黒田はなぜ瀕死の羽田を放置した?

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黒田兵衛は瀕死の羽田浩司を放置したのではないか。

最新刊である97巻のある1コマからこの可能性が浮上したと言えます。

たった1コマの描写から正義であるはずの黒田が事件当日、謎に満ちた行動を取っていたことが明らかになりました。

その1コマとは何か。そしてそこから考察できるものをまとめました。


◆黒田が現場に到着した時羽田は生存していた◆

93巻で黒田は傷だらけで横たわった羽田浩司を回想しています。

この描写から私は「黒田はかつて羽田の【遺体】を目撃した」とばかり思っていました。しかし97巻でこれが青山先生の読者へのミスリードだということが判明します。

この97巻では若狭が同じく横たわった羽田を回想しています。

この描写により黒田も若狭も事件当日現場に居合わせたことが明らかにされました。

しかしよく見ると黒田の目撃した羽田と若狭の目撃した羽田とでは様子が明らかに異なります。

黒田が目撃した羽田=口から血を流していない

若狭が目撃した羽田=口から血を流している

人間は一般的に死後に血を流すことはないと考えられています。

この描写から黒田はまだ息のあった羽田と遭遇しているということが判明したのです。

93巻で「黒田は羽田の遺体を回想している」と読者に信じ込ませることに青山先生は見事に成功したわけですね。

◆黒田と若狭の事件現場の到着の順番は?◆

羽田の口元の血の有無の描写をそのまま捉えると現場の到着の順番は黒田が先、若狭が後です。

ですがミスリードの可能性も完全には否定できません。

2人が共犯などであれば2人とも羽田が瀕死の状態も息絶えた後の様子も目撃していることも考えられます。

黒田が回想したものが口から血を流していない羽田で若狭が回想したものが口から血を流す羽田、同じものを目撃していてもたまたま脳裏によぎった映像が異なっただけという線もあり得なくはない。

 

ですが私はやはりこの描写はミスリードはなく現場の到着の順番はそのまま黒田が先と考えています。

ヒントになりそうなのは同じく97巻。

若狭が回想している羽田は口から血を流している上右手にダイイングメッセージを遺したハサミの跡が確認できるのでこの羽田は既に息絶えた状態と考えられます。

「山菜採り」で若狭は血の匂いから横たわった羽田をトラウマのように思い返しています。

彼女は攻撃性が極めて高い人物であり血生臭い現場には慣れているはず。

その彼女が血の匂いから羽田を連想したのは口から血を流す彼を目の当たりにした過去が彼女にとって衝撃的だったからだと推測できます。この衝撃はやはり若狭が現場に到着した時、既に羽田が息絶えていたことを物語っているのではないでしょうか。

また「山菜採り」では「風向きが変わった」というキャラクターの台詞とその直後に血の匂いから羽田を回想し、この事件の被害者の遺体を発見しています。

私はこの一連の流れは17年前の事件当日、若狭は風向きの変化=何かしらの異変を察知➡羽田の部屋を訪れた結果彼の遺体を発見したという伏線ではないかと考えています。

そしてこの作品は推理物。2人が回想した羽田の描写に差があるにも関わらず「どちらも息のある羽田だった」では推理物として不自然です。この描写の差から考えられるのは次の通り。

黒田が目撃した羽田=まだ息があった

若狭が目撃した羽田=既に息絶えていた

血の匂いから羽田を連想した生々しさからは若狭の現場到着が羽田の死亡直後と考えてよさそうです。

まだ息のある羽田を黒田が目撃、羽田が息絶えて間もなく部屋を訪れたのが若狭という流れだと思います。

ここで2人が鉢合わせたのかどうかは非常に重要なポイント。

少なくとも現時点で判明しているのは若狭は黒田と対面した際に黒田に疑いの目を向けているということ(93巻)。

黒田に全く心当たりがない場合探りを入れるような言動はしないはず。

若狭が黒田を「怪しい人物」として扱っていることは間違いありません。

 

93巻の時点では「黒田は羽田殺害事件の捜査に加わり彼の遺体を目撃した」という可能性があったわけですが97巻の若狭の回想シーンでその可能性はゼロとなりました。

黒田は事件が明るみになる前に事件現場を訪れ、瀕死の羽田を目撃しているのですから。

ですが羽田死亡後に捜査に加わった線はまだ残っているとは思います。

◆黒田は瀕死の羽田を放置した?◆

黒田の回想シーンの中の羽田はまだ息がありましたが確実に瀕死の状態と言えます。

なぜなら黒田の回想に登場する羽田(まだ息がある)と若狭の回想に登場する羽田(既に息絶えている)の体勢が全く同じだから。

手当をする、被害者に駆け寄り体を起こすなどしていれば必ず体勢に変化があります。しかしそれがなかった。

このことから何らかの理由で黒田は羽田を救わなかったことが分かります。

ここで生じるのが黒田はなぜ瀕死の羽田に応急処置を施さなかったかという疑問です。

 

瀕死の人間を救わなかったから黒田が悪人とは言い切れません。

例えば黒田は事件当日偶然瀕死の状態の羽田を目撃した。

彼は羽田を救おうとしたがRUMや何者かに拘束されてしまったなどの理由で助けることができなかった可能性もあるかもしれません。

ですが長身で体格のよい黒田が手も足も出ないという事が有り得るのかというと少々疑問ではあります。

何よりも事件が表面化する前に現場を訪れていること、瀕死の人間に応急処置を取らなかったことを考えるとやはり黒田の行動は正義の人間と言えるのか首をかしげたくなるのが正直な感想です。

私はかねてより黒田は2人存在しそのうちの1人がRUMだと考えていましたが「山菜採り」でより一層黒田への疑惑が深まりました。

◆殴打と薬物という謎に満ちた事件◆

羽田は死因を不明にする薬で殺害されたのは確かなはずです。しかし彼は傷だらけの状態で最期を迎えています。

単純に羽田浩司という人間を抹殺したいのであれば殴るなどせず薬だけを用いた犯行の方が賢明。

なぜ証拠を残さない薬を使いながら証拠を残した事件が発生したのか。

これは羽田浩司の事件の最大の謎です。

私は黒田の回想した羽田と若狭の回想した羽田の差にはこの謎に迫る重要なヒントが隠されているのではないかと推測しています。

そのことを記事にまとめたいと思います。

黒田がRUM、というよりも黒田は2人存在しそのうちの1人がRUMという考察記事はこちら。


 
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