工藤邸でのお茶会を考察

「黒うさぎ亭」シリーズ(95巻)が「迷宮カクテル」が3週に渡って放送されることが分かりました。

放送は8月31日(土)からです。

 

安室と赤井という因縁の間柄である2人が互いに銃を突き付けるという衝撃的なシーンから始まったこの「黒うさぎ亭」ですが放送に合わせて原作で何かしら動きがある可能性もあります。

その前に自分なりの考察を記しておきたかったのでこのタイミングでの更新です。


工藤邸でのお茶会とは

そもそも工藤邸でのお茶会とは何を指すのかというところから。

 

脅迫状が届いたから来てほしいという依頼が小五郎の元に舞い込み、安室はコナン、小五郎、蘭と「黒うさぎ亭」へ向かいます。

その前にラムから工藤新一について調査をするよう命じられていた安室はここで蘭の財布から工藤邸の鍵を盗み「黒うさぎ亭」での事件解決後のその夜、安室は灯りの消えた工藤邸へ侵入します。

そこには因縁の相手である赤井が待ち構えており両者は暗闇の中銃を突きつけ合います。

しかし互いに挑発的な発言をしている最中、突然部屋に灯りがともります。電気を点けたのは家主の工藤優作。横には妻の有希子の姿もありました。

優作「ゆっくり妻の淹れた紅茶でも…味わっていってくださいね…」

有希子「レモンとミルク…どちらにします?」 95巻

名探偵コナン (95) (少年サンデーコミックス)

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話はここで終わっています。

 

これが読者の間では「お茶会」という名で語られています。

また「黒うさぎ亭」の話の9時間後という記載があるため「9時間後」という表現もあるようです。

ここで何が話し合われたのか、そもそもお茶会が行われたのかすら何も明らかにされていません。

これが現時点でのお茶会の全てです。あまりにも情報が無さ過ぎます。

ですが裏を返せば「何かがあったから今まで何も描いてこなかった」と言えます。

では工藤邸でのお茶会では一体何が話し合われたのか考察したいと思います。


伏せられた赤井生存の真実

赤井は表向きは死んだことになっており現在は工藤夫妻の力添えで大学院生沖矢昴として生活しています。

安室も沖矢の正体が赤井であることはほぼ確信している状態でした。

赤井、工藤夫妻は沖矢昴の正体が赤井秀一であることを認めたはずです。

 

コナンは工藤新一生存の情報がネット上に流出したことを警戒していました。

またコナンは安室が新一の情報を探っている様子も蘭の持つ工藤邸の合い鍵に注目する様子も目の当たりにしています。

赤井「君が今日ここへ侵入する事を…全て読んでいたとしたらどうだ?合い鍵を作る事も…工藤新一を探れという命を受ける事も…」

この言葉からも分かるようにコナン、赤井、工藤夫妻にとって安室の侵入は完全に想定していたものでした。

 

優作と安室が工藤邸でお茶会をするのは95巻が初めてではありません。

2人が初めてお茶会をしたのは85巻。優作が沖矢の変装をした状態でした。

安室は沖矢の正体が赤井であることを見抜いていましたがこの時目の前にいる沖矢が優作の変装とまでは気付くことができず安室と沖矢(優作)のお茶会の途中で赤井から安室に電話があったことで彼は引き下がってしまった過去があります。

 

今回のお茶会が前回と決定的に違うのが優作が変装の事実を認めているところです。

安室の侵入前に優作は沖矢のマスクで窓際に立っています。これは沖矢が部屋にいるのを安室に確認させるためです。

その後安室の前に現れた優作は沖矢のマスクを取ってはいるものの服装は沖矢のマスクを被っていた時のままです。そして赤井は変装をしていない状態。つまり灯りのついた工藤邸には先程までいたはずの沖矢がいません。

これは赤井、工藤夫妻が沖矢昴という人物は存在しないことを認めていることになります。

 

