「思い出の料理」は安室が周囲と距離を縮めた最初の話

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『ゼロの日常』41話「思い出の料理」。

安室と梓が常連客の女性の思い出の味、赤いケーキの再現を試みる話です。

劇場版「緋色の弾丸」の公開を間近に控えスピンオフでも赤井家の宣伝活動ですね(笑)。

安室は赤井との因縁から嫌いな色は赤。自分の嫌いな色のケーキを作らなければならないというギャグ回かと思いきやよく見ると赤いケーキを通して安室が周囲と距離を深めた最初の話の可能性が見えてきました。

安室透の心境の変化が丁寧に描写された大変貴重な回と言えます。

今回は赤いケーキを通して描かれた潜入捜査官、安室透の心境の変化について考察します。


  ◆「思い出の料理」のあらすじ◆ 

 ポアロの常連客のおばあちゃん、鶴山さんは何十年も前に食べたという真っ赤なケーキの味が忘れられないとのこと。

それがレッドベルベットケーキという名前と分かり新メニューの開発も兼ねて安室と梓はレシピを調べて作ってみます。

ですが鶴山さんの思い出の味の再現とはいきませんでした。

そこで安室は梓に協力を仰ぎ赤いケーキ作りに再チャレンジ。

見事鶴山さんの理想通りのケーキの再現に成功。

そして安室は「思い出の料理」という言葉に自分の警察学校時代の思い出を重ねるのでした…。


◆「思い出の料理」はある程度前のエピソード◆

今回のエピソードは安室、梓、鶴山さんの3人が仲良く交流している微笑ましい話と受け取った読者の方が多いかもしれません。

ですがよく見ると安室は梓と鶴山さんに対し距離を置いているのが分かります。

基本の情報ですが『ゼロの日常』は回を重ねるごとに最新の話になっているとは言えません。

例えば3巻から4巻にかけての「パン教室」「サバイバル教室」の2話は同日のもので東尾マリアちゃんの台詞からこの日は「マリアちゃんを探せ! 本編95巻」のすぐ後だと分かります。

ですがその後に描かれた「頼んだぞ」は本編94巻とリンクしていることが分かります。

これら以外の情報からも『ゼロの日常』は話が前後しながら描かれていることは明確です。

『ゼロの日常』では安室が梓や鶴山さんと距離を詰めて交流している様子が何度か見られました。

ですが後述の通り今回のエピソードにはその交流が感じ取れないのです。

つまり「思い出の料理」はある程度前の出来事を描いた話ということになります。


◆梓の影に隠れる安室◆

梓「今、鶴山のおばあちゃまから思い出の味を教えていただいて」

梓と鶴山さんは思い出の赤いケーキの話題で盛り上がっていましたが安室は2人の目の前にいるにも関わらず会話に参加していません。

また彼の料理の腕は群を抜いているはずですがケーキ作りの際梓のアシスタントのような役回りとなっています。

特にケーキ完成のコマは梓が1人で作ったかのような印象さえ受けます。安室はというと彼女の背後でパチパチと拍手をしているだけ。完全に彼女に手柄を譲っている状態です。

この様に黒子に徹する安室は『ゼロの日常』の初期に見られたものです。

その一方で彼は赤いケーキという言葉に不機嫌な表情を浮かべている。これは完全に陰に徹し、自分の本音をひた隠しにしてきた第1話の頃より3人の仲はかなり温かなものになっていることを意味しています。

ですが彼が自分の能力を隠すことに重きを置いているのは間違いありません。

安室と梓の距離感を考察する上で非常に分かりやすい資料が4巻の「Ready Go!!」。

彼はトレーニングをしたいが為に行列のできるレストランの順番待ちを梓にさせています。

つまりこの時安室は自分の目的の為に梓の時間の自由を奪っており、梓もこの事を当たり前のように受け入れています。

梓は安室が自由な行動を取る様子を何度も見てきているからです。そして安室も梓なら許してくれることを分かっている。

安室と梓の距離が近いことが分かるエピソードです。

●「Ready Go!!」➡安室は自分の目的の為だけに梓の自由を奪っているが梓は受け入れている

●「思い出の料理」➡安室は鶴山さんの為に梓に協力を仰いだが梓から不思議がられている

この2点の差からも「思い出の料理」は2人の距離がまだ遠い頃と言えます。

そして「思い出の料理」で安室が梓に赤いケーキの再現の協力を要請した際梓は無言で無表情。

これは安室が梓に力になってほしいと頼んだ最初の日だから。梓は安室が自分に頼みごとをするような人物だとは思っていなかったのでしょう。

 

そして2人の距離感をよく表しているもう1つのエピソードが同じく4巻収録の「構わんよ」。

梓は安室にウンチクを披露。安室はその内容に感心し、梓は「安室さんでも知らないことあるんですね!」と返している。ここから梓は安室がウンチクを披露するのが好きな人物だと認識しているのが分かります。

事実安室は非常におしゃべりで知識を語るのが好きなキャラクターです。

ですが『ゼロの日常』の初期で彼は潜入捜査官として目立つことを避けていた為本来のおしゃべりな性格を隠していました。

それが一転「構わんよ」ではその本質にとても正直になっている様子が伝わります。

またこの回では安室は梓の前を歩いています。初期は梓の後ろが彼のポジションでした。

話すことが大好きで人をリードする立場でいたい。「構わんよ」は安室の素がかなり表れている話と言えます。

その点「思い出の料理」では梓の影に隠れるかのような働きぶりですし得意の知識の披露も半分は梓に任せている。

これは本来の彼の姿ではありません。

「思い出の料理」は「Ready Go!!」や「構わんよ」よりそれなりに前の話と推測できます。

安室と梓があまり打ち解けていない頃でしょう。


◆鶴山さんの中で存在の薄い安室◆

梓の項目で記載した通り鶴山さんは思い出のケーキの話題を梓にしか振っていません。

安室と鶴山さんの距離感を語る上で外せないのが3巻収録の「ニッカポッカ」です。

鶴山さんの自宅を訪れた安室が鶴山さんをはじめ彼女の複数の友人に振り込め詐欺の対処法を伝授し、密かに雨漏りしていた屋根の応急処置も施した話です。

この回で特に注目すべきは振り込め詐欺の対処法について語る安室、それを聞く鶴山さん、そして安室と初対面となる彼女の友人達のそれぞれの表情です。

この時安室は犯罪の被害者を出したくないという警察官としての本音から肩書は喫茶店員にも関わらず一方的に詐欺の対策を語ります。しかもペラペラという擬音付き。

その様子は安室と初めて会う鶴山さんの友人達には不思議な人にしか映らずその為彼女たちはポカンとした表情になっています。

対照的に鶴山さんは笑顔で彼の話に耳を傾けている。

これは彼女が「彼はウンチクを語るのが大好きなおしゃべりな人物」という安室透(降谷零)の本質を理解しているからこそ。

鶴山さんの安室の人格に対する理解と同時に彼への信頼がしっかりと伝わってきます。

1話で椅子の不具合を改善したのは梓に違いないと思っていた頃の彼女の姿は「ニッカポッカ」にはありません。

ですがこの「思い出の料理」では彼女の中の安室は存在が大きいとは言えないのです。

だから思い出のケーキについて安室を交えて語らなかった。さらに彼女は2度ケーキを口にしますがケーキを口にした後のそれぞれの第一声が以下の通り。

1度目「素晴らしいわ梓ちゃん、すごくおいしい!」

2度目「梓ちゃん……このケーキ…」

梓に向けての言葉だけです。彼女は安室もケーキ作りに参加していたのを見ていたのに。

またこの回で彼女は梓の方ばかり見ています。

鶴山さんから見て安室は長い付き合いのある梓にできた後輩程度の認識なのではないでしょうか。これらは「ニッカポッカ」では決して見られなかったものです。よって「思い出の料理」は安室が鶴山さんの信頼を勝ち得る前、つまり「ニッカポッカ」よりも前の話ということになります。


◆安室が陰から一歩踏み出したエピソード◆

潜入捜査官としての安室透はいつだって影の存在でした。

手柄が全て梓のものになろうが鶴山さんの中で存在が薄かろうがそれで構わなかった。

なぜなら彼は公安警察であり暗躍を余儀なくされている立場。

ニックネームと同じくゼロであることを選んできた人物です。

ですがその安室に赤いケーキ作りを通して変化が起きます。

彼が陰から日の当たる世界に一歩足を踏み出したのです。

安室は頼まれたわけでもないのに鶴山さんに喜んでほしいという純粋な思いやりから自発的にケーキ作りに再チャレンジします。そしてその目的の為に閉店後の梓に協力してほしいと頼んでいる。

