警察学校編第3話を考察

第3話はまさに少年漫画の王道

 

『警察学校編』、3週に渡る松田編もいよいよラスト。

第2話最後に命綱が首に巻き付きついたまま宙吊りとなってしまった鬼塚教官。

5人は教官を救うためには拳銃で命綱を絶ち切るしかないと決断。

それぞれが即座に行動に移ります。

そんな中で降谷は1人。動きません。

2話で射撃の腕が群を抜いていると判明しているので撃つのは降谷であると本人も4人も言葉にせずとも理解している。

そう思って読み返すと棒立ちの降谷は大変サマになっています。

5人は見事な連携プレーで教官を救出することに成功。

最後には松田が警察官を目指す動機を降谷に打ち明け2人が今後打ち解けあう布石が打たれました。

この展開は少年漫画の王道そのものですね。


警察官を嫌悪する松田が警察官になる理由とは

 

松田が警察官を目指した理由は父親を誤認逮捕した警察への恨みを晴らすべく警視庁のトップ、警視総監をブン殴りたいからというもの。

なんとも単純明快な回答でいかにも松田らしいといった感じ(笑)

しかしこれは建前でやはり警察という組織を内側から変えていきたいという気持ちからでしょう。

「間違えて親父の夢をぶっ潰したのにシレっとしてる警察が…どうにも許せねぇんだよ…」

松田の父親は誤認逮捕により夢を絶たれ酒浸りの生活を過ごしていました。

松田と同じく彼の父親も当然警察への恨みがあったはず。

自分の息子が警察官を志すと聞いた時の父親の心境も気になるところですね。

 

その松田もこの物語からわずか4年後の26歳の若さでこの世を去ることになります。

父親は彼の仕事や人々を守る為に自らの命を犠牲にした息子をどのように捉えているのでしょうか。

松田が迎えた結末はあまりに酷なものでした。

父親が存命かは不明ですがそれでもきっと息子の最期を誇らしく思っているのではないでしょうか。


松田と萩原の強い絆

 

「今、萩原が見つけて来るであろう…弾丸を込めて…」

第2話で弾丸はいくら探しても出てきませんでした。

松田のこの発言は萩原の秀でた洞察力などを駆使すれば弾丸紛失騒動は簡単に片付くという事を知っているということ。

松田の萩原に対する絶対的な信頼を感じます。

この台詞を語っている時の表情も完全に萩原を信頼している。

 

それでも2話で教官のいいつけを守り立ったままでいたのは萩原の力を借りて自分の身の潔白を証明するよりも教官たちを困らせたいという気持ちが強かったのでしょう。

弾丸が見つからないとなるとこの教官たちの立場がなくなるわけですからね。

松田としてはその展開の方が自分好みだと感じたのかもしれません。

 

萩原は松田公認で非常に巧みな嘘がつけるキャラクター。

 

彼は降谷が架空の人物を演じる上で参考にしている可能性を綴りましたがこの考察は当たっているかもしれません。

萩原の人を騙すことに秀でた能力と降谷に関しての考察はまた別に記事にしたいと思います。


降谷が警察官になる目的はエレーナを見つける為

 

「ある人を見つける為さ…急に姿を消してしまった…とても大切な女性をね…」

降谷が警察官を目指す理由はエレーナを探すことでした。

 

つまりこの時点ではエレーナの死を知らないという事になります。

深読みする必要は無いのですが気になっている点を一応記載するとなぜ彼はエレーナの死を知らないのかということ。

 

宮野夫妻の死は現時点では事故として処理されています。

事件性が無いと判断されている場合、警察学校のデータベースにエレーナの事故は記録されていない可能性もあります。

この場合は2話の景のように彼女について調べる事はできません。

 

しかし降谷が例え金銭的に恵まれない時代を過ごしていたにしてもインターネットに触れることぐらいはできたはずです。

コナンの世界において時代背景を語るのはあまり適切ではありませんが2話でPCで調べ物をしていることから降谷が22歳の時点で世の中にインターネット文化はあったと考える方が自然。

一般的なPCからでもアクセスすれば断片的であってもエレーナに関する情報は出てきそうなものです。

深読みする必要性は無いとは思いますがちょっと疑問に感じました。


降谷はエレーナの失踪に事件性を感じているのか

 

宮野夫妻の死は読者側としてはどうしても事件性を疑いますが現時点ではあくまで事故死。

そしてエレーナについて語る降谷の表情も背後に描かれたエレーナの表情も不穏な気配はゼロ。

 

降谷は彼女の生存を信じ、心から会いたいと願っているようにしか見えません。

 

簡単なサヨナラの言葉を残し、エレーナが降谷の前から忽然と姿を消したのは事実でしょうが表情だけを見る限りエレーナの失踪に事件性を感じている様子は無い印象を受けました。

 

エレーナと事件に何らかの繋がりを感じるのであれば彼女の死の原因である火事についても把握していないと不自然に感じます。

火事を知っているという事はそのままエレーナの死を知っていると考えるのが妥当。

エレーナの死を知らない時点で降谷はまだ彼女が危険な世界と繋がっていたことに気付けていないような気がしました。

「僕は絶対に警察官にならなきゃいけないんだ…」 第1話より

その一方でこの台詞はただの人探しという印象は受けません。

警察学校入校時点で彼女の失踪に不信感を抱いていたと取ることもできなくはありません。

しかし青山作品は一途な思いがテーマとして描かれることが大変多いことで有名です。

大切な人を見つけたいという純粋な願いが彼を警察官という世界に導いた可能性も十分あり得ます。


降谷にとってエレーナは母にして唯一の家族

 

エレーナは降谷零の初恋の女性です。

 

幼い頃に離れ離れとなったエレーナを今でも大切に思う降谷の姿は初恋の相手を一途に想う青山作品の王道パターンのように見えて実はそうではありません。

 

そもそも青山先生がなぜ初恋をテーマとしたものを好むかというと大前提にラブコメが描きたいからというのがあります。

 

ですが降谷零とエレーナのラブコメを描くことは絶対にできません。

彼女は既に亡くなっていることが明言されているキャラクターですし、彼が想いを寄せていた時点で既に家庭がありました。

絶対に叶わない恋であり、青山作品の特徴であるラブコメが発動する条件が全く整っていないのです。

 

降谷がエレーナを大切に思うのは初恋の女性を愛しく思うという感情以上に母親を思う感情に近いはずです。

 

彼には実の母親の存在が全く見えてきません。

『ゼロの日常』3巻で彼に自転車を教えてあげたのはエレーナでした。

自転車に乗れるようになった降谷少年にパチパチと手を叩くエレーナが確認できます。

 

恐らく彼に「よくがんばったね」「すごいね」など優しい言葉をかけてあげたはず。

これは本来親の役割。

「あの子は特別!私と同じハーフだから…」 95巻

この理由だけで自転車のレッスンまでしてあげるはずがありません。

降谷少年の不遇な環境も知った上で母親の役割を少しでも果たしてあげたいというエレーナの大きな優しさが伝わってきます。

 

降谷零にとってエレーナは甘酸っぱい初恋の想い出という可愛らしいものというよりも母親であり同時に唯一の家族という捉え方の方が適切だと思います。

 

降谷零にとってエレーナは唯一無二の存在なのは間違いありません。


降谷零(安室透)は赤井秀一と対

 

エレーナは降谷の初恋の女性であると同時にそれ以上に母親という側面が強い。

これは降谷の宿敵である赤井秀一と対にしたいという作者側の考えもあるのかなと思います。

 

赤井は表向きは死んだことになり、恋人の明美も失った。

母親も幼児化されるとなどつらい経験をしています。

 

それでも赤井には恐らく偉大であろう父親がいました。

MI6であり頭脳も身体能力も優れた母親がいます。

メディアに天才と大々的に報じられる賢い弟がいます。

高校生でありながら探偵として活動する妹がいます。

 

赤井は家族に大変恵まれたキャラクターです。

しかし降谷はそうではありません。

 

降谷零には家族はエレーナしかいなかったのです。

今までも降谷と赤井は対のキャラクターとして描かれてきましたが家族に関してもそうする狙いがあるのだと思います。

 

赤井は生死不明の父親を追っています。

降谷はこの段階で行方の分からないエレーナの存在を追っています。

降谷の中でエレーナ=母親のような存在となると父を追う赤井と対になるのでここにもっていきたいのではないかと。


今後歩むことになる降谷の壮絶な人生

 

22歳の時点でエレーナの死を知らなかったというのは少し衝撃でした。

彼は22歳から現在の29歳までの間に大切な友人を4人も失うというつらい過去を背負って生きていますがこのメンバーに加えてエレーナの死とも向かい合っていたことになります。

つまり22歳の降谷は悲劇のスタートラインにさえ立っていないということ。

 

降谷には景こそいましたが家庭環境も恵まれていなかったと考えられますし同年代の子供とも衝突の絶えない幼少期を過ごしたはず。

本来大いに語るべきその気の毒な幼少期が霞んでしまうほどの苦悩をこの数年で経験していることになります。

降谷はあまりに悲劇的なことの連続で非常に不憫なキャラクターと言えます。

 

社会現象になった人気キャラだといって容赦しない、描くべき設定はちゃんと描くという青山先生の作品作りのこだわりを感じたのは私だけでしょうか(笑)。

青山先生は読者の意見に耳を傾けることも大切にしてると語っているので決して読者を蔑ろにはしていません。

それでも安室の人気が絶頂の最中、同僚の榎本梓と夢落ちとは言えラブコメのようなものを描いた先生だけはあるなと勝手に納得しました。

↑『ゼロの日常』2巻収録の夢落ちも細かく観察すると安室の夢というのが分かります。

 

人気があるキャラクターだからと言って読者へ妙な媚の売り方をせず、必要な要素を描くことにおいては一切妥協しない先生なんだと痛感させられました。

 

『警察学校編』では1話で景の壮絶な過去が明かされました。

これには作品を楽しみにしていた読者の一部から「つらい」「楽しい話が読みたかったのに」という声もちらほら見受けられました。

それでも必要であれば必ず描く。

『警察学校編』も『ゼロの日常』の夢落ち回も先生が降谷零(安室透)を描く上で不可欠な話だと判断している。

結果的に降谷零は作中きっての孤独キャラという位置づけとなりました。

 

彼は『ゼロの日常』を読む限り米花町での日々を穏やかに過ごしていますが作中何度か悪者を退治しています。

それでも公安警察という立場上自分の手柄にはできません。

彼の活躍は全て「暗躍」なのです。

 

