを嘘で固めている現在の安室そのものに見えます。

もしかすると萩原も安室と同じくらいにつらい過去を持っているのかもしれません。

その過去を乗り越える為、あるいは自分の苦しみを悟られない為に身に付けたのが周囲を敵に回さない洞察力とコミュニケーション能力なのかもしれません。


伊達の優しさの要因とは何か

第1話同様、伊達は5人のリーダー的な存在であり、非常に包容力の強い人物という印象です。

ですがあまりにも優しさが「出来過ぎている」感は否めない。

彼の笑顔もトラブルを丸く収める嘘も非常に「うまい」。

自然に振舞っているのではなく計算し尽くした上での言動ではないかと感じます。

彼は警察官だった父親の辞職を引きずっていることが明かされていますがこの事が警察学校時点の伊達に影響を与えていることは間違いないでしょう。

現時点では「伊達編」を待つしかありませんね。その前にちょこちょこ彼に纏わるヒントが出てくるかもしれませんが。


降谷のトークスキルはこの時点で円熟しているのか

松田の過去を知りたいがゆえに降谷は松田を挑発する発言がありました。

降谷は非常におしゃべりな人物であり巧みな会話術で情報を引き出すことに優れた人物です。

降谷の挑発に松田は反応こそしましたが松田の取った行動は会話でなく暴力。

この時点で十分なトークスキルが備わっているのか否か、現時点では明言できませんね。

警察学校や警察官としての経験で得たものなのか、入校時点で既に磨き上げられていたものなのかで彼の人物像もまた変化してきます。


松田の言葉は5人の物語のあらすじ?

教官から「警察官を何だと思ってる!?」という問いかけに松田が回答したシーンですがこのシーンは『警察学校編』で描かれる5人それぞれの物語のあらすじのような役割かもしれません。

「誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕し…」→降谷のカット

「人権を尊重して公正かつ親切に職務を執行し…」→伊達のカット

「規律を厳正に保持して相互の連帯を強め…」→萩原のカット

「人格を磨き能力を高めて自己の充実に努め…」→景のカット

「清廉にして堅実な生活態度を保持する…それが警察官…でしたよね?」→松田のカット

降谷にはあまりにも有名な「恋人はこの国」という発言がありますがこれは「国家と国民に奉仕」そのものです。

また景は過去のトラウマを乗り越えなければならない状況です。正に「人格を磨き自己の充実に努める」べき立場。 

第2話では銃弾の紛失の原因が松田にあるのではないかと教官から疑われ協調性の無い松田はケンカ腰となっていました。

その仲裁役を買って出たのが伊達です。

伊達「お前じゃないんだろ?だったら堂々としてろよ!」

この言葉は「清廉であるなら堅実な態度を取れ」ということ。

松田のカットの際の言葉と重ねることができます。

 

 

致命的に協調性が無いことを問題視されている松田がこの『警察学校編』で自身の問題と向き合い、乗り越えていくという意味なのかも。

 

この考察が正しい場合伊達は「人権の尊重」「構成で親切」というワードに彼の素顔が隠されている可能性があります。

萩原は「規律の保持」「相互の連帯」ということになります。

松田の言葉は実際の警察官の職務倫理です。

『警察学校編』はそれぞれがお互いに足りないものを補い合いながら成長していく。

そんな物語なのかもしれません。

安室「桜の花弁は五枚で一つ…」 『ゼロの日常』40話

桜は警察のシンボルマーク。

 

この言葉は5人の中で唯一生き残った降谷零は桜の花弁のごとく早くに散ってしまった4人の存在を合わせて安室透という人物を作り上げた意味も込められているのではないでしょうか。

 

安室透は仮初の姿ですが『ゼロの日常』で度々見せていた米花町の人々との触れ合いは「みんなに平和であってほしい」という気持ちからであり、それは公安警察降谷零の根幹と全く同一のものです。

4人は降谷の心の中で生き続けていて、降谷も合わせ5人で1人前の警察官。

松田の言葉とそれぞれのキャラクターのカットは彼らの成長物語について触れたものであり、同時に現在の降谷零を構成している素材の可能性がありますね。


5人全員、警察官を目指すルーツは親にあり?

景が警察官を目指すきっかけは両親の事件で間違いないと思います。

また伊達も父親が警察官であったことで同じ道を志したと考えられます。

松田は現時点では警察官を目指した理由は明らかにされていませんが父親の誤認逮捕は無関係ではないはず。

こうなると5人全員、警察官を目指す理由が親にあるという展開が十分考えられますね。

 

降谷の警察官を選んだ理由も「親」にある可能性があります。

彼の「親」とは血のつながった存在以外にエレーナのように「親代わり」の人物を指す場合も有り得ます。

私は脇田が降谷の父親のような存在だった時期があると考えているので脇田を探し出すことが目的ということも考えています。


次回を深読み

まだ2話しか読んでいませんが考察する上では貴重な材料が多いですね。

その上で第3話について深読みしようと思います。

 

松田が警察官を憎む一方その職業に就こうとするのは自分が嫌う組織を内側から変えたいという志からだと思っていましたがもしそうならこの第2話の時点でその答えが出てもいいように思いました。

 

もうひとつ浮かんでいた答えが彼が警察官に助けられた過去があるというものですがこちらが正解の可能性もありますね。

 

第2話の最後に鬼塚教官の首に命綱が巻き付いてしまい、首を吊ったような状態となってしまいました。

もしかするとこれは松田の父親がかつて未遂ながらも首つり自殺をしたことがあるという示唆なのかもしれません。

 

かつて松田の父親は自暴自棄になり首つり自殺を図った。

そこを偶然とある警察官が発見し、父親は一命を取り留めた。

彼を苦しめたのも警察、助けたのも警察。

松田にはそんな過去があるのかもしれません。

 

次回は松田と降谷が距離を詰める話になるはずです。

教官を助けるために5人全員動くことになるでしょうが最も大きな成果を挙げるのは降谷になりそうですね。

教官を救う降谷にかつて自分の父を助けてくれた警察官の存在を重ね、松田の降谷に対する意識に変化がみられる。

そこでようやく自分が警察官を目指すきっかけについて語る。そんな話になるのかな、と。

第2話で小五郎が非常に優秀な人物だったことが明らかにされているのでこの松田を助けた警察官が実は小五郎だった、なんてオチがあると面白いなと持ってます。深読みもいいとこですが(笑)

今から次回が楽しみですね!

 

第1話の感想と考察はこちら。

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