彼は今まで問題を1人で解決してきました。その彼が目的達成の為にいわば他人を巻き込む道を選んだわけです。

さらに終盤ではケーキが赤くなる仕組みを安室が梓と一緒に語っているのが確認できます。

途中、梓が安室の名前を呼び鶴山さんへの説明を彼にさせる流れを作っている。

梓は安室がウンチクを語ることが好きだという事に気が付いている様子です。

もしかすると赤いケーキの再現を試みる過程で安室はおしゃべりで豊富な知識について語るのが好きという素の一面を梓に見せたのかもしれません。


◆安室は警察学校組を偲ぶ事が出来ている◆

最後のページで安室は梓から思い出の料理はあるのかと訊かれこう答えます。

「えぇ、たくさんありますよ…」「それこそこのビターなチョコレートケーキのように…」「ちょっと、ホロ苦いですが…」

そう語る彼が回想するのは亡き警察学校時代の友人達との思い出です。

この時安室は亡き友人達を懐古しています。表情には曇りが見られません。

思い出されるのは1巻「眠れないんですか?」。

亡き友人達が夢に出てきて眠りの浅さに悩まされていた頃(78巻)と違い彼らの死を受け止めることが出来ている印象を受けました。

彼の思い出について語る安室を見る梓のやや驚いたような表情も注目すべき点です。

安室は自分の過去について当たり障りのない話しかしてこなかったはず。その安室が自分の事を僅かであっても自ら本音で語ったことに梓は驚いたのです。

知識を語ることが好きというのを隠さないことや自身の過去について語るといった事はこれまでの安室には見られなかった事。

この「思い出の料理」は安室透が素を見せ始めるようになった最初のエピソードである可能性があるのです。


◆赤いケーキを通して赤井との共闘を示唆?◆

「思い出の料理」は安室透が降谷零としての素顔を覗かせた最初の話。

この考察が正しければ彼は赤いケーキを通して自分と周囲の距離を縮めたことになります。

やや深読みになるかもしれませんが安室が赤いケーキを通して周囲と交流を深めるようになったのであれば赤繋がりで因縁の相手である赤井秀一ともいずれ距離を詰める、つまり対組織戦で共闘するという意味合いも含まれているではないかと思います。

2人の関係は工藤邸でのお茶会で既にある程度のレベルまで関係が改善しているとは思いますがスピンオフでも安室と赤井の距離が縮まる未来を見据えて描かれた可能性はありそうです。


◆まとめ◆

  • 41話「思い出の料理」は安室透が素顔を見せた最初の話かもしれない
  • 「思い出の料理」は「眠れないんですか?」よりも後、「ニッカポッカ」、「Ready Go!!」、「構わんよ」よりも前の話
  • 警察学校時代の友人達の死を受け止め懐古することが出来ている
  • 赤いケーキで周囲との距離を縮めたことから赤井秀一とも共闘することを示唆している可能性がある


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伏線は13年前!務武とベルモットの関係とは?

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最新の「姉妹バースデー事件」でメアリーの少女化は赤井務武に変装したベルモットの罠だったことが明らかとなりました。

実は今から遡ること13年前にベルモットは務武のことを知っているという伏線が確認できます。

今回は13年前の伏線を紐解きながら務武とベルモットの関係を考察します。


ベルモットは務武を知っている◆

ベルモットは務武に変装する上で記憶喪失という設定を用いたり娘である真純の存在を知らなかったりと彼女が演じた務武は本来の彼女が持つ変装スキルを考えれば完ぺきとは程遠いものです。

メアリーが銃を携帯していたのはこれから会いに行く務武が偽物の可能性が極めて高いと考えていたから。

とは言えベルモットの真なる目的は務武に扮しMI6に潜入するというもの。

その為にはある程度赤井務武という人物を把握していなければならない。

かつて写真で務武を見たことがあるから知っていたというレベルではないと言えます。

やはり務武とベルモットは対面したことがあると考えた方が自然です。

ここで重要となるのが13年前に描かれた伏線です。


◆58巻に描かれたベルモットの視線の意味◆

ベルモットが務武の存在を把握している伏線が描かれているのが58巻です。

58巻発売は13年も前です。

務武の外見が明らかになったのが92巻(掲載時2016年)と比較的最近ですからこの伏線は見逃した方が多いかもしれません。

注目すべきはFILE.8「意外な容疑者」。

キールがコナンと秀一の思惑通り組織に戻るエピソードが収録されています。

ジン、ウォッカキールの乗った車にベルモットがバイクで並走していますがこの時なぜかベルモットキールを凝視しています。

たった3コマの描写ですがベルモットキールに関心を持つ「何か」が確実にあるはずです。ではその「何か」とは何を指しているのか。それはベルモットキールにある男性の存在を重ねているのだと思います。

この時キールは入院先の病院から脱出するためにノーメークにジャージ、加えて長い髪を帽子の中に完全にしまい込んでいます。ぱっと見た限りでは男性と勘違いできる要素がある。

さらに3コマ目でキールの腕組み、コマ割り、窓脇を描くという3つの手段によって彼女の胸の膨らみが隠されています。

つまり作者はキールによく似た外見の男性が存在することをあからさまな伏線として描いているわけです。

そしてベルモットキールによく似た男性に心当たりがあり、キールを通してその男性の存在を重ねて見ていたということ。

この場にいた他の組織の人間がこの時のキールに反応していないことからベルモット以外は反応できない男性と言えます。


ベルモットキールを通して見ているのは務武◆

ベルモットキールを通して特定の男性を重ねている。

ではこの人物とは一体誰なのか。

この人物は以下の4つの条件を全て満たした人物と言えます。

・男性

キールによく似た容姿

ベルモットにとって性別を超えて姿を重ねるほど思い入れが強い存在

ベルモット以外は反応できない人物

この4つを全てクリアしている人物は既出のキャラクターでは務武のみです。

一応キールに似通った容姿の男性キャラクターを1人ずつ検証していきましょう。

1・本堂瑛祐

まずやはり外せないのがキールの実の弟である本堂瑛祐。

ベルモットキールに瑛祐を重ねていたのでしょうか。結論から言えばこの可能性は低い。

瑛祐はコナンの正体にたどり着いたり父も姉もNOCだったりと実は設定が盛りだくさんのキャラクターなのは間違いありません。ですが彼自身は現段階でベルモットや組織にとってこれといって脅威でもなければもちろん仲間でもない。

「思い入れが強い存在」には該当しません。

2・赤井秀一

キールはジグザグの前髪とピンとはねた睫毛が特徴的なキャラクターです。

秀一が常にニット帽をかぶっているので見落としがちですがこの前髪の特徴は秀一も持っています。

では秀一なのかというとこれは有り得ないと言えます。

ジン「俺の頬骨を鉛の弾で抉ったあのFBIなら…この件に乗じて処理する算段だ…」

キール赤井秀一…組織が最も恐れているFBIの捜査官…」 58

赤井は組織にとって何よりも大きなターゲット。コードネームを与えられていない楠田陸道でさえ追手が赤井と分かっただけでこの58巻で自決しています。

もしベルモットキールと秀一を重ねたのなら組織のメンバーはそれこそ全員反応しなければならないはず。ベルモット以外は反応できない人物」に該当しません。

このことからこの男性は秀一ではないということになります。

3・羽田秀𠮷

本堂姉弟は共通してピンと跳ねた睫毛が特徴です。

この目元は赤井家の次男、秀𠮷のチャームポイント。また秀𠮷は普段丸眼鏡をかけていますがキールの弟の瑛祐も彼と同じく跳ね上がった睫毛と丸眼鏡のキャラクター。

秀𠮷の初登場が80巻なので見比べる読者は少ないかもしれませんが本堂姉弟と秀𠮷の容姿には共通点を見出すことが出来ます。

ですが秀𠮷の可能性も低いでしょう。

秀𠮷とベルモット接触している描写は確認できませんし何よりも秀𠮷は国民的なスターです。ベルモット以外でも多くの人物が反応できる存在と言えます。ベルモット以外は反応できない人物」という条件を満たしていません。