しかしこれこそが彼の魅力であり社会現象にまでなった魅力。

気の毒ですが彼は悲劇的な過去を抱えている様子があまりにも似合うキャラクターなんです。

この点を青山先生はファンに流されることなく伏線も交えきちんと描く。

『警察学校編』『ゼロの日常』は共にスピンオフといっても非常に奥が深い。

作者の強烈なこだわりが凝縮されているのが伝わってきます。

 

 

彼は一体いつ、何をきっかけにエレーナの死を知ったのでしょうか。

警察官を目指した理由となった人物が既にこの世にいないと知った時ほんの僅かでも警察官の道を諦めるという選択肢が彼の脳裏をよぎったのか。

それともその死に不信感を抱き、これまで以上に警察官という職業にこだわりを持つことになったのか。

 

まだ3話しか描かれていない『警察学校編』ですが情報量が多いですね。

とても読み応えのある作品です。

 

第1話試し読みはこちら

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『警察学校編』第2話

警察学校編第2話の感想と考察を綴ります。

ネタバレを含みますのでご注意ください。


CASE.2「傍若無人

警察官を目指す立場でありながら警察をよく思っていない発言をした松田の事が気になる降谷が真相を探る為資料室に1人PCに向かうところから第2話はスタート。

第1話で「真面目」と称された降谷の性格が表れています。

 

やはり松田が警察をよく思わない理由は冤罪でした。

彼にはプロボクサーであった父親が殺人で誤認逮捕された過去がありました。

松田は警察を憎んでいながらなぜ警察官になろうとするのか。

松田の傍若無人っぷりを前面に押し出しながら彼の心の中に降谷が踏み込もうとする話です。


大ニュースを知らない降谷と景

 

降谷の閲覧しているPCに表示されている記事を見る限り松田の父親は名の知れたボクサーだったようです。

その人物の逮捕ともなれば世間の大きな注目を集めたはず。

ここで気になるのが景(ヒロ)と降谷の台詞です。

景「その事件…当時は大騒ぎだったらしいよ…」 降谷「誤認逮捕?」

松田の父親の逮捕は大きな話題となっていたにも関わらず2人はこのことを全く知らなかったことがこの台詞から分かります。

 

時系列は不明ですが彼の父親が誤認逮捕されたのは景が家族を失った後かもしれません。

景は第1話で明らかとなった事件のトラウマで心を閉ざし、学校で話題になっているニュースを知ることができなかった可能性があります。

また降谷も容姿のせいで周囲との衝突が絶えない幼少期を送っています。

世間で話題となってニュースを知らずに過ごしていたことも容易に想像できます。

 

松田の父親の誤認逮捕当時、この2人は孤独な環境下にあったのかもしれません。

 

特に気になるのがこの件を降谷が知らなかったことです。

 

彼の特技はボクシング。

真面目な性格ならボクシング界のスターについて徹底的に調べ上げ、そこから学習しようとするのではないでしょうか。

過去であっても有名ボクサーの大ニュースを知らなかったということは彼のボクシングは独学で身に付けたものではないと思います。

 

何より彼は右利きですがボクシングの攻撃は左で行います。

独学であれば攻撃も利き手になるはず。

 

降谷にはボクシングを教えた人物がいるということを示唆しているのだと思います。

左手での攻撃は彼にボクシングを叩き込んだ人物に関する伏線の可能性がある。

 

私の考察上、その人物は脇田です。


長野一家死傷事件の謎

第1話で景は事件により両親を失っていることが明らかになりました。

この事件は「長野一家死傷事件」として保管されているようです。

 

この事件の資料を閲覧している景の表情からやはりこの時点では未解決の可能性が高いですね。

 

そしてこの事件は「殺人事件」でなく「死傷事件」であることが新たに判明しました。

つまり犯人によって殺害された人物もいれば傷を負いながらも生き長らえた人物がいたということ。

 

ストレートに考えれば負傷しながらも生き残ったのは景か兄の高明、あるいは両方です。

景は犯人の顔も殺害現場もしっかりと目撃しています。

そしてその犯人とバッチリ目を合わせている上、犯人は景に対し不敵な笑みを浮かべています。

この人物は景も殺害しようとしていた可能性が高い。

 

ですが景が襲撃されたのなら第1話の悪夢の中で景に包丁を振りかざす犯人が出てきた方が自然だと思います。

犯人の不敵な笑みで夢が終わっていることを踏まえると傷を負ったのは景ではなく、兄の高明かもしれません。

ですがこの事件を考察する上で私は第1話を振り返る必要があるのではないかと考えています。

 

第1話の不可解なコマ

 

第1話で景が夢の中で悲惨な光景をクローゼットから目撃するシーンがあります。

 

犯人が男性の背中に包丁を突き立てるコマ。私はこのコマが第1話からとても気になっています。

 

まず座り込んでいる女性。

 

一見するとこの女性が景の母親でまずこの女性が先、その後父親が殺害されたように見えます。

 

ですがよく見るとこの座り込んでいる女性、まだ息があるのではないでしょうか。

 

というのもこの女性が自分の左手で右の首筋(右肩?)を抑えているように見えるからです。

断言できないのですが私にはそのように見えます。

 

もし本当にこの女性が左手で首筋を抑えている場合、彼女が絶命している可能性はほぼ無いと言っていいでしょう。

そのような不自然なポーズの死者を描くはずがありません。

また、この様なポーズを取っていれば犯人もこの女性が息絶えていないことに気付いたはずです。

それを承知の上で犯人はこの女性を生かした可能性があります。

 

この事件で負傷しながらも生存した人物とは彼女の可能性があります。

ではこの女性は一体何者なのか、なぜ殺されずにすんだのかという新たな疑問が生じます。

またこのコマにはもうひとつ不可解な点があります。

座り込んでいる女性のスカートですがこれは別の人物の服に見えるというものです。

 

通常スカートはふんわりと描かれるものですがこの女性のスカートは相当に厚手。

しかも線がしっかり太く描かれています。

これがスカートでかつ奥にいる人物がはいているのなら漫画の手法的にがっしりとした線は避けるはずです。

 

私は背中を刺された男性と座り込んでいる女性の間にもう1人誰か死亡者(負傷者)がいる可能性があると考えています。

 

読み返していただくと分かりやすいでしょうがこの線はスカートにしては不自然です。

 

景の母親が幼くして亡くなっていること、また第1話の「両親の事件のトラウマ」という台詞から景の両親がこの事件に巻き込まれたことは確実なはず。

 

座り込んでいる女性が生存者でこの女性と男性の間に描かれた倒れている人物が景の母親なのかもしれません。

景の両親以外にも犠牲者がいた可能性はこの事件が「長野一家死傷事件」という名前で扱われていることからも推測できます。

 

普通事件に名をつけるならば「長野県〇△市一家死傷事件」辺りが妥当ではないでしょうか。

ですが諸伏家の事件は「長野一家死傷事件」という名で警察内に保管されている。

 

これは長野の事件と言えば諸伏家と言えるほど凄惨な事件であったという事。

殺害されたのが両親2人とするとこの名は腑に落ちません。

 

第1話で描かれた惨殺シーンは事件のほんのワンシーンに過ぎないのかもしれません。

諸伏家は祖父母を含め大人数で生活していたのかもしれない。

裕福な家柄であったなら住み込みの家政婦がいた可能性があります。

 

事件名から彼が生活を共にしていたのは父母兄だけでなかった、またその多くが犠牲となったと考える事が出来ます。

座り込んでいる女性と背中を刺された男性の間に誰かがいても不思議はありません。

・座り込んでいる女性には息があった

・男性と女性の間にもう1人誰かがいる

この推測が正しかった場合、事件はかなり複雑です。

犯人の目的は何だったのか。

何よりも息のある女性にとどめを刺さなかったのは何故なのか。

 

景はクローゼットに隠れていました。

まだ幼い彼にこの判断ができたとは思えません。

父母、あるいは祖父母など誰かが「ここから出ないように」と身を挺して彼を守ったのでしょう。

 

補足するとこの事件は景にとって「両親の事件のトラウマ」として語られているだけでこの事件で両親が殺害されたという明確な描写はないとも言えます。

しかしデータは正確ですから事件に巻き込まれたのは「諸伏一家」ということは間違いありません。

スリードが無ければこの事件で母親も亡くなっていることになります。

ですが本当に例のコマの女性が生き残っていた場合、彼女が諸伏兄弟の母親という可能性もあります。

 

しかしその母親は生き残ったことにより犯人に仕立て上げられた、あるいは家族を失ったショックから自ら命を絶った等も考えられなくはないと思います。

第1話の謎であった「不自然な女性のポーズ」も「女性と男性の間にもう一人誰かいるのではないか」という疑問もこの事件が「長野一家死傷事件」という名で記録されていることで私の中ではやや腑に落ちる形にはなりました。

 

未解決の場合、本編で真相の追及が行われることに期待ですね。


松田と萩原の過去

プロボクサーである父親が誤認逮捕となりまだ幼かった松田は相当なショックを受けたはずです。

酒浸りの父の様子を窺う松田少年の顔には無数の傷跡が見られます。

この頃からボクシングをしていたでしょうからボクシングを続ける自分の姿を見せることで彼は父親に立ち直ってほしかったのではないでしょうか。

この傷跡は「俺はボクシングを続けている。だから父さんも頑張って」という意味が込められているのかもしれません。

作中屈指のイケメンと称される彼ですがボクシングをしている辺り自分の顔にはあまり関心がないのかもしれません。

萩原「陣平ちゃんは分解魔!ガキの頃から何でもかんでも分解しなきゃ気が済まねぇんだよ!」

この台詞は萩原は松田の事を小さな頃から知っていると取れるものです。

その一方警察を恨んでいる松田が警察官になろうとする理由については謎と語っています。

幼馴染であるなら理由は知っているのが普通。

これは降谷と松田の仲を取り持つために敢えて知らない振りをしているとも考えられます。

 

彼はずば抜けた洞察力とコミュニケーション能力がある人物。

松田の過去を知らないと語れば降谷の方から近付いてくれると踏んで嘘をついている可能性が高いのではないでしょうか。

 

本当に萩原が嘘をついている場合、トリプルフェイスを演じる上で必要な上手に嘘をつく能力を降谷は萩原から学んだ可能性も出てきます。

また5人の中で一切暗い過去が見えてこない萩原ですが降谷に嘘をついているという考察が正しければ絶えず笑みを浮かべ自らを嘘で固めている現在の安室そのものに見えます。

もしかすると萩原も安室と同じくらいにつらい過去を持っているのかもしれません。

その過去を乗り越える為、あるいは自分の苦しみを悟られない為に身に付けたのが周囲を敵に回さない洞察力とコミュニケーション能力なのかもしれません。


伊達の優しさの要因とは何か

第1話同様、伊達は5人のリーダー的な存在であり、非常に包容力の強い人物という印象です。

ですがあまりにも優しさが「出来過ぎている」感は否めない。

彼の笑顔もトラブルを丸く収める嘘も非常に「うまい」。

自然に振舞っているのではなく計算し尽くした上での言動ではないかと感じます。

彼は警察官だった父親の辞職を引きずっていることが明かされていますがこの事が警察学校時点の伊達に影響を与えていることは間違いないでしょう。

現時点では「伊達編」を待つしかありませんね。その前にちょこちょこ彼に纏わるヒントが出てくるかもしれませんが。


降谷のトークスキルはこの時点で円熟しているのか

松田の過去を知りたいがゆえに降谷は松田を挑発する発言がありました。

降谷は非常におしゃべりな人物であり巧みな会話術で情報を引き出すことに優れた人物です。

降谷の挑発に松田は反応こそしましたが松田の取った行動は会話でなく暴力。

この時点で十分なトークスキルが備わっているのか否か、現時点では明言できませんね。

警察学校や警察官としての経験で得たものなのか、入校時点で既に磨き上げられていたものなのかで彼の人物像もまた変化してきます。


松田の言葉は5人の物語のあらすじ?