これは優作が過去に沖矢に変装していたこと、そして赤井が現在は沖矢として生きていることをこの後のお茶会で肯定する為と捉えるべきです。

赤井は自分が沖矢昴として生きていること、そしてそれを外部に漏らさないことを懇願したのだと考えられます。


工藤夫妻は新一の生存を認めた

工藤邸でのお茶会の9時間前安室は新一についての情報を蘭に求めています。

安室「修学旅行も事件続きで大変だったそうじゃないですか…まぁ、同級生の工藤新一君の活躍で無事に解決したようですが…」

蘭「はぁ、まぁ…」 

蘭のこの発言は明確ではないものの新一の生存を認めたと言えます。

 

『ゼロの日常』では安室が信頼できない、素性が知れないと判断している人物の目元を描かないという手法が用いられていますがこの作品で蘭はしっかりと目元が描かれていることから安室は彼女に対し何の疑いも抱いていないのが分かります。

つまり蘭からの新一生存の情報を安室は信じることになります。

 

さらに新一生存の情報がネット上に拡散されていることもあり工藤夫妻も今更新一の生存をひた隠しにするとは思えません。新一の生存については事実と認めた上で「探らないでほしい」とも付け加えたと思います。

 

また96巻で上司の黒田と安室のこんな会話がありました。

黒田「それより例の件は…どうなってる?」

安室「まだ何も…」

「例の件」という言葉を受けて安室が回想したのは工藤邸での赤井、工藤夫妻です。

 

このことから「例の件」はお茶会を指していると考えられます。

つまり黒田は新一の生存情報を受けて安室が動いた(あるいは動こうとしている)ことを知っていることになります。

そして安室の「まだ何も…」の表情は大変強張っています。この強張った表情から推測できるのは主に以下の2つです。

 

1・工藤新一に関する重要な情報を入手したが黒田に対し虚偽の報告をした

2・工藤新一に関する情報を何も得られなかった部下としての失態

 

可能性が高いのはやはり1です。

ちなみに私の考察では黒田は2人存在し一方がラムです。

私はこの時の黒田はラムだと考えています。安室のこわばった表情はラムに対し虚偽の報告をしたからだと推測しています。

追記 

安室の強張った表情は赤井の生存を口外できない状況からくるものという可能性もあります。ですが安室は早い段階から沖矢=赤井であると気付いていたので赤井の生存は想定の範囲内。今更強張った顔をする必要はありません。 それでも私の考察通り電話の相手がラムであれば赤井の生存は確実に伏せなければなりません。

安室の表情は「赤井の生存を把握しながらラムに嘘を吐いた」or「新一の生存を把握しながらラムに嘘を吐いた」のどちらか。(追記:2019年12月15日)


コナンの正体は伝えなかった

赤井、工藤夫妻はコナンの正体が新一であることは伝えなかったと思います。

幼児化の事実を認めるのであればコナンがこの場にいるべきです。

いないということはやはり幼児化については明らかにはされなかったと考えるべきではないでしょうか。

これはコナン=新一だと伝えてしまうと今後の物語が美しく展開できないという作品上の理由が挙げられます。

 

安室は組織と深く繋がっている人物です。その彼に真実を伝えてしまうと物語が一気に進んでしまう。

劇場版で新作が公開される度に次々と記録を塗り替える国民的人気作品をそう簡単に終結させるわけにはいかないという大人の事情は確実に絡んでくるはずです。

 

何より安室がコナンの幼児化に辿り着くと赤井(沖矢)の立場がなくなります。

 

どういうことかというと赤井は亡き恋人、明美の妹である灰原を守る為に沖矢昴として存在しています。

彼には亡き恋人の無念を晴らす、そして灰原を守るという強い信念があり、その信念が彼の価値を確固たるものとしています。

 

しかし組織が幼児化させる薬を作っていると安室が知れば彼はコナンは勿論の事、その周辺にいる子供、つまり灰原についても徹底的に調べるはず。そして彼は死んだとされていたシェリーが灰原として生存していることにも辿り着きます。