4・諸伏兄弟

キールと似通った目元の持ち主として諸伏兄弟が挙げられます。

本堂姉弟の容姿は赤井家のそれとよく似ている上に長野県警は赤にまつわる事件が多いため赤井家と諸伏家の血縁関係を考察している読者もいます。

ベルモットキールに重ねた男性とは諸伏家の人間なのか。実はこれも可能性は極めて低いです。

キール奪還計画に成功した直後の車内でジンがキールを疑っているのが確認できます。つまりジンは彼女をNOCではないかと考えている。これまでに組織がNOCと認識している人物はたった3人。この時ジンの脳裏に過去のNOCであるスコッチの存在がよぎっていたはず。ですがジンはキールとスコッチを重ねてはいないのは明確ですしスコッチは赤井と同じく組織の敵。他のメンバーも反応しなければなりませんがそれがない。

またベルモットキールに重ねた男性がスコッチではないことは85巻からも分かります。

ベルモット「ホラ、公安から潜り込んでて名前を聞く前に殺された…コードネームが確か…」

バーボン「スコッチ…でしたよね?」 85巻

この時ベルモットはスコッチに関しバーボンに探りを入れてる様子は全くありません。またスコッチの名前が出てこなかったことからも彼への関心の薄さが垣間見えます。よって「思い入れが強い存在」とは程遠いと言えるでしょう。

彼女がキールとスコッチを重ねていない時点で彼と似た外見の兄、高明の可能性も消えることになります。

5・赤井務武

男性であり、キールと似通った外見の持ち主。そしてこの2つの条件を満たす瑛祐、秀一、秀𠮷、諸伏兄弟の可能性が消えた時点でベルモットキールに重ねた男性は務武のみとなります。

この58巻の描写はベルモットは務武を知っている伏線と考えていましたがそんな中最新の事件で実に3年もの長きに渡りベルモットが務武に変装していたことが明かされました。

キール奪還の時点で彼女は既に赤井務武として行動していたことが明言された今、やはりベルモットキールに重ねた男性は務武の可能性が極めて高いと言えます。

青山先生は49巻の時点で秀𠮷の登場を決めていたと発言していますし、その49巻で由美の口から秀𠮷の容姿に関する話が出ていることからこの時には彼の容姿は出来上がっていたと考えられます。そして彼は赤井家の子供達の中で唯一の父親似。

つまり必然的に務武の容姿は49巻の時点で既に完成していた可能性が高い。58巻でベルモットキールと務武を重ねてもなんら不思議はありません。

作中では秀一とジャージ姿のキール接触している様子は確認できません。この時FBIは組織との推理戦の真っ最中なので例え秀一が男装姿のようになったキールと会っていてもしっかりと向かい合う余裕はなかったと考えられます。

仮にじっくりキールを眺める時間があったのなら秀一もベルモットと同様にキールに父の姿を重ねたかもしれませんね。

また務武は普段から帽子を被っていた人物であることも作者の口から明らかにされています。

これもベルモットが帽子を被ったキールに務武の存在を重ねた要因の1つと言えそうです。

務武とベルモットがどの程度の仲なのかは断言できませんが務武は確実に長身のはず。その務武とちょっとした顔見知り程度ならベルモットは務武を見上げる角度しか知らないはず。俯瞰でキールと務武を重ねるのは難しい気がします。

深読みになるかもしれませんがこの角度は2人がある程度距離を詰めた間柄だったことを示す構図なのかもしれません。

そしてキールに務武を重ねたというこの考察が正しい場合赤井家と本堂家は血縁関係の可能性が高い。

58巻に数コマ登場した本堂姉弟の母親が務武の姉か妹かもしれませんね。目元が務武の息子の秀𠮷と似通っていますし。

ベルモットは真純のことを把握していないので当然赤井家の親戚についても調べていないでしょう。すっぴんにジャージのキールを見て初めて務武との血縁関係を疑ったのだと思います。

諸伏兄弟の項目で少し触れましたが組織がNOCと認識しているのはイーサン・本堂、赤井秀一、スコッチの3人。

赤井家と本堂家が親戚関係なら諸伏家もこの一族という可能性はあるかも。

赤井家と本堂家の血縁関係に関する考察記事はまた別にまとめます。


◆組織は現在務武を敵視していない◆

ベルモットキールと赤井務武の存在を重ねているという考察が当たっているという前提で話を進めます。

ベルモット以外がキールに反応できなかった様子からジンをはじめ組織の他のメンバーは務武の容姿を知らないということになります。

組織が赤井務武の存在を今現在危険視しているのであれば彼の情報は組織内で共有されているはずです。

仮に務武が今顔を変えて別人に成りすましていても組織の敵であるなら務武の過去の外見の情報もジン達に渡っていないとおかしい。

それがないことから組織は今、赤井務武を危険な人物として認識していないことは間違いありません


◆務武に成りすますのはベルモット個人の計画か◆

務武に扮しMI6へ潜入するというのは彼女の個人プレーなのか、それとも彼女よりも立場の上のあの方やRUMの命令なのか。この辺りも今後の考察における重要なテーマです。

キール奪還の描写はベルモットだけが務武を知っている描写とは言い切れません。

ジンをはじめとした組織の一員は務武の容姿を知らないものの、あの方やRUMは務武を知っており、敵視していながら存命の務武の情報を組織に伏せている線もあり得ます。

例えば務武とAPTX4869には何らかの大きな繋がりがあり、ジン達が務武にたどり着く=薬の秘密が明らかになることを恐れているケース。

ベルモットの不老の事実はあの方はもちろん、17年の付き合いのRUMも知っている可能性が高く、このメンバーは薬に関する情報をジン達にシャットダウンしていると考えられます。務武の存在が薬の秘密と結びついているのならならあの方やRUMが現在務武を敵視していてもジン達には情報を封鎖せざるを得ないのかもしれません。

この場合キールに務武の存在を重ねたベルモットは「キールは我々の敵である赤井務武の身内でNOCの疑いあり」とあの方に報告するのが筋です。

ですが同じく58巻でジンがこんなことを言っています。

「俺もそうだがあの方も不審に思っておられるんだよ…いとも簡単にお前をFBIから奪還できたことを…」

あの方が府に堕ちないと感じているのは奪還計画がスムーズに行き過ぎているという点。務武があの方やRUMにとって敵でベルモットからキールと務武には血縁関係があるかもしれないという情報を入手していた場合その点をキールに尋問するのが得策かと。お前は疑わしい存在だから赤井秀一を葬ることで信頼を勝ち得ろというのはまどろっこしいような気がします。

よってベルモットキールと務武の血縁関係を疑いながらもあの方やRUMにもこの事実を伏せたと考えた方が自然です。

MI6入りがあの方やRUMを交えた計画なら務武に関するあらゆる情報はキール奪還の時点で共有されるべきです。

それがなかった可能性が高いことを踏まえるとベルモットが務武に扮しMI6に潜入するという野望は彼女の個人的な計画という見方ができるかなと。


◆務武はかつてNOCだった?◆

ベルモット「ねぇキール…貴方まさか…コレ(バイクの車体をコンコンとノック)じゃないでしょうね?」 49巻

ジョディ「Non Official Covert…通称NOC!!」「民間人を装って他国へ潜入し活動している、CIAなどの秘密諜報員の事よ!」 57巻

コナン「まあ、ベルモットは薄々勘づいていたみたいだけど…あれってNOCのノックを、ベルモットが洒落て表したノックだよね?秘密諜報員(スパイ)じゃないかって!」 58巻

キールはCIAから組織に潜入しているNOCですがベルモットキールNOCだと勘づく事ができた理由は明らかにされていません。

ベルモットキールに「ノックではないか」と問いかける少し前にコナンとFBIが自分たちを追っていることに気付いていました。

ですがコナン達が追っているから自分の周辺にNOCがいるかもしれないという考えに結び付くとは考え難いですしそもそもこの時点でコナンはキールに違和感を覚えてはいましたがNOCだとは気付いていない状態。

そんな中で彼女がキールNOCと勘づく事ができたのはキールとよく似た容姿である務武がかつてNOCだったからかもしれません。

務武がNOCなら組織に関する情報はMI6に届くはずでその情報はメアリーとも共有できるのでは?と思われるかもしれませんがここで務武の息子である秀一のケースを振り返りましょう。