教官から「警察官を何だと思ってる!?」という問いかけに松田が回答したシーンですがこのシーンは『警察学校編』で描かれる5人それぞれの物語のあらすじのような役割かもしれません。

「誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕し…」→降谷のカット

「人権を尊重して公正かつ親切に職務を執行し…」→伊達のカット

「規律を厳正に保持して相互の連帯を強め…」→萩原のカット

「人格を磨き能力を高めて自己の充実に努め…」→景のカット

「清廉にして堅実な生活態度を保持する…それが警察官…でしたよね?」→松田のカット

降谷にはあまりにも有名な「恋人はこの国」という発言がありますがこれは「国家と国民に奉仕」そのものです。

また景は過去のトラウマを乗り越えなければならない状況です。正に「人格を磨き自己の充実に努める」べき立場。 

第2話では銃弾の紛失の原因が松田にあるのではないかと教官から疑われ協調性の無い松田はケンカ腰となっていました。

その仲裁役を買って出たのが伊達です。

伊達「お前じゃないんだろ?だったら堂々としてろよ!」

この言葉は「清廉であるなら堅実な態度を取れ」ということ。

松田のカットの際の言葉と重ねることができます。

 

 

致命的に協調性が無いことを問題視されている松田がこの『警察学校編』で自身の問題と向き合い、乗り越えていくという意味なのかも。

 

この考察が正しい場合伊達は「人権の尊重」「構成で親切」というワードに彼の素顔が隠されている可能性があります。

萩原は「規律の保持」「相互の連帯」ということになります。

松田の言葉は実際の警察官の職務倫理です。

『警察学校編』はそれぞれがお互いに足りないものを補い合いながら成長していく。

そんな物語なのかもしれません。

安室「桜の花弁は五枚で一つ…」 『ゼロの日常』40話

桜は警察のシンボルマーク。

 

この言葉は5人の中で唯一生き残った降谷零は桜の花弁のごとく早くに散ってしまった4人の存在を合わせて安室透という人物を作り上げた意味も込められているのではないでしょうか。

 

安室透は仮初の姿ですが『ゼロの日常』で度々見せていた米花町の人々との触れ合いは「みんなに平和であってほしい」という気持ちからであり、それは公安警察降谷零の根幹と全く同一のものです。

4人は降谷の心の中で生き続けていて、降谷も合わせ5人で1人前の警察官。

松田の言葉とそれぞれのキャラクターのカットは彼らの成長物語について触れたものであり、同時に現在の降谷零を構成している素材の可能性がありますね。


5人全員、警察官を目指すルーツは親にあり?

景が警察官を目指すきっかけは両親の事件で間違いないと思います。

また伊達も父親が警察官であったことで同じ道を志したと考えられます。

松田は現時点では警察官を目指した理由は明らかにされていませんが父親の誤認逮捕は無関係ではないはず。

こうなると5人全員、警察官を目指す理由が親にあるという展開が十分考えられますね。

 

降谷の警察官を選んだ理由も「親」にある可能性があります。

彼の「親」とは血のつながった存在以外にエレーナのように「親代わり」の人物を指す場合も有り得ます。

私は脇田が降谷の父親のような存在だった時期があると考えているので脇田を探し出すことが目的ということも考えています。


次回を深読み

まだ2話しか読んでいませんが考察する上では貴重な材料が多いですね。

その上で第3話について深読みしようと思います。

 

松田が警察官を憎む一方その職業に就こうとするのは自分が嫌う組織を内側から変えたいという志からだと思っていましたがもしそうならこの第2話の時点でその答えが出てもいいように思いました。

 

もうひとつ浮かんでいた答えが彼が警察官に助けられた過去があるというものですがこちらが正解の可能性もありますね。

 

第2話の最後に鬼塚教官の首に命綱が巻き付いてしまい、首を吊ったような状態となってしまいました。

もしかするとこれは松田の父親がかつて未遂ながらも首つり自殺をしたことがあるという示唆なのかもしれません。

 

かつて松田の父親は自暴自棄になり首つり自殺を図った。

そこを偶然とある警察官が発見し、父親は一命を取り留めた。

彼を苦しめたのも警察、助けたのも警察。

松田にはそんな過去があるのかもしれません。

 

次回は松田と降谷が距離を詰める話になるはずです。

教官を助けるために5人全員動くことになるでしょうが最も大きな成果を挙げるのは降谷になりそうですね。

教官を救う降谷にかつて自分の父を助けてくれた警察官の存在を重ね、松田の降谷に対する意識に変化がみられる。

そこでようやく自分が警察官を目指すきっかけについて語る。そんな話になるのかな、と。

第2話で小五郎が非常に優秀な人物だったことが明らかにされているのでこの松田を助けた警察官が実は小五郎だった、なんてオチがあると面白いなと持ってます。深読みもいいとこですが(笑)

今から次回が楽しみですね!

 

第1話の感想と考察はこちら。

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『警察学校編』第1話

今週より『警察学校編』がスタートしました。

安室透がトリプルフェイスになる前の話ということで彼の謎に包まれた素顔が描かれる可能性も高い作品です。

 

タイトルは考察としましたが少ない材料から自分なりに分解と組み立てを行っているだけです。

そしてネタバレも含みます。大丈夫という方のみお進みください。

 

 

 

 

 

 


CASE.1「竜虎相博」

 

夜の桜が舞い散る中でボクシングで闘う降谷と松田。

この花びらは早くに散っていった彼らそのものを表しているのかもしれません。

 

 

降谷の特技のボクシングはこの時点ですでに身に付けていたことが分かります。

松田は降谷よりもボクシングが強いという事前情報はありましたが松田の父親はプロボクサー。

強いのも納得です。

 

 

そして冒頭の降谷の台詞

「僕は絶対に警察官にならなきゃいけないんだ…」

 

今回降谷は全科目オールA、警察学校の歴史でも類を見ない成績で入校したことが明かされました。

それだけ優秀な人物であればどんな職業もよりどりみどり。

 

警察とは困っている人々を救う存在。

彼が「困っている人を助けたい」という気持ちがあれば医者や弁護士などの選択肢もあったはず。

しかし彼は警察官一択。

そのような考えに至った背景が今後この作品で描かれるかもしれません。

 

 

そして新しい情報は降谷の幼馴染で親友の諸伏景光(ヒロ)の両親の死について。

彼の両親が無くなっていたことは原作でも描かれていましたがその死が殺人事件であったことが判明。

ヒロはその現場を目撃し、22歳の時点でもその経験が心の傷となっています。

 

 

そして授業中の降谷の言葉

「目撃情報の注意点として、犯罪現場に居合わせたストレスや思い込みや、警察官の誘導的な質問で目撃者の証言がゆがめられる可能性がある…その為、証言を鵜呑みにするのではなく…しっかりとした裏取りが必要である…」

これは親友のヒロの経験をそのまま代弁しているのではないでしょうか。

 

 

ヒロは目の前で両親を惨殺されその精神的なストレスに加えまだ子供だったことを踏まえると事件当時の状況を上手く説明することができず警察官の見解に頷くより他なかった。

その為に降谷の言う裏取りを警察官が怠ってしまいこの事件が未解決となってしまった。

 

この可能性は高いかなと思います。

事件を自分の手で解決したいという気持ちからヒロ、そして兄の高明は2人とも警察官となった。

十分あり得る話ですね。

犯人が全身黒であったのもこの事件が未解決という意味を含んでいると思います。

 

本当に未解決であった場合本編で高明、降谷が協力して事件を解決する可能性もありますね。

 

また降谷は赤井に対しては冷静さを失うという設定がありますがヒロの両親が彼の目の前で惨殺されたことを考えるとこの設定も致し方ないのかなと思いました。

降谷にしてみれば赤井はヒロとヒロの両親を最悪の形で天国で再会させた人物になります。

彼の怒りは「親友を失った」に留まらない嘆きがあったのでしょう。

 

 

そしてこの事件が降谷が警察官を目指す理由になっている可能性も浮上します。

 

これまで読者の間ではエレーナの死の真相に迫りたいという気持ちから降谷は警察官を目指したのではないかとされていました。

 

ですが降谷はエレーナの死亡当時まだ子供です。

エレーナの死が事故でなかった場合かなり高い確率で組織の存在が関わってくるはず。

降谷が彼女の死に疑問を抱いたと仮定すると彼はほんの子供の段階で組織の起こした犯行に勘づく事ができたことになります。

それはちょっと現実的ではないなと思います。

 

 

加えて降谷は十代の時点で警察官を目指しています。警察官に「なりたい」でなく「ならなきゃいけない」。

もしエレーナの存在が警察官を目指す動機になっている場合彼の心の中には幼いころからいつもエレーナがいたはずです。

 

ですが降谷はフラッシュバックのような形でエレーナとの思い出を振り返ることが多い。

彼の心の中にいつもエレーナが存在しているならこのようなフラッシュバックのようなことは起こらないのではないかと思います。

 

 

降谷の警察官を志望する動機はエレーナの件でなく親友の両親の事件を解決したいという気持ちがあるのかもしれません。

 

もちろん彼は謎の多い人物。実は全く違うところに警察官を目指すきかっけがあるのかもしれません。

 

そして松田の気になる言葉。

降谷の「証言を鵜呑みにするのではなく裏取りが必要」という言葉に「警察学校(ここ)を卒業した連中がそれを実践できてるかマユツバもん」と言い教官を怒らせています。

 

ここから松田自身、あるいは彼の大切な存在が「警察学校(ここ)を卒業した連中」つまり警察官から濡れ衣を着せられた過去があると推測できます。

彼は22歳の時点でも警察を快く思っていないという発言をしています。

かつて味わった苦い経験があるからこそ彼は警察という組織を内側から変えていきたいと思うようになったのかもしれません。


降谷のウィンクは脇田との繋がりの示唆?