その場合安室は組織からコナンと灰原を保護する道を選ぶのは確実です。それは同時に沖矢の存在価値を著しく低下させる事を意味します。

死亡したことになっており行動に制限のかかっている赤井は組織を追う上で安室よりずっと不利な状況にあります。

それでも赤井は幼児化という組織壊滅の糸口となるかもしれない情報を手に入れています。

つまり赤井は安室ほど自由な行動はとれないものの幼児化という情報の入手によって安室と対等という構図が完成しているわけです。

この状況下で安室に更に有利な情報を与えてしまえば今まで読者を魅了していた安室VS赤井の構図が非常にアンバランスなものになってしまいます。

 

安室に幼児化の事実を伝える事は赤井の魅力を大きく削いでしまいかねない。

勿論いつかは安室も真実に辿り着く可能性は高いでしょうがそれは「今」ではないと考えるべきだと思います。


スコッチの死の真相は明かされた?

私はスコッチの死には不可解な点が多いと感じています。

そもそも「お茶会」が開かれたのは安室と赤井に大きな亀裂が生じているからでありその原因は安室の親友で幼馴染であるスコッチの死です。

両者が顔を突き合わせたこの場で(しかも事態を治めてくれるであろう工藤夫妻もいる)スコッチについて一切触れない展開にはならないと思います。

作中で描かれなかった彼の死の真相が明らかにされる可能性もあるのではないでしょうか。


コナン&赤井と安室の関係は前進した

「長野廃教会殺人事件」ではコナンが安室に「ラムを知っているか」という問いをぶつけるシーンがあります。

つまり安室はラムに関する情報をコナンに渡していないことが分かります。両者が協力関係であるなら情報の共有を行うはずです。

 

また安室はラムについて尋ねられた際「(情報を提供することは)どの道、僕にメリットはない」とコナンに語っています。

一般的に両者に信頼関係がある場合メリットデメリットという言葉は表現として適切ではありません。

この言葉を用いたということはコナンと安室の間に信頼関係が成り立っているとまでは言えないことを意味しています。

 

また安室程自由に動けない赤井はコナンを窓口として情報を得るわけですがコナンに情報を渡さなかったということは安室と赤井も協力関係とは言えません。

コナン&赤井と安室との間で強固な協力関係は成立していないと考えるべきです。

しかし96巻でコナンは安室に「何か思い出したら連絡して」と言っています。

また沖矢の方はバーボンの瓶で酔っ払いを撃退しています。この2つは同じ夜の出来事であると同時にお茶会の直後の話なので3人の関係性の前進と捉えることができそうです。


安室は大人の対応を迫られた

上記の通り赤井、工藤夫妻は「沖矢としての生存を隠してほしい」「工藤新一について追わないでほしい」と安室に懇願したのではないかと思います。

しかし安室からこの3人に対し頼み事はこれと言ってないはずです。

つまり「お茶会」は安室が3人の要求を呑む場であったと考えられます。

安室は赤井を「殺したい程憎んでいる男」と語るほど強い恨みを抱いている。

その確執は工藤夫妻もそれなりに把握しているはずです。

これほどまでに憎んでいる相手の願いを安室が簡単に承諾するかという疑問が生じます。

しかしストーリーを円滑に進めるためには安室は承諾する道を取るはずです。

そうなると赤井、工藤夫妻には安室に対し手土産のような「何か」を与える可能性があります。

もし安室に対し何かを渡すのなら考えられるのは「スコッチの死の真相」あるいは変声機」あたりでしょうか。


■個人的に気になる事■

私は安室と榎本梓はこの「迷宮カクテル」の頃に協力関係を結んだと考えています。

そして95巻で唐突に存在が明らかになった「花粉症の新人君」が梓である可能性についても触れました。

「花粉症の新人君」が梓である場合変声機が必須アイテムなのでこのお茶会で安室が変声機を入手したかどうかが個人的に気になる点ではあります。


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