秀一は死亡を偽装し沖矢昴という別人として生活を送っていたことを同じFBI(元恋人を含む)に完全に伏せていました。

組織と対決するのであれば妻の目さえ欺く必要があると考えていても不思議ではありません。

夫婦だからと言って情報共有は完全とはいかないケースは十分想定できます。

ベルモットが務武に扮しMI6潜入を目論んでいるのはNOCだった務武にまずい情報を握られ、その情報がMI6サイドに保管されているからかもしれません。そしてその情報を消去するには顔認証などが必要だとか。

まあこの項目は全体的に全て想像の域を出ないものばかりですので「その可能性もあるかも」程度で受け止めていただけたらと思います。NOCの件は単にベルモットの勘が働いただけという可能性もありますし。


◆務武は生存している?彼は正義か組織か…◆

生死不明の務武ですが実際は生存していると考えている読者の方は多いのではないでしょうか。

この項目では務武の生死、そして生きているのなら彼は正義なのか組織側なのかを検証します。

 

ベルモットは務武に扮しMI6潜入を目論んでいますがこれは務武がMI6に復帰することがないという確証があるからです。

ストレートに受け止めればベルモットは務武の死を確信していることになる。

ですがこれがそのまま務武の死に直結するとは断言できません。

ここからは務武が正義の立場で今もなお生き延びている可能性を探ることにします。

務武が正義の立場で生存しているパターン

【1】死亡を偽装して生き延びている

【2】薬の影響で幼児化してしまった

【3】組織に監禁されている(されていた)

【4】長年に渡り記憶喪失だった

【5】薬の影響で赤ん坊になっていた

【1】死亡を偽装して生き延びている

秀一は死亡を偽装し生き延びています。

父である務武も偽装死で生き延びた可能性は十分考えられます。ベルモットはかつて自分と敵対した務武の偽装した死体を目撃したことで彼は死んだと結論付けているだけかもしれません。

仮に務武が何らかの形で正義の立場から死亡を偽装したのならその偽装を利用し夫として父として家族を守るのが当然です。

ですが妻のメアリーは少女化、息子は表向き死亡しているなど家族を守るとは程遠い状態と言えるでしょう。

よって正義の立場で偽装死を選択し生き延びている可能性は低いはずです。

 

【2】薬の影響で幼児化してしまった

では務武がAPTX4869を飲まされて幼児化してしまった可能性はないでしょうか。

大切な家族を守りたくても幼児化故にそれができない状況下にあるというパターンですね。

これもないと考えた方がいいでしょう。コナンは幼児化しても自分の役割をしっかりとこなしています。務武が幼児化したから何もできなかったというのは作品上不適切です。読者も納得いかないでしょう。

 

【3】組織に監禁されている(されていた)

務武が組織に長期間に渡り監禁されている(されていた)という可能性はどうでしょうか。

これも考え難いですね。監禁されるということは組織から見て務武は随分まずい存在に違いない。その彼をなぜ始末しないのかが謎です。加えて武術に長けており恐らく体格もいいであろう務武が長年に渡り監禁生活から抜け出せなかったということがあり得るのか疑問です。

 

【4】長年に渡り記憶喪失だった

記憶喪失だった、長年意識不明だったなどの理由から家族を助けることができなかったという可能性は考えてもいいかもしれません。ですがこの場合ベルモットが適当に語った務武失踪のシナリオと一致してしまう。現在の務武はベルモットが適当に作った脚本と全く同一の状況下でしたというのは漫画上ないと考えた方が自然だと思います。

 

【5】薬の影響で赤ん坊になっていた

務武は薬の作用で赤ん坊の姿にまで戻っていたとしたらどうでしょうか。

これは有り得ないとは言い切れません。赤ん坊なら家族を救えなかったことも説明ができます。

ですが読者は92巻で明らかとなった務武の外見と妻のメアリーの口調の両方から赤井務武の人物像を考察してきました。彼は非常に勇ましい男性のはずです。その務武が赤ん坊になっていたという筋書きに読者が納得できるか微妙とは感じます。

でもこの設定が本当の場合すごく興味深いものになりますよね。

17年前に務武は罠に嵌められ赤ん坊となった。彼はベルモットと異なりそこから年を重ね現在17歳となっているとか。これなら新一と同い年です。味方なら新一と務武は共闘、敵なら新一VS務武という構図。漫画の設定としては面白い。

ただしこのケースなら赤ん坊になったことでかつての家族の記憶が消え失せていると考えた方が自然でしょうね。家族を守れなかったことの説明ができる形にはなりますが赤井家に焦点を当てた「緋色の弾丸」の公開が控えている中で務武だけ家族の記憶がない、いわば外野となる設定はいかがなものかとは思います。

 

そもそも偽装死、幼児化などで生き延びているにしても3年もの間ベルモットに自分の姿で街を歩かせている時点で務武は正義としては敗北と考えるべきです。

コナンの作中では親は子供より優れている存在として描かれるのが基本です。つまり務武は秀一や秀𠮷を上回る頭脳の持ち主。

そんな人物が敵が自分に変装することを3年間許しているとは考えられません。

これらを踏まえると務武が正義の立場で生存している可能性は極めて低いと見るべきではないでしょうか。

また同時に務武は既にこの世にいない可能性も高まったと言えます。

 

もし務武が存命ならばRUMと考えた方が現時点では妥当です。現在はRUM編なので。

「姉妹バースデー事件」が掲載される前はベルモットが務武の存在を知っていながらジン達に伏せているのは務武が彼女の秘密を握っているということも考えていました。バーボンがそうであるように。

ですが3年も変装されていることから務武が正義の立場としてベルモットの弱みを握っている可能性はなくなったと言っていい。弱みを握っているのならバーボンのようにうまく駆け引きしていなければおかしいですからね。

務武=RUMならRUMをよく知るジン達もベルモット同様キールに反応するのでは?という見解もあるでしょうが現在のRUMの容姿は17年前とはかけ離れたものになっている可能性は十分にあり得ます。そのヒントになるかもしれないのが93巻「燃えるテントの怪」。

若狭≠RUMで綴ると彼女は黒田と対面した際彼に何らかの疑いの目を向けています。これは彼女が目の前の黒田がRUMかどうかを探っている描写です。つまり17年前事件現場にいたことが判明している若狭でさえRUMを見抜くことが出来ない。

これはRUMが17年前と容姿が全く異なっていることを表していると捉えることができます。

そしてRUMは絶対的な権力者。自分に関する情報を組織内で封鎖している可能性は十分考えられます。

ですが少なくとも20年前からベルモットは組織の一員。その彼女だけは務武=RUMの容姿を知っておりキールに務武の存在を重ねることができたのかもしれません。

 

務武が存命の場合RUMである可能性が高まったとはいえ彼をRUMとすると引っかかる点があるのも事実。

だからと言ってベルモットがこれだけ自由に動いているのだから彼はこの世にいないとなるとそれも納得いかないんですよね。これだけ引っ張って実は既に故人というのは漫画的にちょっと…(笑)。

RUM=務武の考察記事も使いうちにまとめます。

務武はやはり謎の多い人物ですね。今後も彼にまつわる新情報に期待です。


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務武はMI6!メアリーが少女化した経緯が明らかに!

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劇場版最新作「緋色の弾丸」の公開を控え物語は読者を最高潮にドキドキさせる展開でしたね。

最新エピソード「姉妹バースデー事件」は新情報がてんこ盛りでした。


務の職業はMI6◆

メアリーがMI6と確定したのはつい最近ですが務武の職業もMI6ということがあっさり確定。

このシリーズの掲載前に既に青山先生は務武とメアリーは職場での出会いがきっかけで結婚に至ったとファンに語っていたそうです。

務武の職業が明かされるのはもう少し先だと思っていましたが劇場版を意識して物語が急ピッチで進んでいるのを感じました。


◆メアリーに毒を飲ませたのはベルモット

メアリーが毒を飲まされたのは「ホームズの黙示録 71巻~72巻」の頃。

ロンドンのヴォクスホールブリッジでメアリーの前に現れたのは長年行方の分からなかった夫、務武。

ですがこれはベルモットの変装でした。変装術に長けた彼女がメアリーを騙したというのは読者は推理できる範囲だったとはいえベルモットが口移しで毒を飲ませるなど内容はかなり衝撃的でしたね。


◆メアリーと真純のロンドン行きは務武の目撃情報を得たから◆

メアリー「なるほど…その姿を我々の同僚に目撃させ…本人かどうか確認させる為に私をこの国に誘き出したのか…罠だと気取られぬよう偶然を装って再開するまで3年もかけて…」