 

『ゼロの日常』では降谷が何度か左目を閉じてウィンクすることがありました。

そしてこの『警察学校編』でも彼が左目を閉じてウィンクしているのが確認できます。

これは彼の癖なのかもしれません。

それと同時に私は彼と脇田兼則の繋がりを示唆しているものではないかと考えています。

 

私は脇田が降谷にボクシングを教えた可能性が高いと思っています。

このブログとTwitterに投稿した考察内容、そしてどこにも投稿していないもの全てをまとめると現時点での私の考察は以下の通り。

 

【脇田は降谷にボクシングを教え、降谷は脇田を父親のように慕っていたが降谷が十代のうちに彼の元から姿を消した】

 

この考察が当たりか外れか、当たっているとしたらどの程度なのかが考察している側としてはとても気になっています。

 

脇田は本編に絡む重要なキャラクターなので明確な描写は絶対に描かれませんが降谷のボクシングに関して読者に考察するヒントを与える事はありそうですね。

 

少なくとも警察学校入校の時点(22歳)でボクシングを身に付けていたのは確定。


その他第1話について

 

『警察学校編』は『ゼロの日常』と同じく穏やかなストーリーだと思っていたのでヒロの両親が殺害される描写はかなり衝撃でした。

ヒロが夜遅くにホラー作品を見ているだけだろうと3回ほどページを見なおしたりしました(汗)

もしかすると今後衝撃的な降谷の過去も描かれるのかもしれません。

 

また以前から外国人の血が混じっているのではないかとされていたヒロですが彼の目と両親が黒髪であることを踏まえると両親ともに日本人の可能性が高そうです。

 

そしてヒロが寝る時も腕時計をしているのが気になりました。

両親の形見とか何か理由があるのかもしれませんね。

 

そして今回ヒロの両親の死の真相が明らかになったことで兄の高明は両親を惨殺され、憧れていた女性も失った挙句、弟のヒロも潜入先で命を落とすという悲劇の連続だったことになります。

しかし彼はそれを嘆くことなく受け入れている。これが彼の魅力だと思います。

 

降谷の性格は基本的に『ゼロの日常』で描かれた安室透とそんなに差がない印象を受けました。

安室透でいる時もそれなりに素でいることができているのかもしれません。

一人称は「僕」松田に対して「君」という辺りも安室そのものです。

 

警察学校時代はやんちゃだったという設定はこの作品の連載前からありましたが1話を見る限り真相は「真面目過ぎる性格と頭髪のせいで他の学生とイザコザが絶えない」というもの。

松田とのボクシングも仕掛けたのは松田のようです。

やんちゃというよりも生真面目ゆえにトラブルに巻き込まれてしまうというのが正確なようですね。

 

教官が降谷の成績について語るシーンで風見と思しき人物の後ろ姿が確認できます。

他の人物と髪の描き方が異なって描かれているので風見と見て間違いないでしょう。

彼が警察学校編でいわゆる「警察学校組」と絡むエピソードも用意されているかもしれませんね。

 

想像通りみんなの父親的なポジションだった伊達ですが彼もまた父親の辞職を引きずるなど訳ありな様子です。

 

また萩原ですが原作では22歳で亡くなったと考えられますがこの時点で既に22歳。

どこかで死亡した時期に修正が入るのかそのままなのかも気になるところです。

また彼は松田と仲が良さそうでした。

警察学校入校前から付き合いがあったのではないでしょうか。

 

 

私は本編を考察する上で『セロの日常』も参考にしていたのでこの『警察学校編』も何かしら伏線が張られると思います。

その点も楽しみに読んでいきたいと思います。


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工藤邸でのお茶会を考察

「黒うさぎ亭」シリーズ(95巻)が「迷宮カクテル」が3週に渡って放送されることが分かりました。

放送は8月31日(土)からです。

 

安室と赤井という因縁の間柄である2人が互いに銃を突き付けるという衝撃的なシーンから始まったこの「黒うさぎ亭」ですが放送に合わせて原作で何かしら動きがある可能性もあります。

その前に自分なりの考察を記しておきたかったのでこのタイミングでの更新です。


工藤邸でのお茶会とは

そもそも工藤邸でのお茶会とは何を指すのかというところから。

 

脅迫状が届いたから来てほしいという依頼が小五郎の元に舞い込み、安室はコナン、小五郎、蘭と「黒うさぎ亭」へ向かいます。

その前にラムから工藤新一について調査をするよう命じられていた安室はここで蘭の財布から工藤邸の鍵を盗み「黒うさぎ亭」での事件解決後のその夜、安室は灯りの消えた工藤邸へ侵入します。

そこには因縁の相手である赤井が待ち構えており両者は暗闇の中銃を突きつけ合います。

しかし互いに挑発的な発言をしている最中、突然部屋に灯りがともります。電気を点けたのは家主の工藤優作。横には妻の有希子の姿もありました。

優作「ゆっくり妻の淹れた紅茶でも…味わっていってくださいね…」

有希子「レモンとミルク…どちらにします?」 95巻

名探偵コナン (95) (少年サンデーコミックス)

名探偵コナン (95) (少年サンデーコミックス)

 

話はここで終わっています。

 

これが読者の間では「お茶会」という名で語られています。

また「黒うさぎ亭」の話の9時間後という記載があるため「9時間後」という表現もあるようです。

ここで何が話し合われたのか、そもそもお茶会が行われたのかすら何も明らかにされていません。

これが現時点でのお茶会の全てです。あまりにも情報が無さ過ぎます。

ですが裏を返せば「何かがあったから今まで何も描いてこなかった」と言えます。

では工藤邸でのお茶会では一体何が話し合われたのか考察したいと思います。


伏せられた赤井生存の真実

赤井は表向きは死んだことになっており現在は工藤夫妻の力添えで大学院生沖矢昴として生活しています。

安室も沖矢の正体が赤井であることはほぼ確信している状態でした。

赤井、工藤夫妻は沖矢昴の正体が赤井秀一であることを認めたはずです。

 

コナンは工藤新一生存の情報がネット上に流出したことを警戒していました。

またコナンは安室が新一の情報を探っている様子も蘭の持つ工藤邸の合い鍵に注目する様子も目の当たりにしています。

赤井「君が今日ここへ侵入する事を…全て読んでいたとしたらどうだ?合い鍵を作る事も…工藤新一を探れという命を受ける事も…」

この言葉からも分かるようにコナン、赤井、工藤夫妻にとって安室の侵入は完全に想定していたものでした。

 

優作と安室が工藤邸でお茶会をするのは95巻が初めてではありません。

2人が初めてお茶会をしたのは85巻。優作が沖矢の変装をした状態でした。

安室は沖矢の正体が赤井であることを見抜いていましたがこの時目の前にいる沖矢が優作の変装とまでは気付くことができず安室と沖矢(優作)のお茶会の途中で赤井から安室に電話があったことで彼は引き下がってしまった過去があります。

 

今回のお茶会が前回と決定的に違うのが優作が変装の事実を認めているところです。

安室の侵入前に優作は沖矢のマスクで窓際に立っています。これは沖矢が部屋にいるのを安室に確認させるためです。

その後安室の前に現れた優作は沖矢のマスクを取ってはいるものの服装は沖矢のマスクを被っていた時のままです。そして赤井は変装をしていない状態。つまり灯りのついた工藤邸には先程までいたはずの沖矢がいません。

これは赤井、工藤夫妻が沖矢昴という人物は存在しないことを認めていることになります。

 

これは優作が過去に沖矢に変装していたこと、そして赤井が現在は沖矢として生きていることをこの後のお茶会で肯定する為と捉えるべきです。

赤井は自分が沖矢昴として生きていること、そしてそれを外部に漏らさないことを懇願したのだと考えられます。


工藤夫妻は新一の生存を認めた

工藤邸でのお茶会の9時間前安室は新一についての情報を蘭に求めています。

安室「修学旅行も事件続きで大変だったそうじゃないですか…まぁ、同級生の工藤新一君の活躍で無事に解決したようですが…」

蘭「はぁ、まぁ…」 

蘭のこの発言は明確ではないものの新一の生存を認めたと言えます。

 

『ゼロの日常』では安室が信頼できない、素性が知れないと判断している人物の目元を描かないという手法が用いられていますがこの作品で蘭はしっかりと目元が描かれていることから安室は彼女に対し何の疑いも抱いていないのが分かります。

つまり蘭からの新一生存の情報を安室は信じることになります。

 

さらに新一生存の情報がネット上に拡散されていることもあり工藤夫妻も今更新一の生存をひた隠しにするとは思えません。新一の生存については事実と認めた上で「探らないでほしい」とも付け加えたと思います。

 

また96巻で上司の黒田と安室のこんな会話がありました。

黒田「それより例の件は…どうなってる?」

安室「まだ何も…」

「例の件」という言葉を受けて安室が回想したのは工藤邸での赤井、工藤夫妻です。

 

このことから「例の件」はお茶会を指していると考えられます。

つまり黒田は新一の生存情報を受けて安室が動いた(あるいは動こうとしている)ことを知っていることになります。

そして安室の「まだ何も…」の表情は大変強張っています。この強張った表情から推測できるのは主に以下の2つです。

 

1・工藤新一に関する重要な情報を入手したが黒田に対し虚偽の報告をした

2・工藤新一に関する情報を何も得られなかった部下としての失態

 

可能性が高いのはやはり1です。

ちなみに私の考察では黒田は2人存在し一方がラムです。

私はこの時の黒田はラムだと考えています。安室のこわばった表情はラムに対し虚偽の報告をしたからだと推測しています。

追記 

安室の強張った表情は赤井の生存を口外できない状況からくるものという可能性もあります。ですが安室は早い段階から沖矢=赤井であると気付いていたので赤井の生存は想定の範囲内。今更強張った顔をする必要はありません。 それでも私の考察通り電話の相手がラムであれば赤井の生存は確実に伏せなければなりません。

安室の表情は「赤井の生存を把握しながらラムに嘘を吐いた」or「新一の生存を把握しながらラムに嘘を吐いた」のどちらか。(追記:2019年12月15日)


コナンの正体は伝えなかった

赤井、工藤夫妻はコナンの正体が新一であることは伝えなかったと思います。

幼児化の事実を認めるのであればコナンがこの場にいるべきです。

いないということはやはり幼児化については明らかにはされなかったと考えるべきではないでしょうか。

これはコナン=新一だと伝えてしまうと今後の物語が美しく展開できないという作品上の理由が挙げられます。

 

安室は組織と深く繋がっている人物です。その彼に真実を伝えてしまうと物語が一気に進んでしまう。

劇場版で新作が公開される度に次々と記録を塗り替える国民的人気作品をそう簡単に終結させるわけにはいかないという大人の事情は確実に絡んでくるはずです。

 

何より安室がコナンの幼児化に辿り着くと赤井(沖矢)の立場がなくなります。

 

どういうことかというと赤井は亡き恋人、明美の妹である灰原を守る為に沖矢昴として存在しています。

彼には亡き恋人の無念を晴らす、そして灰原を守るという強い信念があり、その信念が彼の価値を確固たるものとしています。

 

しかし組織が幼児化させる薬を作っていると安室が知れば彼はコナンは勿論の事、その周辺にいる子供、つまり灰原についても徹底的に調べるはず。そして彼は死んだとされていたシェリーが灰原として生存していることにも辿り着きます。

その場合安室は組織からコナンと灰原を保護する道を選ぶのは確実です。それは同時に沖矢の存在価値を著しく低下させる事を意味します。

死亡したことになっており行動に制限のかかっている赤井は組織を追う上で安室よりずっと不利な状況にあります。

それでも赤井は幼児化という組織壊滅の糸口となるかもしれない情報を手に入れています。

つまり赤井は安室ほど自由な行動はとれないものの幼児化という情報の入手によって安室と対等という構図が完成しているわけです。

この状況下で安室に更に有利な情報を与えてしまえば今まで読者を魅了していた安室VS赤井の構図が非常にアンバランスなものになってしまいます。

 

安室に幼児化の事実を伝える事は赤井の魅力を大きく削いでしまいかねない。

勿論いつかは安室も真実に辿り着く可能性は高いでしょうがそれは「今」ではないと考えるべきだと思います。


スコッチの死の真相は明かされた?

私はスコッチの死には不可解な点が多いと感じています。

そもそも「お茶会」が開かれたのは安室と赤井に大きな亀裂が生じているからでありその原因は安室の親友で幼馴染であるスコッチの死です。

両者が顔を突き合わせたこの場で(しかも事態を治めてくれるであろう工藤夫妻もいる)スコッチについて一切触れない展開にはならないと思います。

作中で描かれなかった彼の死の真相が明らかにされる可能性もあるのではないでしょうか。


コナン&赤井と安室の関係は前進した

「長野廃教会殺人事件」ではコナンが安室に「ラムを知っているか」という問いをぶつけるシーンがあります。

つまり安室はラムに関する情報をコナンに渡していないことが分かります。両者が協力関係であるなら情報の共有を行うはずです。

 

また安室はラムについて尋ねられた際「(情報を提供することは)どの道、僕にメリットはない」とコナンに語っています。

一般的に両者に信頼関係がある場合メリットデメリットという言葉は表現として適切ではありません。

この言葉を用いたということはコナンと安室の間に信頼関係が成り立っているとまでは言えないことを意味しています。

 

また安室程自由に動けない赤井はコナンを窓口として情報を得るわけですがコナンに情報を渡さなかったということは安室と赤井も協力関係とは言えません。

コナン&赤井と安室との間で強固な協力関係は成立していないと考えるべきです。

しかし96巻でコナンは安室に「何か思い出したら連絡して」と言っています。

また沖矢の方はバーボンの瓶で酔っ払いを撃退しています。この2つは同じ夜の出来事であると同時にお茶会の直後の話なので3人の関係性の前進と捉えることができそうです。


安室は大人の対応を迫られた

上記の通り赤井、工藤夫妻は「沖矢としての生存を隠してほしい」「工藤新一について追わないでほしい」と安室に懇願したのではないかと思います。

しかし安室からこの3人に対し頼み事はこれと言ってないはずです。

つまり「お茶会」は安室が3人の要求を呑む場であったと考えられます。

安室は赤井を「殺したい程憎んでいる男」と語るほど強い恨みを抱いている。

その確執は工藤夫妻もそれなりに把握しているはずです。

これほどまでに憎んでいる相手の願いを安室が簡単に承諾するかという疑問が生じます。

しかしストーリーを円滑に進めるためには安室は承諾する道を取るはずです。

そうなると赤井、工藤夫妻には安室に対し手土産のような「何か」を与える可能性があります。

もし安室に対し何かを渡すのなら考えられるのは「スコッチの死の真相」あるいは変声機」あたりでしょうか。


■個人的に気になる事■

私は安室と榎本梓はこの「迷宮カクテル」の頃に協力関係を結んだと考えています。

そして95巻で唐突に存在が明らかになった「花粉症の新人君」が梓である可能性についても触れました。

「花粉症の新人君」が梓である場合変声機が必須アイテムなのでこのお茶会で安室が変声機を入手したかどうかが個人的に気になる点ではあります。


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『ゼロの日常』夢オチ回は安室の見た夢

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安室透を主人公とした公式スピンオフ『ゼロの日常』2巻収録の「あ…」は常連客の女性の見た夢、いわゆる夢オチです。

ですが実はこの夢、常連客の女性が見た夢と安室が見た夢が混ざっていることにお気づきでしょうか。

今回は『ゼロの日常』の「あ…」について考察したいと思います。

◆「あ…」とは◆

まずこの夢オチ回はざっくり説明すると以下の通り。

安室と同僚の榎本梓の勤める喫茶ポアロはイケメン店員の安室と看板娘の梓を目当てとしたお客さんで店内は大忙し。

そんな中安室目当ての女子高生たちが来店すれば梓は安室にわざとらしくぶつかり、梓目当ての男性客が来店すれば安室は梓の話を無視する。2人とも完全にヤキモチを妬いた状態。

そんな2人でしたが梓が安室に口をあーんと開けて彼の手元にあった苺をおねだりし、安室が食べさせてあげたことで仲直り。

お客さんは二人を「お似合い」と悔しがります。

やがて客のいなくなった店内は安室と梓の2人きりに。

二人は椅子を並べてのんびりムードで互いに「一緒にいると落ち着く」と言い、2人は「ずっとここにいること」を約束する為にゆびきりをし、梓は安室の肩にもたれかかります。

次に描写されたのはポアロ店内でうたた寝から目覚めた2人。

そして最後のコマでポアロ常連の鶴山というおばあちゃんがうとうと夢を見ています。

その夢は肩を寄せ合っていて恋人同士にしか見えない安室と梓の姿でした。

 掲載時添えられていたのは

「夢…………全ては夢だったのです!」

面白いくらい完全に夢オチであることを強調した一文になっています(笑)

ですがこれが誰の夢であるのかは明らかにされていません。

最後のコマを見れば読者は常連客の鶴山さんの夢としか思いません。

しかし細部まで見ればこの夢は安室の夢と鶴山さんの夢がMIXされたものだということが分かるようになっています。

◆実は意味深なタイトル◆

夢オチなら深く考察する必要もないのではと考える方もいると思います。

ですがタイトルの「あ…」に注目。

「ゼロの日常」は毎回登場人物の台詞やモノローグがタイトルになるのですがこの回だけ誰も「あ…」とは言っていません。
1ページ目で梓が「あっ」とは言ってますが「あ…」ではありません。

このようなタイトルはこのエピソードだけです。つまり他の回と一線を画す何かがあるということ。

夢オチ回と軽く流してはいけないという青山先生からのメッセージと受け取っていいはずです。

◆安室の夢という根拠◆

この夢が実は安室の夢が混ざっているという根拠として『ゼロの日常』1巻の「眠れないんですか?」の安室の状況と完全に対になっていることが挙げられます。

名探偵コナン ゼロの日常 (1) (少年サンデーコミックススペシャル)

名探偵コナン ゼロの日常 (1) (少年サンデーコミックススペシャル)

 

「眠れないんですか?」は安室がベルモットに快眠の秘訣をアドバイスしておきながら当の本人は忙しさでまともに睡眠をとることができない上、警察学校時代の友人たちが出てくる悲しい夢まで見てしまいそんな自分を「自業自得」と自嘲する話です。

1巻「眠れないんですか?」と2巻「あ…」の対の部分

1・安室の浅い眠りとうたた寝

2・心臓を引き裂く朝日と柔らかい日差し

3・死を望む安室と生に価値を見出だす安室

4・暗い表情の安室と穏やかな表情の安室

5・「ハッ…」と「あ…」

ひとつずつ説明していこうと思います。

1・安室の浅い眠りとうたた寝

「眠れないんですか?」では安室はベルモットと連絡を取っています。

その夜彼は警察学校の同期で今は亡き友人達が出てくる夢を見ます。

そして朝が来るとポアロで勤務する彼の姿が描かれています。

バーボン、降谷零、安室透という彼のトリプルフェイス全てが描かれた回です。

その彼の忙しさを象徴するようにこの回では安室が睡眠に割くことのできた時間はほんのわずかでした。

一方「あ…」ではうっかりうたた寝をしています。しかも場所は自宅でなく勤務先。非常に対照的です。

2・心臓を引き裂く朝日と柔らかい日差し

景光達が出てくる夢から覚めた安室にカーテンの隙間から朝日が差し込みますがこの光は彼の心臓を引き裂くように描かれています。仲間を失った彼の苦しい胸の内を表現したものです。

ですが「あ…」では安室と梓の2人には柔らかな日差しが降り注いでいます。

3・死を望む安室と生に価値を見出す安室

浅い眠りで安室の見た夢は亡き4人の友人達から笑顔で「おい、遅いぞ!早く来いよ!零(ゼロ)…」と声を掛けられるものです。

この台詞は残酷な言葉に置き換えれば「早く死んでしまえ」という意味合いになります。彼らが安室にそんな言葉をかけるわけがありません。

しかし夢というのは一般的に本人の潜在意識であり、かつ願望の表れとされています。

1巻当時の安室はこの残酷な言葉が欲しかった。彼の中には早々に散っていった仲間と違いただ一人生き長らえていることに対する自己嫌悪のようなものが存在していたのではないでしょうか。極端な表現になってしまいますが安室は心のどこかで死を望んでいて、それがこのような夢となって表れたのかもしれません。