読者にとって一番の衝撃と言えばベルモットが3年も前から務武に扮しロンドンの街を歩いていたということではないでしょうか。3年前と言えば秀一が組織に潜入していた頃です。

数か月前(メアリーに毒を飲ませた)の時点でベルモットは務武とメアリーの間に「息子たち」がいることを知っています。またベルモットはメアリーとエレーナが姉妹であることも把握済み。そして秀一は母親似です。

やはり3年前にライ=メアリーの息子=赤井秀一という事実にたどり着いていた可能性は高そう。ベルモットが秀一がNOCであることに気付きながら放置したのならその理由はメアリーに通じる糸を切らないためでしょうか。

秀一のNOCバレによる組織離脱は2年前。この時点でベルモットは務武に変装する生活を1年送っています。

その間にベルモットの中でメアリーは簡単に姿を現さない用心深い人物だという認識があったはず。

ここでライがNOCとリークすれば秀一は雲隠れし、母であるメアリーは余計に慎重にならざるを得ない。

なんとしてもメアリーと接触したいベルモットにとって秀一がNOCだという情報を組織に渡すことは自分の目的を妨げる行為に値する。
つまりベルモットNOCを野放しにしてもよいと考えるほど務武に成りすます必要があるということ。

あくまで秀一がNOCと知りつつ素知らぬ顔をしたという前提の考察ですが。

そもそも基本に立ち返れば彼女は組織の壊滅を願っている一面も持ち合わせていますから自分の邪魔さえしなければNOCは放っておいても構わない性格という考え方もできます。


ベルモットの目的は務武に扮しMI6に潜入すること◆

ベルモット「死んだはずの赤井務武がMI6に復帰するには…突然姿を消した彼の妻である貴方の存在がネックだったからね…」

ベルモットの目的は「赤井務武」としてMI6に潜入するというもの。

単にMI6に自分や組織にとって不都合な情報が渡ってしまったのなら彼女の変装術でMI6の誰かになりすまし解決できる問題のはず。ですが彼女はあくまで務武にならなければならない何らかの理由があったということになります。

そしてその為に3年もの歳月を費やしている。なぜここまでして彼女は務武になりすます必要があるのか非常に大きな謎が生まれました。そしてその目的のためにメアリーは邪魔な存在であるということ。

真純の存在を知らないベルモットは詰めが甘いかのような印象を与えているかもしれませんが彼女の目的はメアリーを誘き出すこと。それに成功すれば務武が記憶喪失だったというありきたりな設定も含め全て問題ないわけです。

「姉妹バースデー事件」以前からTwitterの方に記載してますが務武とベルモットが顔見知りという伏線はずっと前に描かれています。

長い時を経てついに伏線の回収が始まったという感じです。


◆メアリーはベルモットを疑っていた◆

メアリー「確かに私なら今回のように主人かどうか見分けることができる…千の顔を持つ魔女の変装かどうかを…」

この言葉からメアリーは目撃された務武がベルモットによるものではないかと予測していたということが分かります。

メアリーは務武の生存情報を手に入れてもすぐに動かなかったのも疑いの念が強かったからでしょう。

メアリー「体を元に戻したら逃げ回るのはもう止めだ…反撃に転じる…」 95巻

この台詞も毒を飲まされるより前から彼女なりに対組織、対ベルモットに備えて動いていたという伏線かもしれません。


◆APTX4869は2種類存在する?◆

作中に「APTX4869」の表記は見られませんがあらすじ、登場人物の欄にメアリーが飲まされたのはAPTX4869という説明が確認できるので彼女が飲まされたのはAPTX4869で合っていると思います。

そしてコナンと灰原を幼児化させたのもAPTX4869です。ですがメアリーは2人と違い幼児化でなく少女化。また咳の症状が現れています。

真純「どうしたの?そのセキ…」

メアリー「いや、その妙な薬を飲まされたせいだ…薬の副作用かもしれんな…」

咳がAPTX4869によるものと断言されました。そうなるとコナンと灰原にこの副作用が起きていないのは何故なのか。そして幼児化と少女化という差は何を表しているのか。

ここで浮上するのがこの3人が飲まされたのは同じAPTX4869という名称を持っているものの作用が異なる可能性です。

灰原はAPTX4869についてこんなことを語っています。

「試作段階のあの薬を勝手に人間に投与した事も、組織に嫌気がさした理由の一つだけど…」 18巻 

「私は焼け残った資料を搔き集めてその薬を復活させただけだから…」 89巻

APTX4869は宮野夫妻が開発し、それを娘である灰原が時を経て復活させています。

その復元の元となったデータが焼け残った資料である場合100%完全な復元とはいかなかった可能性もあり得ます。

また灰原の復元したAPTX4869は未完成の状態。宮野夫妻が生み出したものと差があってもおかしくはありません。

ベルモット「どうかしら?自分の妹が作った毒薬でこの世を去る気分は…」

これはメアリーを少女化させたのは妹のエレーナが作ったAPTX4869でコナンと灰原を幼児化させたのは灰原が復元したAPTX4869という差を表しているのかもしれません。

灰原が復元したAPTX4869が完全犯罪に向かないことはコナンと灰原のケースからベルモットは誰よりもよく知っているはず。

ベルモットの中には灰原が復元したAPTX4869は若返りの恐れがあるものの宮野夫妻の作ったAPTX4869なら完全犯罪が実現できると考えていたのかもしれません。

エピソードの初めの頃はベルモットがメアリーの少女化を想定して薬を飲ませたとも考えましたが今となってはその考えは基本的に難しそうですね。

ベルモットにとって幼児化や若返りは絶対に伏せなければならないもの。メアリーの若返りを狙ったのなら組織の他の人間を連れてくるのは不自然。また最初から若返りを狙っていたのなら橋から落下させ逃がしてしまうというのはあまりに迂闊です。

本当にAPTX4869が2種類存在し、ベルモットは宮野夫妻が作成したAPTX4869を用いてメアリーを毒殺しようとした場合なぜベルモットはずっと昔に作られた宮野夫妻作のAPTX4869を持っているのかという新たな疑問が生じます。

実は全く同じ薬という可能性も依然高いのでこの点はまだ考察材料が足りない感じですね。


◆メアリーはボスの正体にたどり着いている?MI6も参戦か◆

メアリーはベルモットの言葉でエレーナが毒を作っていたことを知ることになります。

これは彼女にとって全くの予想外とまではいかないはず。95巻の宮野夫妻の会話でそのことが分かります。

宮野厚司「君のお姉さんも少し胡散臭いって言ってたしね…」

メアリーはかねてより烏丸グループに対し不信感を抱いていました。

彼女はベルモットの言葉によりエレーナに毒薬を作らせたのはその烏丸グループだという事にたどり着けるわけです。また烏丸グループが非常に巨大な組織であることを知っていたと考えられます。

メアリー「『いいか、この先、私はいないものと思え…どうやら私はとんでもない奴らを敵に回してしまったようだ…』―っていうあのメールをね…」 92巻

そして彼女は「奴ら」が有能な務武が別離のメールを送らなければならない程恐ろしい存在だとも知っている。

これらの情報を総括し、メアリーは既にボスの正体が烏丸だという事実に到達しているかもしれません。


◆メアリーはベルモットの不老にたどり着いている?◆

ロンドンの街を歩く務武がベルモットの変装によるものであるとメアリーは考えていました。

その予想は的中し、彼女はベルモットにAPTX4869を飲まされ少女化します。

その直後には10年前と姿の変わらないコナン(工藤新一)がテレビに映るわけです。

自分が若返り、そしてテレビの中にも自分と同じ境遇の人物が映し出される。

そうなれば誰だって「まだ他にも若返っている人物がいるのではないか」と考え始めます。

そして自分に薬を飲ませたのは千の顔を持つ魔女。推理力の高いメアリーならベルモットも何か薬を飲んでいること、他人に成りすまし活動しているということ、つまりベルモット=クリス・ヴィンヤード=シャロン・ヴィンヤードの方程式に気付けている可能性は十分考えられます。