そして「あ…」では安室は梓と「ずっとポアロにいる」という約束をします。

約束とは未来のある者=生きる者が交わすものです。死に逝く人間は先のことを約束することができません。

かつて死を望む夢を見た安室が真逆の生に価値を見出した大変貴重な描写と言えます。

4・暗い表情の安室と穏やかな表情の安室

2つのエピソードの表情の差は説明する必要もないですね。

亡き親友達が出てくる夢から目覚めた安室は表情が暗い、というよりも表情が見えないように目元が腕で隠れています。

目元が描かれていないことでかえって彼の喪失感が際立った演出になっています。

一方ポアロでのうたた寝から目覚めた安室の目元はぼんやり。次のコマでは目をこすっていることから完全にうたた寝していたことが分かります。彼がうたた寝の中で見た夢は組織に関するものでしたがそれでも緊張感など微塵も感じさせない表情です。

5・「ハッ…」と「あ…」

そして亡き友人達が出てくる夢から覚めた安室の第一声が「ハッ…」です。これは自嘲から漏れた一言。

安室は眠る前、ベルモットに睡眠に関するアドバイスをしていました。

しかし当の本人は良質な睡眠がとれていないどころか非常に辛い夢まで見ている。

そのことを彼はこのように自嘲しています。

「ハッ…眠りが浅くなった…人に助言しておいて…自業自得だ…」

先述の通り「あ…」はこのエピソード内でどのキャラクターも発していない。

そして「ハッ…」と対照的な印象を受ける一言です。

このように「眠れないんですか?」と「あ…」は完全に対になったエピソードであることが分かります。

対になる夢は当時者でないと見ることができません。

安室は梓と約束を交わす夢を見てその夢から覚めた彼が一言目に発したものだと思います。

よって「あ…」は常連客の女性の夢だけでなく安室が見た夢が混ざっていることになります。

◆奇妙な描写の数々◆

「あ…」にはただの夢オチ回と片付けるのは奇妙なシーンがいくつか見られます。

特に分かりやすいのがお客さんを出迎える梓の台詞です。

「刑事さん、皆さん、いらっしゃい!」

この台詞から梓と会話を交わした刑事らしき男性客2人以外にも誰かが来店したことが分かります。

実際このうちの1人の男性客はドアを大きく開けています。自分達以外のお客さんを店内に入れる為です。

ですがその後描かれたテーブル席にいるのは刑事と思しき男性客2人だけ。

鶴山さん一人が見ている夢だとすると矛盾が生じます。

「うちの娘も梓ちゃんくらい気立てがよかったらなぁ!」と語る男性客の吹き出しもポイント。

背後が隠れるような吹き出しになっています。この時訪れた人数を分からなくする為でしょう。梓の台詞だけでなくドアと吹き出しも使って訪れた人数を不明瞭にすることで夢を見ている人物についてミスリードしているわけです。

さらに梓が安室の肩にもたれかかるコマとうたた寝から目覚めた梓が伸びをするコマを比較すると日の入り方が真逆なのが分かります。

うたた寝をしている間にそれだけ時間が経過しているはずがなく、また2人が目覚めるシーンがはっきりと描かれていることから夢と現実の境目とは考えられません。

この光は意味のある演出ということになります。

安室の「今日はヒマ」という台詞と女子高生が来店したことを踏まえると2人が夢から覚めたのは午後ということ。

ですが夢の中の安室と梓の2人に降り注いだのは午後と真逆、つまり朝の光ということになります。

そして夢の中の男性客が食べ終えたお皿を見る限り彼らはランチを食べたはず。

この夢を見ているのが誰であれ、夢の中はお昼と考えられます。

ですがその夢の終わりで2人と共に描かれたのは朝の陽射し。

これは安室と梓が約束を交わす夢を見ている人物は朝に夢を見ているというヒント。

鶴山さんは午後の店内でうつらうつらしているので夢を見ているのは彼女ではありません。

また安室と梓が「ずっとここ(ポアロ)にいること」を約束するシーン。

よく見るとゆびきりのコマで安室は完全に指を絡めていません。

彼はいつか「安室透」を捨てポアロを去らなければならない立場です。このような約束は交わすことができません。

この夢を見ている人物は潜入捜査官である安室の立場を理解している者に限定されます。

そうなるとやはりこの約束のシーンは安室の夢ということになります。
少なくともただの夢オチであればこれらの不可思議な描写を加える必要はまるでないので「この回は何かがある」と捉えるべきでしょう。

◆どの部分が安室の夢か◆

このように細部まで見ると鶴山さんの夢に安室の夢が混ざっていることがよく分かります。ではどのシーンが安室の夢なのか。

 簡潔に述べると喫茶ポアロの暇な時が安室の夢で忙しい時が常連客の鶴山さんの夢です。

一応具体的に述べていきたいと思います。

冒頭のカラーは全て安室の夢です。

カラーページですが黄色が異様に多用されています。いっそ不自然です。

黄色は安室のイメージカラーです。これは夢の主が安室であるというメッセージですね。

本誌では「忙しい時は肌が触れあう事だって…」と添えられていました。

ですがよく見るとこのカラーページ、店内は人の姿がありません。つまり忙しくない。編集さんのミスリードですね(笑)。

ここから分かるのは このカラーページは安室の夢であると同時にポアロが暇なシーンが安室の夢であるということ。

カラーが終わると店内は「ワイワイ」「ガヤガヤ」という擬音も飛び交い一気に賑やかになります。これは鶴山さんの夢です。

そして安室の夢にバトンタッチするのが安室が梓に苺を食べさせ「おいしいですか?」と訊いたコマです。

このコマの右上と左下に奇妙な線が入っています。

よく見るとコマが傾いている。当然意味のあるコマということになります。

それを物語るように鶴山さんの横で食事をしていた眼鏡の男性客がここを境に姿を消してしまいます。

先程梓は刑事らしき男性客を「複数名」迎え入れていましたがここには男性客2人しかいない。よってこのコマの左半分からが安室の夢です。

つまり安室の夢では接客したのはこの男性客2人だけということ。

男性客が去った後、シンクに2人分のグラスしかないのも注目ですね。

鶴山さんはいつの間にか姿を消していますが安室の夢にはそもそも彼女は登場していないのです。

◆夢はいつどこで見たのか◆

では安室はいつ、どこでこの夢を見たのでしょうか。

この回で安室は組織関連の夢を見ています。これはそのまま事実なはず。

つまり梓と約束を交わす夢は別の日に見ていたと考えられます。

現時点では「あ…」のひとつ前の「こちらキャメル」(同じく2巻収録)の時だと思います。

ポイントになるのはやはり朝の陽射しです。

朝日が非常に印象的な扉絵が「こちらキャメル」です。

朝の陽射しで背景がえぐられてるように感じるほど日の光が強調されています。

そして安室はエプロンをなおしている。これはこの日の朝、安室にエプロンをなおさなければならない何かがあったと推測できます。

安室はこの日の朝、店内でうたた寝をしていたのではないか。

その時に見た夢こそ次のエピソードの「あ…」の内容ではないかという考察です。

エプロンをなおしていたのはうたた寝で乱れてしまったからではないでしょうか。

この日梓は珍しく店内にいませんでした。急病や事前のシフトなどで今日は梓と一緒の勤務にはならないことが分かったので逆に一緒にいる夢を見たのかもしれません。

安室がキャメルに向けた

「ご注文がないのなら、とっとと出て行ってくれませんかねぇ?このポアロから!」

余りにも有名な「満喫したのなら…とっとと出て行ってくれませんかねぇ…僕の日本から…」(84巻)をなぞった台詞です。

これも夢でポアロが自分にとって居心地のいい場所だと気付いた為に出てきた言葉ともとれます。

断言とまではいきませんがもし既に夢を見ていた日が登場していたとするならこの日かなと思います。

次に夢を見ていた場所です。

店内でうたた寝をしていた可能性について記載しましたが「こちらキャメル」の扉絵以外にも夢を見たのはポアロ店内と考えられる描写があります。

安室と梓の2人が肩を寄せ合うシーンの次のコマ(つまり夢と現実の境目のコマ)にポアロの入り口のドアから最も近いテーブル席が描かれています。

安室はこの席で夢を見ていて夢から覚めて真っ先に飛び込んできたのがこのコマに描かれた風景と考えられます。つまりこのコマは安室の視点で、彼はこのテーブル席のソファ側でうたた寝をしていたのだと思います。

というのも実はここは安室のお気に入りの席だから。

3巻「ニッカポッカ」の扉絵で安室はこのテーブル席のソファ側に座り読書をしている様子が描かれています。

かなり分厚い本を手にしていることから相当リラックスしている様子が窺えます。

安室にとってこの席が最もくつろげる場所だということ。

それはこの扉絵の内装からも推測できます。

実は『ゼロの日常』は安室の心理状態により、ポアロの店内の内装が異なる仕様になっています。

この「ニッカポッカ」扉絵の内装は安室のリラックスモードと推測できます。

※安室とポアロの内装の関係性については機会があればまた記事にします。

 安室が夢を見たのはこのソファ席でしょう。梓の「ずっとここにいてくださいね!」という台詞の「ここ」とはポアロの事です。

夢を見ていた場所がポアロであればここ=ポアロの方程式に合致します。

安室はこのソファ席で夢を見てその夢から覚めた一言目がタイトルとなった「あ…」なのだと思います。

『ゼロの日常』は時間軸がバラバラなので本編のどのタイミングで安室がこの夢を見たのかは不明です。

ですが1巻「眠れないんですか?」の後に「あ…」の夢を見ているのは確かです。梓の髪の長さからもそれは明確。

「眠れないんですか?」は本編の78巻とリンクしているため亡き友人たちの夢を見たのは78巻なのは確定です。

名探偵コナン (78) (少年サンデーコミックス)

名探偵コナン (78) (少年サンデーコミックス)

 

◆「大物狙い」も対のエピソード◆

『セロの日常』2巻の「大物狙い」は「あ…」と同じく「眠れないんですか?」と対照的です。

描き方の違いはありますが対になっています。

「大物狙い」はポアロで出す魚を使ったメニューの為に安室が釣りに出かける話です。

この回で安室は安室、バーボン、降谷の3つの顔を見せており「眠れないんですか?」を彷彿とさせます。

そして彼は睡眠時間を自ら割いて夜釣りに出かけ、夜の時間を楽しんでいます。

なんとか睡眠時間を確保しようとし、悲しい夢を見た「眠れないんですか?」とはあまりに対照的です。

何よりもこの回で安室は親友のヒロの死を完全に受け入れることができています。

 ヒロとの思い出を回想し目を閉じて笑みを浮かべている安室が浴びている朝日は彼の澄みきった心を演出しています。

これは安室に「親友の死を受け入れることができた何かがあった」ということ。

これこそが「あ…」で描かれた夢を見たからではないでしょうか。

もちろんヒロの死を受け入れる事の出来たエピソードが別に存在し、今後描かれる可能性もあると思います。

ですが「あ…」と「大物狙い」の2つが「眠れないんですか?」と対照的に描かれていることや3つのエピソード全てが特徴的な朝の陽射しの描き方をしている点を踏まえると安室が梓と約束をする夢を見たことで自分の気持ちの変化を感じ取ることができた、その結果として親友の死も受け入れることができたという推測は成り立ちそうです。