かつてメアリーはコナンのことを「信頼するには程遠い」と語っていました。

江戸川コナンに気を許すな…10年前に会ったあのボウヤとはまるで別人なのだから…」 90巻

メアリーは自分に罠を仕掛けたベルモットの不老にたどり着いた結果として幼児化したコナンにも疑念を払拭できなかったのかも。

彼女ならベルモットの素顔に十分たどり着ける状態にあると言えますね。


ベルモットVSメアリー率いるMI6◆

メアリーは少女化してしまったとはいえ現在でも肩書はMI6諜報員。

今回のエピソードで彼女は少女化した後もMI6の仲間と連絡を取り合っていることが明らかにされました。彼女なら烏丸の存在を仲間のMI6に伝える展開もあり得ます(既に伝えているかも)。

MI6サイドも務武に成りすました奇妙な人物がいることを把握しているわけですからこの筋書きは考えられますね。

またメアリーが幼児化でなく少女化という設定となった理由の1つにMI6と連携を取るためという線も考えていいかもしれません。

少女化であればAPTX4869を飲まされる前の声帯を保つことができるため、仲間と連絡を取り合うことが可能となります。

「反撃に転じる」という言葉も仲間のMI6と連携が取れているからこそ出てくる台詞と考えられますね。今後MI6も参戦する戦いになるのかもしれません。

気になるのがメアリーと真純にコナンの情報を伝えた「MI6の仲間」の存在。この人物は工藤新一=江戸川コナンにたどり着けるだけに色々と深読みしたくなるところ。対組織戦に備えて今後登場する人物なのか、それとも実は既に登場しているのか…。

一切物語の展開に絡んでこない可能性も十分あり得るんですが今回が濃厚なエピソードだっただけに引っかかる存在です(笑)

真純「でも何で?秀兄は死んだって…」

ベルモット「その答えが聞きたかった…」 78巻

今振り返るとこの台詞と笑みは秀一の生死の確認よりも真純がメアリーの娘だという確証を手に入れたといういう可能性も。

APTX4869の効果とメアリーの顔を知っている彼女なら少女化したメアリーにたどり着くのは造作もないでしょう。

現在ベルモットはメアリーの生存の気配を感じ取り水面下で動いていることも考えられます。

ベルモットVSメアリー率いるMI6が今後描かれる可能性もそれなりにありそう。

ところでこの2人が向かい合う扉絵ですがやはりよく似ています。薬による若返りの条件として血縁関係を考察している読者も多いですがこの事を意識しての扉絵なのかもしれません。


ベルモットはメアリーに「天罰」を下した?◆

今回の事件は犯人が被害者に弱みを握られてしまいそれをネタに金銭を含めあれこれ要求されたことが犯行の動機でした。とはいえ額に「天罰」の文字を書くほどの強い恨みだったという印象は見受けられなかったのが正直なところ。

これはベルモットがメアリーに対し毒を飲ませた行為がベルモットがメアリーへ「天罰」を下したことを示唆しているのかもしれません。

ベルモットが灰原を執拗に狙うのは宮野夫妻の実験を引き継いだから。エレーナの姉であるメアリーに対しても容赦ない感情を持っていたとも考えられます。ですが振り返るべきは彼女の灰原に対する強烈な恨み。

ベルモット(彼女だけはこの世にいてはならないのよ…) 78巻

この時ベルモットは既にメアリーの抹殺を目論み行動に移していました。つまりメアリーの抹殺は視野に入れながらそれでも基本的に絶対に消さなければならないのは灰原のみというのがベルモットの考えのようです。

ベルモット「貴方に生きていられたら色々困るのよ…」

またこの台詞の「色々困る」はどんな内容を指しているのかも気になります。
務武に扮しMI6に潜入すること以外にも彼女がメアリーを邪魔な存在と考えている理由は他にもありそう。

ベルモットがメアリーを抹殺したがる理由に考察の余地あり、という感じですね。


◆務武の生死は?◆

やはり読者最大の関心事は赤井務武の生死です。

ベルモットが務武に変装し3年も街を歩いていたのは務武としてMI6に潜入することが狙い。

彼女が務武の生死を把握していないのであればまず務武の生存について探るはずですがそんな様子が一切見られない。これは彼女の中で務武の生死の答えが出ているからでしょう。そして彼女は務武の姿でMI6に潜入しても問題がないと判断している。

ストレートに考えればベルモットは務武の死を確証している。

彼がMI6に復帰することがあり得ないと断定した上での行動と考えた方が自然です。

とは言え務武は生存しているものの何らかの事情で復帰が出来ない状態にあることを彼女が知り得た上で動いている可能性も一応は考えられます。


◆黒田兵衛を匂わせるエピソード◆

読者の間では黒田がRUMならNOCを放っておくはずがない、彼はラムではないという意見が非常に多く見られます。

ですが今回のエピソードで組織が何らかの理由で警察など自分たちを追う正義の立場となりスパイ活動を行う可能性が描かれたことになります。

また目的達成のためにベルモットNOCである秀一の存在を放置した可能性も示唆されました。

多くの読者の間で定説となっていた組織はNOCを野放しにしないという考察は絶対ではないことが提示されたと言えます。

長年記憶喪失だったという設定や毒を飲ませる際にベルモットが右目を閉じるなど黒田を意識させるものが見られました。加えて被害者の額に「天罰」の文字を書くあたりは黒田初登場回の被害者の額のバツマークを連想させます。

全体的に黒田を意識しているエピソードでしたね。これは黒田兵衛=赤井務武という読者の中で根強い考察を意識したものでしょう。

 

問題はこれが真実かミスリードか。劇場版公開まで1か月を切り、物語は大きく前進しましたね。劇場版で務武に関する驚くような情報が明かされるのかもしれません。

それにしても最近のコナンはやたらとアレルギーというワードが出てくるのですが伏線なんでしょうか。ダジャレとセットで作中に登場することが多いのも気になる点です。

 

私は以前から黒田がRUM(正確には2人いる黒田のうちの1人がRUM)という考察でブログを書いています。 

今回組織が警察に成りすますことや、必ずNOCに制裁を加えるわけではないという可能性が描かれたのはうれしい限りです。

次回は10年以上昔に描かれていた務武とベルモットが顔見知りという伏線について記事をUPします。


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黒田はなぜ瀕死の羽田を放置した?

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黒田兵衛は瀕死の羽田浩司を放置したのではないか。

最新刊である97巻のある1コマからこの可能性が浮上したと言えます。

たった1コマの描写から正義であるはずの黒田が事件当日、謎に満ちた行動を取っていたことが明らかになりました。

その1コマとは何か。そしてそこから考察できるものをまとめました。


◆黒田が現場に到着した時羽田は生存していた◆

93巻で黒田は傷だらけで横たわった羽田浩司を回想しています。

この描写から私は「黒田はかつて羽田の【遺体】を目撃した」とばかり思っていました。しかし97巻でこれが青山先生の読者へのミスリードだということが判明します。

この97巻では若狭が同じく横たわった羽田を回想しています。

この描写により黒田も若狭も事件当日現場に居合わせたことが明らかにされました。

しかしよく見ると黒田の目撃した羽田と若狭の目撃した羽田とでは様子が明らかに異なります。

黒田が目撃した羽田=口から血を流していない

若狭が目撃した羽田=口から血を流している

人間は一般的に死後に血を流すことはないと考えられています。

この描写から黒田はまだ息のあった羽田と遭遇しているということが判明したのです。

93巻で「黒田は羽田の遺体を回想している」と読者に信じ込ませることに青山先生は見事に成功したわけですね。

◆黒田と若狭の事件現場の到着の順番は?◆

羽田の口元の血の有無の描写をそのまま捉えると現場の到着の順番は黒田が先、若狭が後です。

ですがミスリードの可能性も完全には否定できません。

2人が共犯などであれば2人とも羽田が瀕死の状態も息絶えた後の様子も目撃していることも考えられます。

黒田が回想したものが口から血を流していない羽田で若狭が回想したものが口から血を流す羽田、同じものを目撃していてもたまたま脳裏によぎった映像が異なっただけという線もあり得なくはない。

 

ですが私はやはりこの描写はミスリードはなく現場の到着の順番はそのまま黒田が先と考えています。

ヒントになりそうなのは同じく97巻。

若狭が回想している羽田は口から血を流している上右手にダイイングメッセージを遺したハサミの跡が確認できるのでこの羽田は既に息絶えた状態と考えられます。

「山菜採り」で若狭は血の匂いから横たわった羽田をトラウマのように思い返しています。

彼女は攻撃性が極めて高い人物であり血生臭い現場には慣れているはず。

その彼女が血の匂いから羽田を連想したのは口から血を流す彼を目の当たりにした過去が彼女にとって衝撃的だったからだと推測できます。この衝撃はやはり若狭が現場に到着した時、既に羽田が息絶えていたことを物語っているのではないでしょうか。

また「山菜採り」では「風向きが変わった」というキャラクターの台詞とその直後に血の匂いから羽田を回想し、この事件の被害者の遺体を発見しています。

私はこの一連の流れは17年前の事件当日、若狭は風向きの変化=何かしらの異変を察知➡羽田の部屋を訪れた結果彼の遺体を発見したという伏線ではないかと考えています。

そしてこの作品は推理物。2人が回想した羽田の描写に差があるにも関わらず「どちらも息のある羽田だった」では推理物として不自然です。この描写の差から考えられるのは次の通り。

黒田が目撃した羽田=まだ息があった

若狭が目撃した羽田=既に息絶えていた

血の匂いから羽田を連想した生々しさからは若狭の現場到着が羽田の死亡直後と考えてよさそうです。

まだ息のある羽田を黒田が目撃、羽田が息絶えて間もなく部屋を訪れたのが若狭という流れだと思います。

ここで2人が鉢合わせたのかどうかは非常に重要なポイント。

少なくとも現時点で判明しているのは若狭は黒田と対面した際に黒田に疑いの目を向けているということ(93巻)。

黒田に全く心当たりがない場合探りを入れるような言動はしないはず。

若狭が黒田を「怪しい人物」として扱っていることは間違いありません。

 

93巻の時点では「黒田は羽田殺害事件の捜査に加わり彼の遺体を目撃した」という可能性があったわけですが97巻の若狭の回想シーンでその可能性はゼロとなりました。

黒田は事件が明るみになる前に事件現場を訪れ、瀕死の羽田を目撃しているのですから。

ですが羽田死亡後に捜査に加わった線はまだ残っているとは思います。

◆黒田は瀕死の羽田を放置した?◆

黒田の回想シーンの中の羽田はまだ息がありましたが確実に瀕死の状態と言えます。

なぜなら黒田の回想に登場する羽田(まだ息がある)と若狭の回想に登場する羽田(既に息絶えている)の体勢が全く同じだから。

手当をする、被害者に駆け寄り体を起こすなどしていれば必ず体勢に変化があります。しかしそれがなかった。

このことから何らかの理由で黒田は羽田を救わなかったことが分かります。

ここで生じるのが黒田はなぜ瀕死の羽田に応急処置を施さなかったかという疑問です。

 

瀕死の人間を救わなかったから黒田が悪人とは言い切れません。

例えば黒田は事件当日偶然瀕死の状態の羽田を目撃した。

彼は羽田を救おうとしたがRUMや何者かに拘束されてしまったなどの理由で助けることができなかった可能性もあるかもしれません。

ですが長身で体格のよい黒田が手も足も出ないという事が有り得るのかというと少々疑問ではあります。

何よりも事件が表面化する前に現場を訪れていること、瀕死の人間に応急処置を取らなかったことを考えるとやはり黒田の行動は正義の人間と言えるのか首をかしげたくなるのが正直な感想です。

私はかねてより黒田は2人存在しそのうちの1人がRUMだと考えていましたが「山菜採り」でより一層黒田への疑惑が深まりました。

◆殴打と薬物という謎に満ちた事件◆

羽田は死因を不明にする薬で殺害されたのは確かなはずです。しかし彼は傷だらけの状態で最期を迎えています。

単純に羽田浩司という人間を抹殺したいのであれば殴るなどせず薬だけを用いた犯行の方が賢明。

なぜ証拠を残さない薬を使いながら証拠を残した事件が発生したのか。

これは羽田浩司の事件の最大の謎です。

私は黒田の回想した羽田と若狭の回想した羽田の差にはこの謎に迫る重要なヒントが隠されているのではないかと推測しています。

そのことを記事にまとめたいと思います。

黒田がRUM、というよりも黒田は2人存在しそのうちの1人がRUMという考察記事はこちら。


 
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『警察学校編~伊達航~』

名探偵コナンの公式スピンオフ作品『警察学校編』では伊達航編がスタート。

伊達「誰よりも強くなければ…正義は遂行できねぇんだよ!!」

伊達の語る正義とは一体何を指しているのでしょうか。

質実剛健(真面目でたくましい)

5殷鑑不遠(失敗の戒めは身近である)

6虚心坦懐(心が素直であること)

伊達編はこの3話から構成されています。

 

◆父親を忌み嫌っている伊達

警察学校組の中でも見た目通りリーダーシップを発揮している伊達。

ですが彼も松田同様警察官を目指した動機は父親の存在が大きいようです。

爪楊枝をくわえた生徒にあからさまさな不快感を示しています。

彼はなぜ父を嫌うのか。

伊達は父親も警察官。父親は爪楊枝を加えることで強く見せようとする程痩せた外見でしたが伊達少年は父を尊敬していました。

ですがある日2人で訪れたコンビニで強盗が暴れる事件が起こります。

伊達少年は警察官の父親の力を信じたものの伊達少年の意に反し父は強盗に土下座で懇願した上父はその時に負ったケガが元で警察官を辞める事になってしまいました。

犯人は後日別の店でも傷害事件を起こしたことから父親が犯人を捕まえられるほど強ければ正義は遂行された肉体の強さこそ正義に不可欠な要素と考えるようになりそれを持たなかった父に対し尊敬の念が消えてしまったのです。


◆コンビニ強盗を「数」で制圧!◆

コンビニに出掛けた伊達と降谷ですがそこで銃を持った強盗が押し入り2人をはじめ店内にいた客を人質に取り縛り上げます。

相手は数も多く武器も所持。さすがに2人だけでは勝ち目はありません。

なんとか身動きが取れるようになった降谷はモールス信号で外部に助けを求めます。

それに気づいたのが通りがかったヒロ、松田、萩原の3名。

彼らがとった作戦は映画の撮影と勘違いをしたふりをしながら堂々と店内に入り込み犯人たちの警戒心を解くというもの。

すると3人の周辺にいた人々も映画の撮影に参加したいと大はしゃぎ。みんなで店内に乱入します。

この人々は実は3人が集めてきた警察学校の学生で犯人はあっという間に制圧されてしまいました。

参加者の女性の多さや萩原の表情を見る限り彼を軸に作戦が練られた印象を受けますね。


◆明かされた「父の土下座」の真相◆

終盤で伊達は萩原の口から「実はかつて伊達の父親が土下座する様子を見ていた」と明かされます。

伊達は父親が弱さ故に土下座という手段しか用いらなかったと失望していましたが実は伊達は気付いていなかったもののあの時現場には犯人の仲間が大勢いたのです。それを察知した伊達の父親は警察の仲間に連絡をし、土下座という選択をすることになりました。ここで闘っても多勢に無勢、乱闘になれば被害は大きくなるばかりです。

伊達の父親なりの強さ、それが土下座であったということ。萩原は「誰も傷つけたくないという警察官の心が土下座という勇気ある行動を生み出した」と伝えます。


◆「見た目で決めつけるな」という発言の矛盾◆

降谷は他の学生から「金髪のハーフなんだから英語はペラペラだろ?」と話しかけられます。

これに対し伊達が「人を見た目で決めつけるな!!」と自分の事のように怒り出します。

伊達は当時からナタリーと交際していたので彼女を思っての発言です。

ですがこれは実はもっと奥の深い発言だと思います。

伊達の父は痩せ型で警察官としては頼りない印象を与えてしまう人物だったはず。

そんな父を伊達は尊敬することができなかった。5話の扉絵で筋力強化のトレーニングをしていたのは「自身の理想とする正義を遂行するための強さ」を手に入れたいと同時に貧弱な印象を与えかねない「父のような体型にはなりたくない」という気持ちの表われに思えます。

痩せた体の持ち主は弱者という考えが伊達の中に存在し実は彼自身が人を見た目で決めつけていたということを表した発言なのかなと感じました。


◆父との確執を乗り越えた伊達◆

真実を知った伊達は父親に連絡を入れます。口元には彼が父のトレードマークだからという理由で嫌っていた爪楊枝が描かれています。4話では父親の存在を無視していた伊達ですが父のトレードマークが自身のトレードマークとなる綺麗な終わり方ですね。