◆全て安室の夢の可能性もある◆

「あ…」は安室の夢と常連客の女性の夢が混ざったものと綴りましたが全て安室の夢という可能性もゼロではないかもしれません。

というのも例の刑事らしき男性客2人が来店した際の言葉は

「梓ちゃん、また来たよ!」

この時店内は賑わっているので鶴山さんの夢です。

そしてこの男性客2人が去っていく際の一言が

ごちそうさん!また来るよ!」

これは安室の夢の中です。

男性客の台詞だけを拾えば去り際の「また来るよ!」の答え合わせとして来店時の「また来たよ!」が描かれている可能性があります。

もしかすると安室は二度に分けて夢を見ていたのかもしれません。

夢の境目と考えられるコマは夢を見ている人物が鶴山さんから安室にバトンタッチした描写としましたが捉え方によっては安室が見ている夢を1度区切ったものという可能性もあるかもしれません。

この場合そのコマの後半が先に見た夢で前半が後に見た夢ということになります。

ちなみに最新の『ゼロの日常』40話(4巻)では梓が少年にパスタを「あーん」と食べさせようとするなど夢回を思い起こさせる内容となっていました。

これも安室が梓に苺を食べさせたシーンは安室の夢という事なのかもしれません。

基本的に全て安室の夢という可能性は低いと思いますが一応記載しておきます。

梓「安室さんだったら、何をお願いしますか?」

梓は桜の花びらが地面に落ちる前に三枚つかむと願いが叶うというおまじないについて語った後安室にこの問いを投げかけています。

これは安室の深層心理に迫る質問です。

安室の願い事=安室の夢=夢回と繋がります。

名探偵コナン ゼロの日常 (4) (少年サンデーコミックススペシャル)

名探偵コナン ゼロの日常 (4) (少年サンデーコミックススペシャル)

 

実は私は今回の記事をほとんど書き上げていながらあえてUPしていなかったんです。

このタイミングで夢回について触れられる展開になることは予想できたので全てまとめてUPしたかったんです。

予想できた理由は『警察学校編』がスタートすることが発表されていたから。

これは今までの『ゼロの日常』と一区切りつけるという事。

安室透は非常に多くの謎に包まれたキャラクターであり、彼を主人公としたスピンオフでさえ彼の素顔を垣間見る事は難しいのが実情です。

ですが夢とは本人の潜在意識であり、願望の表れとされていることからこの夢回は安室の本質そのものという事になります。

『ゼロの日常』で彼の内面が最も描かれたのがこの夢回な訳です。

警察学校編は過去の安室(降谷零)を描くもの。それとは対照的に「あ…」は現在の安室の深層心理を描いたもの。

過去に触れる前にまず現在の安室透と向かい合うエピソードが必要になるはず。

それは必然的に警察学校編スタートの前である40話で夢回をなぞったエピソードを描くことを意味します。

今週号が夢回を匂わせる内容になることは想定できたことです。

 警察学校編を前に夢回をなぞったエピソードを出してきたのはやはり夢回で夢を見ているのが安室だからと言えます。

警察学校編で新たな安室の素顔などが描かれれば彼の人物像を考察して記事にしてみたいと思います。


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伊織無我の正体を考察

今回は大岡家の執事、伊織無我について考察したいと思います。

何しろ彼はまだ出番がそう多くないキャラクター。

だからこそ今なら思う存分考察ができるというもの(笑)

この状況を活かして深読みも交えながら綴ろうと思います。

 

◆伊織織無我は麻薬取締官ではないか◆

私は伊織の正体は麻薬取締官の可能性があるのではないかと考えています。

伊織無我は一般人ではないことは確かなはず。

 

まず彼の初登場の「謎解きは喫茶ポアロで 92~93巻」。

彼の存在に気付いたコナンと平次の感想が以下の通り。

平次(な…何や…コイツ…)

コナン(気配が全くしなかった!?) 92巻

2人のすぐ隣のテーブルにいたにも関わらず伊織が話し始めるまでコナンと平次は彼の存在に気付くことができませんでした。

 

また事件解決後も人知れず姿を消しています。正に神出鬼没。

さらに94巻では紅葉に襲い掛かろうとする人物をあっさりと撃退しています。

大金持ちのお嬢様の執事を務められるだけあって身体能力に関しても優れた人物と言えそうです。

名探偵コナン (92) (少年サンデーコミックス)

名探偵コナン (92) (少年サンデーコミックス)

 

そして最新の「暗号謎解きレース」では死体を目撃しても微動だにしない。

これらの点から一般人とは異なる「何か」が彼には備わっていると考えられます。

その「何か」は麻薬取締官という正体なのではないか。

 

私は以前から彼の正体は麻薬取締官ではないかと考えていたのですがマトリが大岡家に潜入する理由がイマイチ分からなかったのでこの仮説は成り立たないとも考えました。

そんな中、最新のサンデー40号で大岡家が羽田家と縁のある家柄であり、同時に羽田浩司が大金持ちの御曹司であることも明らかとなりました。

このことから羽田家が組織に資金援助をしていた可能性も浮上します。

そして羽田浩司はAPTX4869により最期を迎えている。

 

ざっくり説明すると羽田家と薬物には関連がある。そしてその羽田家と縁のあったのが大岡家です。

マトリである伊織が羽田家の周辺に不審な動きを感じ、縁のある大岡家に潜入した可能性などは考えられる状況が生まれました。

 

先述の通りコナンと平次は伊織の気配に全く気付くことができませんでした。

しかし安室はちゃんと気付いています。

コナン「ねぇ、あの人よく来るお客さん?」

安室「いや、初めてだと思うよ…君達が来たすぐ後に来店された方で…」92巻

これは安室が観察能力に長けているというよりも同じ潜入捜査官としての力が発揮されたシーンではないかと考えています。

要するに伊織の正体に関する伏線ではないかな、と。

またこの回で伊織は登場時も去り際も見事に気配を消し去っていますがこれも潜入捜査官ならではのテクニックと言えます。

 

安室の名前は透。透明の意味があります。

伊織の名前は無我。自分を無くすという事。

自身の存在を透明にする、無くすという名前の共通点は2人が似通った職業に就いているというヒントなのかもしれません。

ポアロで事件が発生したばかりの店内で伊織はこんな台詞も言っています。

「私はあの入り口の扉の前に陣取り何人たりとも店外に出さぬよう警戒しておりましたので…」 93巻

これは悪人を絶対に捕まえるという正義の立場の人間の行動です。彼の本来の姿の象徴的な行動と言えます。

もちろん安室同様に公安の可能性もゼロとは言えませんが気になるのはこの台詞。

「私は和田進一…医療関係者です」 93巻

彼は平次の観察を目的とし、素性を隠してポアロにやってきています。

この場合偽名を名乗ることは何ら問題はありませんが私が気になっているのは医師など明確な職業でなく医療関係者としたことです。

麻薬取締官は一般的に薬事に精通している人物を指します。

ここで伊織が「医療関係者」と名乗っても彼が麻薬取締官であるのならこの発言は嘘にはなりません。

 

また犯人は返り血を浴びている可能性があるので手を見せてほしいという安室に対し両手の手の甲を顔の位置まで挙げています。

ドラマなどでよく見る医師のオペのポーズです。これも彼が本当に医療の分野に明るい人物という意味かもしれません。

深読みですが長髪なのもマトリの仕事上有利なのかも。

コナン「おとり捜査も法律で認められているから…金髪も刺青も鼻ピアスも何でもアリ!」 83巻

彼は紅葉に仕えていますが京都の言葉を話しません。

恐らく京都の人間ではないが事情があって大岡家のある京都に来ているという事。

これも一か所に身を置かない潜入捜査官ならではと考える事ができます。

ポアロで偽名を名乗ったことや事件後事情聴取に応じなかったのは「本来の自分」を隠すためだったのかもしれません。

また最新の事件で伊織がいわゆる外国人目ではないことが分かりました。(初登場時は一貫して外国人目)

ポアロで外国人目だったのは安室がバーボンとして振舞う時と似通った意味なのかもしれません。


◆伊織の「いずれ…」の言葉の意味◆

平次「けどアンタら何者や?」

伊織「まぁそれは…いずれ…」 38号

伊織の言葉は自分には秘密があるという意味。

秘密を抱えた人物となると組織に大きく絡むことが予想されますがポイントは平次に返事をしたこと。

この時コナンも発言していますがコナンは車中で伊織に背を向けています。

そんな中伊織は後部座席を振り返り返事をしている。

これは伊織が返事をした相手がコナンでなく平次だという明確な描写です。

今のところ平次は組織を追う人物ではありません。

伊織の秘密は組織を追うコナンでなく平次に明かすことに意味があると捉えることができます。

そこで思い出されるのが83巻の平次と麻薬取締官の騒動です。

平次はおとり捜査中だった麻薬取締官の人物が和葉にちょっかいを出したと勘違いをしたことがありました。

伊織の秘密が麻薬取締官である場合平次と無関係ではないので「いずれ…」という言葉が過去の答え合わせになりそうです。


◆伊織無我は「悪」ではない◆

伊織が悪の立場であるという可能性は今現在は有り得ないと言うべきだと思います。

先述の咄嗟に出入り口を塞ぐ行為も平次に対し自らの秘密を明らかにするという言葉からしても悪という要素は皆無。

素性は気になるところですが警戒に値する人物ではなさそうです。


◆伊織は羽田家の元家政婦の息子なのか◆

最新の事件は大岡家と縁のある家で家政婦をしていた女性が生前に残した暗号を解き明かすというものでした。

その暗号は彼女の4人の息子が協力し合わなければ解けないもの。

その息子たちは全く似ていなかったのですが眉毛だけは似通っていました。伊織はこの種類の眉毛の持ち主です。

4人の息子たちは家族写真をコナン達に見せ、それが撮影されたのが30年前と語っています。

伊織の年齢が30歳。そしてこの家族写真や息子たちが火傷を負った際の回想シーンは母親の腹部が徹底して見えないように描かれています。

次男「母さんの体重ですよ…あの頃かなり太っていましたから…」 40号

あの頃という言葉をわざわざ付けているのは普段は痩せていたという事。

この4兄弟の母親は当時妊娠していたのではないでしょうか。

三男「その上あの日も肉焼きまくってたらふく食べていたしよ… 40号

この台詞も母親が5人目の子供を妊娠中で食欲が旺盛だったと捉えることが出来そうです。

妊娠が事実なら眉毛や年齢からお腹の子供は伊織と考えられます。

母親は子供をみんな養子に出したのだからそれなりに複雑な家庭環境だった。5人目の子供について息子達に語っていなくても何ら不思議ではありません。

私は彼女がこの時妊娠していた可能性はかなり高いと思います。そしてその子供が伊織というのがミスリードとも考えにくい。

伊織はまだ出番の少ないキャラクターなのでミスリードを描く段階ではないような気がします。

もしこの女性と伊織が親子であった場合羽田家の情報を家政婦の母から聞く機会もあったでしょうし伊織本人が羽田浩司と面識があっても年齢的におかしくありません。

 