この時点で他のメンバーからの呼び名は「班長」ですがこの距離はあっという間に埋められそうですね。5人一緒に食事をとるほど仲は良好ですから。


◆伊達が降谷に残したものは何か◆

警察学校編は現在の降谷零(安室透)に同期のメンバーが何を残したか、降谷は誰からどのピースを集め、どのようにして現在の降谷零(安室透)の礎が出来上がったのかを描く作品かもしれません。

では伊達が降谷に残したものがあるとすればそれは何だったのか。

降谷は松田と対等に闘えるレベルのボクシングの技術がありました。またハーフであることをあれこれ言われても軽く流しています。つまり降谷は肉体及び精神の強さは警察学校入校時点で既に手に入れている。

教官から「真面目過ぎる」とまで言わせるほどですから正義感も相当なもののはず。

肉体の強さでも精神の強さでも正義感でもない。

となると伊達が降谷に残したものは「仲間との連携の大切さ」ではないかなと思います。

伊達自身は萩原から父の土下座の真相と父の精神の強さを伝えられていますがこの時降谷はこの会話のシーンには登場していません。降谷が描かれたのは犯人を制圧する為に「力でなく数」で闘ったというコマ。

伊達自身も父が仲間の警察官の力に頼ったことを聞かされています。

このことから伊達が降谷に残したものは「仲間との連携」と考える事はできそうです。


◆その他◆

松田は殺人事件の誤認逮捕により悪質ないやがらせに遭っていた過去が描かれました。たった1コマですが非常にショッキングなものです。松田が涙を流していない様子がかえって読み手の胸を締め付けます。

ヒロも両親の事件のトラウマを全く乗り越えることが出来ていません。

親が実際に罪を犯したとしても子供には何の罪もないのですがこのような経験に苦しむ子供は現実世界に数えきれないほど存在します。また大切な人の命を理不尽に奪われ葛藤する人たちも同様です。

降谷が外見の話題を軽く流したのは彼にとって容姿でからかわれることが日常だったから。伊達編はちょっとした描写に社会問題が凝縮されていて切なくなりました。

萩原は警察学校組で唯一暗い過去が見えてこない人物ですが物語の流れを見る限り彼にも何か胸に秘めたものがありそうですね。

警察学校組は警察官を志望した動機が「親」にある流れが出来ています。

萩原も親の存在が職業の選択に大きく影響したのかもしれません。

彼は洞察力とコミュニケーション能力が抜きんでていますがこの辺りは現在の安室透に通じるものがあります。

また警察学校編では彼の嘘により騒動を解決に導く様子が描かれましたが(松田編)これは安室を主人公とした『ゼロの日常』4巻で安室の取った行動と重ねることが出来ます。

萩原は現在の降谷零(安室透)に最も影響を与えた人物の可能性もあります。

警察学校組で最も早くこの世を去った彼の内面が明らかにされるのが今から楽しみですね。

松田編はこちら


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黒田と脇田は同一人物【リンクまとめ】

私は現時点では黒田兵衛は2人存在し、そのうちの1人がラムだと考えています。

そしてもう1人が脇田兼則を演じている人物による変装。

つまり黒田兵衛と脇田兼則は同一人物ではないかと推測しています。

その記事のリンクをここにまとめておきたいと思います。

 

 黒田がラムという記事はこちら

「黒田=脇田の可能性」の記事一覧


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若狭は赤井を信用していない?

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赤井は母メアリーの若返りに気付いている状態です。

またこの情報が弟の秀𠮷経由ではないことも明らかにされています。

そこで浮上する情報源がメアリーと繋がっている可能性が濃厚な若狭の存在です。

以前記事にした通り私は赤井と若狭が繋がっている可能性を視野に入れています。

赤井は表向きは死亡している人物です。

その赤井と連携できるのは彼が信頼に値するとジャッジした人間のみのはず。

推理通り赤井が若狭と連携しているのなら若狭は赤井から大きな信頼を得ていることになります。

 

ですが私は赤井の若狭への信頼とは裏腹に若狭は赤井をそう信頼していないのではないかと考えています。

今回は赤井と若狭の不可思議な距離感をテーマに記事を綴ります。

◆若狭は善人とは言い切れない◆

彼女は殺人が起きるという気配を感じ取っていながらそれを放置しコナンや少年探偵団の子供たちを事件に巻き込んでいます。

若狭が「いいひと」であるのなら子供を危険に晒したりしません。

また灰原は若狭に対し好意的ではありますがその一方で組織の気配を感じ取っています。

身を挺して歩美ちゃんを守ろうとした様子は演技には見えません。ですがやはり彼女は善人とは言い難いものがあります。

若狭は過去から今に至るまで「悪」の一面を持ち合わせていることは確かです。

赤井秀一は若狭を信頼している◆

ここは若狭=浅香が前提です。

「危険な相手なら瞬時に制圧する能力に長けた……「浅香」という名の」 90巻

赤井が若狭の過去をどの程度把握しているかは不明ですがこの台詞の時の赤井の様子から彼は若狭に警戒心を抱いていないことが見て取れます。

それどころか彼女のことを「危険な相手を制圧する能力に長けた」と評している。

つまり彼の中で若狭本人は危険な人物ではないと捉えていることになります。赤井は若狭の「悪」の一面を一切知らないという可能性もあるかもしれません。

赤井は妹の真純を大切に思っており彼女を巻き込みたくないと考えています。その真純の周辺に姿を現すと予見しても彼は若狭に危機感を抱いていません。

少なくとも今現在赤井は若狭を危険視していないことが分かります。

名探偵コナン(90) (少年サンデーコミックス)

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◆なぜ若狭は「烏丸」の情報を渡さなかったのか◆

ここではダイイングメッセージの真相が若狭から赤井に伝えられたという前提で綴ります。

優作「ウチに住まわせているFBIの彼と先程話したんだが…」 95巻

この話し合いの中でダイイングメッセージの真の意味が「烏丸」であることが明らかにされました。

この話し合いは「先程」行われたもの。

若狭留美という名前は黒田、脇田の反応を見る限り確実に偽名ですし「烏丸」を意識して名乗っている可能性が高いと言えます。

つまり若狭はメッセージが烏丸を表していることにとっくに気付いていたはずです。ですが彼女はその情報を赤井には伝えていなかった。

ではなぜこのタイミングで情報を提供することを決めたのか。

ちょうどこの頃若狭の中では大きな出来事がありました。

彼女が江戸川コナン=工藤新一に辿り着いたのです。

若狭がこの事実を確信したのはこの話し合いのほんの少し前。

修学旅行に工藤新一が参加しておりその間江戸川コナンは休学。このことにより若狭の中でコナンの正体が特定され、赤井にメッセージの真相が伝えられたということになります。

ここで浮上するのが次の可能性です。

コナン=工藤新一なら若狭は赤井に烏丸の名前を教えることができる。

コナン≠工藤新一なら若狭は赤井に烏丸の名前を教えることができない。

つまり若狭はコナンの正体に確信が持てるまで赤井に烏丸の名前を渡さなかったと考える事ができます。

若狭は赤井を通してコナンにメッセージの真相が伝わる事を期待していたはずです。

彼女は赤井とコナンが繋がっていることも把握済みとなります。

要するに若狭がメッセージの真相を伝えたい相手はあくまでコナン。

彼女が赤井を有能な人材と考えているのなら烏丸の情報は早々に渡しておいた方が得策。

情報を渡さなかったのは若狭の中では赤井を心から信頼していないから。

このように捉えることもできるのではないかと思います。

角度を変えて語るのなら若狭にとって赤井は「信頼していない」とまではならなくても「戦力に値しない」という評価を下しているのかもしれません。

現時点で赤井と若狭に繋がりがあるという明確な描写は確認できていませんし早い段階で烏丸の名前を渡さなかったのも別の意味がある可能性も否定できません。

ですが赤井と若狭に信頼関係が成立している場合烏丸の名前を渡したタイミングについて府に堕ちないとは感じています。

 ◆若狭はメアリーの事も信用していない?◆

次回は赤井の母、メアリーと若狭の間に「信頼関係」が存在するのかを考察。

現時点でメアリーと若狭は繋がっている可能性が濃厚。

ですが私はメアリーは若狭を信頼している一方若狭はメアリーをそれほど信頼していない、つまり赤井と若狭の関係によく似た温度差が垣間見えると感じます。

それどころか若狭はメアリーを危険に晒しても構わないと考えている可能性はないのか。

その辺りを深読みも交え記事にしたいと思います。


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