そうなると伊織と薬物がぐっと近い存在となり彼の正体が麻薬取締官という私の推察も有り得ないとは言えないと思います。


◆伊織と安室は交流がある?◆

伊織と安室には交流がある可能性についても考えているので一応綴っておきます。

安室は伊織の来店についてコナンに「初めてだと思う」と答えています。

嘘をついている様子はなく、伊織と安室に面識があるような印象は受けません。

ですが深読みすると事件発生後の2人は初対面にしては奇妙な行動を取っているように見えます。

ポアロ店内が停電し暗闇の中で被害者の悲鳴が響きます。この時安室の取った行動は梓に電源の復旧を促すことでした。

そして伊織は上記の通り容疑者が逃げ出さないよう出入り口を塞いでいます。

この伊織の行動は本来なら安室が取るべき行動です。

それをしなかったのは両者には交流があり安室から見て伊織は緊急時にそれ相応の行動のとれる人物だと判断していたからではないか。だから出入り口の事は入り口近くに座っていた伊織に任せ自分は梓に声掛けをした。

このように考えることができます

また伊織は安室と違い息のある被害者に対し何の行動もとっていません。

伊織が麻薬取締官であるかはさておき最新の事件で死体を見ても動じていないことからこのような現場には慣れているはずです。そして彼には悪の要素が皆無。その伊織が何の対処もしなかった。

これも伊織が安室の職務内容を理解していたので彼に任せておけば安心と考えた結果かもしれません。

そして伊織は事件解決後誰にも気付かれずにその場を去っています。

安室は彼の入店時にその気配に気づけたのですから伊織がこっそりポアロを後にしようとする気配も感じ取り、現場に留まらせることはできたはずです。

それをしなかったのは安室が交流のある伊織を逃がしてやっと捉える事もできるのではないでしょうか。

つまりポアロの一件は両者の阿吽の呼吸が成り立って解決できた事件ではないかという深読みの考察です。深読みですが一応の筋は通ると思います。

安室は麻薬取締官と交流している可能性が高いと考えているので伊織も交流のある人物のうちの1人なのかもしれません。

ただこれは2人が交流がなくとも互いに潜入捜査官という気配に気づいた為に可能だった連係プレイの線も有り得ますね。

年齢も1つ違いなので交流があれば面白いなと思います。安室の右腕の風見も伊織と同じ30歳でしたね。


◆伊織のスマホは脇田とお揃い?◆

※この項目を書いてからかなり経ちますが2022年3月現在スマートフォンのデザインに関しては作者の作画ミスの可能師を考えており考察材料としては弱いと判断しています。

伊織のスマホは脇田と同じデザインの可能性があります。

断言できないのは最新の伊織のスマホには脇田のスマホのデザインの特徴である四角のマークが見られないからです。(ポアロの事件の時はマークあり)

書き忘れなのかそもそも同じ物では無いのか気になるところです。

単行本で脇田と同様のデザインに修正されていた場合は彼のスマホが今後の展開のキーになる可能性が高くなりますね。

私は以前から脇田はラムではなく麻薬取締官であるとこのブログで主張しています。

2人のスマホがお揃いである場合2人とも同じ職業という伏線の可能性があります。

ちなみに伊織の初登場の事件の際脇田の勤めるいろは寿司の話題が唐突に出てきます。(93巻)。伊織と脇田は繋がりがあるという示唆かもしれません。

付け加えると脇田と黒田も同じスマホです。

これは黒田がラムで脇田が彼の影武者だからスマホも同じでなくてはならない為と推理しています。

最新の事件の扉絵は左目を閉じている紅葉とラム肉という単語から脇田を連想させます。

最後に羽田浩司に関する新情報が出てきたのでラムの正体は脇田という方程式を読者に示したい青山先生の考えなのかなと思いますが同時に脇田と伊織は同じ麻薬取締官であるという伏線なのかなと考えています。


◆伊織の目的は何なのか◆

ここでは伊織の正体を麻薬取締官ではないかと綴っていますが現状ではまだ考察材料が足りません。

しかし気になるのは伊織のこの言葉。

「この伊織…死力を尽くしてお支えする所存でございます!」 93巻

この言葉はどこまで本音なのかがさっぱりです。

名探偵コナン (93) (少年サンデーコミックス)

名探偵コナン (93) (少年サンデーコミックス)

 

彼の忠誠心の向かう先は紅葉個人なのか大岡家なのかはたまた潜入捜査官であった場合その職務上潜入先に馴染むために相手が気に入る言葉選びをしているのか。

92巻で彼はお喋りなキャラクターである安室の言葉を遮り長々と発言しています。

これは平次が和葉に告白するのを止めさせたいという思惑が働いての事ですがそれにしても不必要に話している印象を受けました。

実際に伊織の言葉を受けた平次の感想は告白を思いとどまろうではなく伊織の気配の無さへの衝撃です。

もしかすると伊織は本来お喋りな人物なのかもしれません。

その場合彼は無我という己の名前の通り自分を偽って聞き分けの良い執事を演じていることになります。

そもそも潜入捜査官であった場合この名前すら偽名のはず。

「死力を尽くす」という言葉を用いてまで紅葉に仕える理由は何なのか、一体何が目的なのか。

「いずれ…」の答え合わせが待ち遠しいキャラクターです。

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紅葉主催の暗号解読レース

【紅葉主催の暗号解読レース】

 

サンデー36・37合併号~40号掲載の4話に渡る事件です。

 

ある資産家の屋敷に長年勤めていた家政婦は亡くなる間際、4人の息子達に1枚ずつ宝のありかを記した暗号を送ります。

その暗号は4人が協力しなければ解読できないものでした。

しかし暗号を4人が送り合った後長男が行方不明となったことを3兄弟が心配しその資産家と縁のある大岡家に暗号解読の依頼が入ります。紅葉は新一と平次に暗号の解読を頼みますが浮かび上がった暗号の場所に赴くとそこには殺害された長男の姿がありました。


「裏切りのステージ」再び?

 

個人的にはラム編を考察する上でとても興味深い事件でした。

まず扉絵の紅葉が左目を閉じているのはやはり脇田を連想させます。

さらにラム肉という言葉が容疑者からはっきりと出てきました。

脇田に関する考察の材料が描かれている事件かもしれないと思っています。

私の考察では脇田はラムではありませんしラム編はかなり大掛かりな仕掛けが施されていると考えているので紅葉が左目を閉じていることとラム肉という単語が出てきたことでかえって私の中では脇田はラムではないなという思いが強くなった感じです。

 

今回とても気になったのは被害者の長男の外見が「裏切りのステージ(90巻収録)」の容疑者の1人、布施にそっくりなことです。

最初は布施が殺害されたのかと思ったほど外見がよく似ています。

このブログに何度か記載しましたが「裏切りのステージ」はラム編における重要な事件だと考えています。

その容疑者の1人と長男の外見がよく似ているのと同時に4兄弟の証が火傷の跡という点に私は注目しています。

 

というのも「ラム編は火災がキーワードのひとつではないか」と私は以前から考えていたからです。

「裏切りのステージ」に登場にした容疑者にも火災の意味を持つ名前が使われていたのでこの事件の火傷も何かの伏線なのではないかと考えています。

火災についてはまた別に記事にします。


アレルギーとダジャレ

 

また最近のコナンによく見られるのが「アレルギー」と「ダジャレ」を組み合わせたエピソードです。

■猫アレルギーの飼い主と安室の「猫を被って」という発言(梓に「ダジャレ」と言われている) 82巻

■犬アレルギーの被害者とダイイングメッセージが拳銃「ニューナンブ」の可能性から新人販売員の南部を疑う 91巻

■花粉症の新人刑事の登場&猫アレルギーを自称する犯人とダイイングメッセージが青NOで犯人が青野(千葉から駄洒落と言われる) 96巻

■花粉症の犯人と世界を唖然とさせる映画「アゼンジャーズ」 96巻

今回の事件も暗号の解読方法はダジャレで被害者は金属アレルギーでした。

 

こうも続くと「アレルギー」と「ダジャレ」はラム編における重要なキーワードと考えてもいいのではないでしょうか。

もし本当に意味があるのであればどちらか一方でなくセットで描かれている事に注目するべきです。

 

ダジャレでイメージされるキャラクターと言えば喫茶ポアロのウエイトレスである榎本梓の兄、杉人です。

彼は大のダジャレ好きです。またアレルギーで一般的なものと言えば花粉症ですが榎本兄妹は2人とも植物に由来した名前なのでアレルギーと無関係とは言えません。私の考察上妹の梓は作中で重要な役を担っていると考えているのでこの2人を指しているような気もしますがやはり断言はできません。

 

しかし「アレルギー」と「ダジャレ」の組み合わせは意図的ではないでしょうか。


大岡家と羽田家の繋がり

 

物語の最後に亡くなった家政婦は羽田家で働いていたことが明らかになりました。

つまり大岡家は羽田家と縁のある家柄という訳ですね。

コナン(羽田浩司は…大金持ちの御曹司だったって訳か…)

コナンのこのモノローグは青山先生から読者に向けて「羽田浩司は相当にお金のある人物だった」というヒントだと思います。

 

将棋で大成功して財を成したとかお金持ちの息子というレベルでない巨額の富が彼にはあった。

そうなると彼は組織と繋がっていた可能性も出てきます。

 

 

気になるのは彼が「大金持ち」本人でなく「御曹司」という点です。

仮に17年前の犯行が資金目的である場合なぜ資産家本人でなくその息子がターゲットとなったのか。

それとも羽田浩司の金銭事情にはまだ隠された事情があるのか。

 

そもそも彼の死には不可解な点が多々見られます。

羽田浩司が資産家の御曹司であることが明らかになったことでその闇を少しだけ照らす光になる情報かもしれません。


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